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第21章 愛奈の正体と最後の天将、聖奈は特訓場へ到着する
迷いの星空――契約か、守るべき命か
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天空が去ったあと、急遽開かれたミーティングで、恭弥は自分の考えをみんなに伝えた。
「……俺が浅はかだった。済まない。それで、俺はみんなの命を優先する。天空とは契約しない。それが、みんなが助かる唯一の方法だ。」
震える声で語る恭弥に、騰虵や白虎、勾陳がすぐに反応を示した。
『天空から逃げだすって言うのか?』
最初に声を上げたのは騰虵だった。
『我らの力を見くびってもらっては困る。我は天空にモノ申す。』
白虎も続く。そして、普段は冷静な勾陳までもが、低く怒りを込めて言い放った。
『こんな屈辱、見返せんで何をいう主殿。我も天空と戦う。そして、天狗の鼻をへし折ってやる。』
普段とは違う荒ぶる口調。まさに武道家としての誇りの叫びだった。しかし、その空気を貴人が静かに制した。
『主殿は姫たちのことを心配なさっておられるのだ。口を慎め、騰虵、白虎、勾陳。』
そう言いながらも、貴人の声音にはわずかに熱がこもっていた。
『……という我も、天空の発言には些か不満がある。それでどうだろう主。姫たちは我と朱雀、天后、太陰、玄武、太裳、六合の七柱で結界を張る。契約時の衝撃は、我らが止めよう。そして白虎、騰虵、勾陳、青龍が天空を弱らせ、主が契約を有利に進めるという案を推奨したいのだが。』
いつになく真剣な眼差しで、貴人は恭弥に提案してきた。恭弥も過去の結界術の力を目にしてきていたため、効果は理解していた。
だが、それでも心は揺れていた。
(……なぜ、我を召喚する前にそうしなかった? 危機感がなかったのか? そのために犠牲になるのだ。)
天空のあの言葉が、どうしても脳裏にこびりついて離れない。
(もし、今回もこちらの作戦が通じなかったら……?)
不安が恭弥の判断を鈍らせる。そんな中、咲が声を上げた。
「でも、私と聖奈はこのバーチャルの世界では、肉体を失っても、現実に戻れば元通りでしょ? だったら、やってみる価値はあると思う。」
いつもなら慎重派の咲が、平然とそう言ったことに、恭弥は戸惑った。
「……なんで? 咲なら安全面を優先するだろ? どうしてそう言うんだ?」
咲は不機嫌そうに答えた。
「安全策を取ってるよ。でも、あの天空にだけは負けたくないって思っちゃった。あの態度、思い出すだけでムカつくっていうか、仕返ししたい。」
テーブルを思い切り叩き、感情をあらわにする咲。その隣で、聖奈は静かに言葉を紡いだ。
「恭弥は、私たちのことが心配で、契約しないって決断したのよね? ……それで、本当にいいの? 十二天将が揃わなくても、それで納得できるの?」
恭弥が答えられずにいると、聖奈はそっとその肩に手を添えた。
「私は、恭弥がそう決めたなら、従う。でも、後悔はしないで。あとからの後悔は、取り返しがつかないこともあるんだから。」
「……正直、俺は迷ってる。でも、天空の“危機感はなかったのか”って言葉が、ずっと頭から離れない。俺の直感で今回を招いた責任も含めて、不安が……どうしても消えない。」
恭弥の言葉に、場が静まり返る。
「……これは恭弥の心を試す“試練”かもしれないね。」
沈黙を破ったのは聖奈だった。
「愛奈のときは、恭弥の優柔不断と嫉妬が原因だった。でも今回は、最後の天将。集大成じゃない? もしかしたらこれは、“契約”か“私たちの運命”か、恭弥の覚悟を測る試練かもしれないよ。」
『……そうかもしれない。これは、試練だな。』
貴人もその解釈に同意する。
「……なら、安全装置が壊れることもあるし、予備の装置を執事に連動させておくわ。これで少しは安心できるでしょ?」
咲はすぐに手を打ち、恭弥の不安を一つ取り除いた。天将たちもその場で結界を展開し、恭弥に力を示す。
そしてついに――恭弥は天空との契約を決断した。
ミーティングが終わったあと、恭弥と聖奈は一緒に外へ出て、満天の星空を見上げた。
「すごく綺麗……。現実世界じゃ、こんなに星が見えないわ。」
聖奈はそう言って、そっと恭弥の右腕に自分の腕を絡めてきた。
「……そうだね。明日で、十二天将がすべて揃うはずだ。そしたら今度は、聖奈の技の開発に取りかかろうと思ってる。今回、聖奈にも……咲にも、いっぱい心配かけたから。そのお礼も兼ねて、いい案があるんだ。」
「なになに、その案って?」
目を輝かせて聞いてくる聖奈に、恭弥はいたずらっぽく微笑んだ。
「明日、うまくいったら教えるよ。聖奈にぴったりの考案だからさ。」
「え~、気になる。それまで楽しみにしてるね。……楽しみ。楽しみで今日、寝られるかな?」
「だったら、一緒に添い寝してやろうか?」
恭弥のからかいに、聖奈も少しだけ甘えるような声を返した。
「……いいの? 恭弥と一緒なら、安心して眠れそう。」
「えっ……」
「ふふっ、冗談。大丈夫だよ、一人で眠れる。」
聖奈はそう言って、少し照れたように微笑み、自分の部屋へと戻っていった。恭弥もどこかホッとしたような、名残惜しいような顔で自室へと歩を進めた。
その夜空は、二人を静かに見守っていた。
