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第四話:こっくりさん
しおりを挟む「……これでよし。キミちゃん、こっくりさんできるよ。」
やり方が分からない彼女のために全ての文字を書き入れ、最後に鳥居の絵の上に十円玉を置く。
「ありがとうモモ!さぁ早速やるわよぉ!!」
キミちゃんはやる気に満ち溢れた顔をして、勢いよく十円玉に指を乗せる。
私もそれに続いて指を置く。
「じゃあ、いくわよ!
……せぇーのっ!!!」
「「こっくりさん、こっくりさん、おいでください。」」
「やっぱなんも起きないかぁ……。」
ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ期待していたため、なんだか残念な気持ちだ。
「キミちゃん、諦めよ……。
多分こっくりさん来ないよ…。」
そう言って指を離そうとした瞬間、
カタリ、と十円玉が震えた
もちろん私は力を入れていない。流石にキミちゃんもそんなことをする子では無いはずだ。
パッ、と視線を十円玉から上げると、キミちゃんもちょうどこちらを見ていた。
彼女は、
初めて寝返りがうてた赤ちゃんのような、達成感に満ちた、そんな表情を浮かべていた。
「やっぱり!こっくりさんは存在するのね!!」
そんな今にも踊り出してしまいそうな彼女に慌てて声をかける。
「キミちゃん!質問しなきゃ!!」
「あらそうだったわ!……じゃあ、キミの運命の相手は誰ですか?!」
一拍置いた後、十円玉がゆっくり滑り出す。
わ か ら な い
「(まぁ、キミちゃんくらいの見た目なら選びたい放題だもんな。)」
なんとなく私は納得してしまったが、キミちゃんはそうではなかったらしい。
「わからないですってぇ!?ありえないわそんなの!!」
眉を吊り上げて、いかにも怒っています、というような表情を浮かべて十円玉を睨みつけている。
美人が怒ると怖いと言うからだろうか。
心做しか十円玉が震えているような気がする。
キミちゃんはため息をついて
「んもぅ仕方ないわねぇ……。
じゃあ、モモの運命の相手は?」
「エッ、私!?!?」
驚く私を横目に、十円玉は文字の上を迷いなく滑っていこうとした、
刹那、
ガラッ、とドアが勢いよく開け放たれた。
「ん?あれ、石谷じゃん。何してんの?」
タカシくんだ。キミちゃんと同じ、小学校から高校まで一緒の友人の1人だ。最近は話すことが少なくなっていたが、目が合うと挨拶を交わすくらいの仲だ。
「アッ、えっと、これは…」
私がなんと説明しようか迷っていると、十円玉が再び紙の上を滑り始めた。
タ カ シ
…見間違いではないだろうか。
タカシ、と見えた気がする。
「エッッ!?!?」
驚きでガタッと椅子から勢いよく立ち上がると、タカシくんは少しビクッ、とした。
「ごっごめんね!ちょっとびっくりしちゃって…キミちゃんもごめんね?急に立ち上がって……」
それを聞くとタカシくんは私の背後、キミちゃんがいる位置に目を向け、
そして、言った
「なぁ、石谷……」
そこにいるのって………キミちゃん?
「…え?」
私の声だけが教室に響く。
「な、何言ってるのタカシくん……?」
「いや…あの、さ_」
タカシくんの言葉は遮られた。
キミちゃんによって。
「タカシくん何を言ってるの?キミはここよ?」
キミちゃんの笑い声が響いて聞こえる。
すると、タカシくんの表情がスっと変わった。
「……あぁ。」
タカシくんはそれっきり何も言わない。キミちゃんも何も言わない。
沈黙が教室を包み込む。
時計の針は十八時を指していた。
「……キミちゃんも、タカシくんも帰ろうか!もう遅くなっちゃったし!」
無理やり笑顔を作って、なるべく明るく振る舞う。
普段と変わらないように。
「ほらほら!キミちゃんも準備して!もう空が真っ暗だよ!!」
キミちゃんの顔は見れない。
「……ええそうね。帰りましょうか。」
3人で横並びになって帰る。
私を真ん中にして、左にキミちゃんがいて、右側にタカシくんがいる。
……分かれ道。
私とタカシくんはここで右に行く。左へ行くのはキミちゃんだけ。
「じゃあ、キミちゃんまた明日ね。」
私はこの時やっと、キミちゃんの方へ顔を向けた。
「さようなら。」
キミちゃんは、笑顔だった。
わたしとキミちゃんは、
こっくりさんを、
まだおわらせていない。
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