ただ、一つだけ――星のようで、星ではない“何か”が、彼らを見下ろしていた。
それは、波乱の幕開けを告げる、闇の予兆のように見えた。
「……俺が浅はかだった。済まない。それで、俺はみんなの命を優先する。天空とは契約しない。それが、みんなが助かる唯一の方法だ。」
震える声で語る恭弥に、騰虵や白虎、勾陳がすぐに反応を示した。
『天空から逃げだすって言うのか?』
最初に声を上げたのは騰虵だった。
『我らの力を見くびってもらっては困る。我は天空にモノ申す。』
白虎も続く。そして、普段は冷静な勾陳までもが、低く怒りを込めて言い放った。
『こんな屈辱、見返せんで何をいう主殿。我も天空と戦う。そして、天狗の鼻をへし折ってやる。』
普段とは違う荒ぶる口調。まさに武道家としての誇りの叫びだった。しかし、その空気を貴人が静かに制した。
『主殿は姫たちのことを心配なさっておられるのだ。口を慎め、騰虵、白虎、勾陳。』
そう言いながらも、貴人の声音にはわずかに熱がこもっていた。
『……という我も、天空の発言には些か不満がある。それでどうだろう主。姫たちは我と朱雀、天后、太陰、玄武、太裳、六合の七柱で結界を張る。契約時の衝撃は、我らが止めよう。そして白虎、騰虵、勾陳、青龍が天空を弱らせ、主が契約を有利に進めるという案を推奨したいのだが。』
いつになく真剣な眼差しで、貴人は恭弥に提案してきた。恭弥も過去の結界術の力を目にしてきていたため、効果は理解していた。
だが、それでも心は揺れていた。
(……なぜ、我を召喚する前にそうしなかった? 危機感がなかったのか? そのために犠牲になるのだ。)
天空のあの言葉が、どうしても脳裏にこびりついて離れない。
(もし、今回もこちらの作戦が通じなかったら……?)
不安が恭弥の判断を鈍らせる。そんな中、咲が声を上げた。
「でも、私と聖奈はこのバーチャルの世界では、肉体を失っても、現実に戻れば元通りでしょ? だったら、やってみる価値はあると思う。」
いつもなら慎重派の咲が、平然とそう言ったことに、恭弥は戸惑った。
「……なんで? 咲なら安全面を優先するだろ? どうしてそう言うんだ?」
咲は不機嫌そうに答えた。
「安全策を取ってるよ。でも、あの天空にだけは負けたくないって思っちゃった。あの態度、思い出すだけでムカつくっていうか、仕返ししたい。」
テーブルを思い切り叩き、感情をあらわにする咲。その隣で、聖奈は静かに言葉を紡いだ。
「恭弥は、私たちのことが心配で、契約しないって決断したのよね? ……それで、本当にいいの? 十二天将が揃わなくても、それで納得できるの?」
恭弥が答えられずにいると、聖奈はそっとその肩に手を添えた。
「私は、恭弥がそう決めたなら、従う。でも、後悔はしないで。あとからの後悔は、取り返しがつかないこともあるんだから。」
「……正直、俺は迷ってる。でも、天空の“危機感はなかったのか”って言葉が、ずっと頭から離れない。俺の直感で今回を招いた責任も含めて、不安が……どうしても消えない。」
恭弥の言葉に、場が静まり返る。
「……これは恭弥の心を試す“試練”かもしれないね。」
沈黙を破ったのは聖奈だった。
「愛奈のときは、恭弥の優柔不断と嫉妬が原因だった。でも今回は、最後の天将。集大成じゃない? もしかしたらこれは、“契約”か“私たちの運命”か、恭弥の覚悟を測る試練かもしれないよ。」
『……そうかもしれない。これは、試練だな。』
貴人もその解釈に同意する。
「……なら、安全装置が壊れることもあるし、予備の装置を執事に連動させておくわ。これで少しは安心できるでしょ?」
咲はすぐに手を打ち、恭弥の不安を一つ取り除いた。天将たちもその場で結界を展開し、恭弥に力を示す。
そしてついに――恭弥は天空との契約を決断した。
ミーティングが終わったあと、恭弥と聖奈は一緒に外へ出て、満天の星空を見上げた。
「すごく綺麗……。現実世界じゃ、こんなに星が見えないわ。」
聖奈はそう言って、そっと恭弥の右腕に自分の腕を絡めてきた。
「……そうだね。明日で、十二天将がすべて揃うはずだ。そしたら今度は、聖奈の技の開発に取りかかろうと思ってる。今回、聖奈にも……咲にも、いっぱい心配かけたから。そのお礼も兼ねて、いい案があるんだ。」
「なになに、その案って?」
目を輝かせて聞いてくる聖奈に、恭弥はいたずらっぽく微笑んだ。
「明日、うまくいったら教えるよ。聖奈にぴったりの考案だからさ。」
「え~、気になる。それまで楽しみにしてるね。……楽しみ。楽しみで今日、寝られるかな?」
「だったら、一緒に添い寝してやろうか?」
恭弥のからかいに、聖奈も少しだけ甘えるような声を返した。
「……いいの? 恭弥と一緒なら、安心して眠れそう。」
「えっ……」
「ふふっ、冗談。大丈夫だよ、一人で眠れる。」
聖奈はそう言って、少し照れたように微笑み、自分の部屋へと戻っていった。恭弥もどこかホッとしたような、名残惜しいような顔で自室へと歩を進めた。
その夜空は、二人を静かに見守っていた。
ただ、一つだけ――星のようで、星ではない“何か”が、彼らを見下ろしていた。
それは、波乱の幕開けを告げる、闇の予兆のように見えた。
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