ほら、ホラーだよ

根津美也

文字の大きさ
66 / 77

66.習字、練習しなきゃ

しおりを挟む
 自分の部屋に帰って考えた。

 おばさんの部屋に座敷オヤジセキュリティがかかったんだ。
 対象はおそらくぼくだ。
 おばさんはぼくが現在、どういうことになっているのか、わかってるんじゃないかな? 言わないけど。

 座敷オヤジ達もぼくを警戒している。おばさんとは打ち合わせ済みだろう。

 座敷オヤジ達も、ゲンガクに入ってこられては困るんだ。
 最初、ゲンガクが入ってきた時、吹っ飛ばされてたもんな。
 誰もゲンガクに勝てなかった。
 ゲンガクもゲンガクで「みんな出て行け! 家来になるならいてもいいけど」なんて言っていた。

 ぼくだって、そうなるのは望んでいない。
 座敷オヤジやオキビキや、三つ目入道などとはすっかりお馴染みで、むしろ、家族同然といってもいいくらいなんだ。

 じゃ、なんで石を探そうとしておばさんの部屋に入ったのかということだけど……

 石を棄てようという、明確な意図はなかった。
 ただ、ゲンガクにささやかれたから、なんとなく、おばさんのいないのを見計らって部屋に入ったのだ。

 ひょっとして、石を見つけたら、なんとなく持ち出したかもしれない。
 持ち出したら、なんとなく河原に向かったかもしれない。
 河原に行ったら、なんとなく石を手から離したかもしれない。

 操られるというのはこういうことかもしれない。
 ゲンガクの ”ささやき” にはきっと魔力があるんだ。
 ゲンガクの ”ささやき” に乗るのは、書初め大会で最後にしよう、とぼくは思った。

 それにしても書初めの宿題の方だ。
 書初めの宿題を提出するのは、書初め大会が終わってからだから、そこで下手な字を提出しても、多分問題にはならないだろう。
 それにしても、あんまりかけ離れているのもなんだから、これから毎日練習しようと思った。

 練習すると、結構うまくなるんだよな。走る練習をしたときもそうだった。万年びりのぼくが2等になったもんね。

 みんながみんな練習すると、そこで上位にいくのは難しいかもしれないけれど、皆があまりやらないことで練習すると、みるみる成果が上がるんだよね。

 習字の場合は順位関係ないから、うまけりゃいいんだよ。競争する必要は無い。そう考えると気が楽だ。自分の部屋で字を練習するだけだから、おばさんの部屋から石を盗み出すのと比べると、ずっと楽だ。

 だいたいぼくは、めんどくさいことや、ややこしいことは、したくないタイプなんだ。

 時々テレビを見てて思う。

 事件ものなんか見てるとね、犯罪を犯す奴って、マメだよね。ドラマになるようなのは、かっとなって後先考えずにやってしまうっていうのじゃなくてね、完全犯罪を目指して、いろいろ細工するってやつだよね。そこに名探偵が出てきて、疑われそうになると、またいろいろ細工したりするんだけど、マメだなあって思う。

 ああいうことは、ぼくには出来ない。

 まあ、ぼくには人を殺してまで守りたい地位も名誉も財産もないからね。
 ぼくはテレビでも見ながら、ママのおやつを食べている方がずっと幸せさ。

 そこにママがやってきた。

「ヨシヒコちゃん、おやつ出来たけど、どうする? ここで食べる? それとも下で食べる? あら!」

 ママは習字をやっているぼくを見てびっくりしたみたいだ。
 ぼくは考え事をしながら、習字をしていたんだよね。

「ヨシヒコちゃん、書初め大会にむけて、習字の練習をしてるのね。偉いわあ! なんて、いい子なんでしょう!」

 ぼくはいい子ついでに、おやつをママと一緒に下で食べることにした。それに、今、ぼくの部屋は習字の道具で散らかっているのでね。

しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

笑いの授業

ひろみ透夏
児童書・童話
大好きだった先先が別人のように変わってしまった。 文化祭前夜に突如始まった『笑いの授業』――。 それは身の毛もよだつほどに怖ろしく凄惨な課外授業だった。 伏線となる【神楽坂の章】から急展開する【高城の章】。 追い詰められた《神楽坂先生》が起こした教師としてありえない行動と、その真意とは……。

童話短編集

木野もくば
児童書・童話
一話完結の物語をまとめています。

9日間

柏木みのり
児童書・童話
 サマーキャンプから友達の健太と一緒に隣の世界に迷い込んだ竜(リョウ)は文武両道の11歳。魔法との出会い。人々との出会い。初めて経験する様々な気持ち。そして究極の選択——夢か友情か。   (also @ なろう)

【完結】カラフルな妖精たち

ひなこ
児童書・童話
星野愛虹(ほしの・あにー)は小学五年女子。絵を描くのが大好き。ある日、絵を描いていると色の妖精・彩(サイ)の一人、レッドに出会う。レッドはガスの火を変化させて見せる。サイは自分の色と同じ物質をあやつり、人の心にまで影響できる力を持つ。さらにそのサイを自由に使えるのが、愛虹たち”色使い”だ。  最近、学校では水曜日だけ現れるという「赤の魔女」が恐れられていた。が、実はサイの仲間で凶悪な「ノワール」が関わっていた。ノワールは、人間の心の隙間に入り込むことを狙っている。彼を封印するには、必要な色のサイたちをうまく集めなくてはいけない。愛虹の所有するサイは、目下、赤と白。それでは足りず、さらに光のカギもないといけない。一体どこにあるの?仲間を探し、サイを探し。   これは愛虹と仲間たちが、たくさんの色をめぐって奮闘する冒険物語。児童向け、コミカルタッチの色彩ファンタジーです。

荒川ハツコイ物語~宇宙から来た少女と過ごした小学生最後の夏休み~

釈 余白(しやく)
児童書・童話
 今より少し前の時代には、子供らが荒川土手に集まって遊ぶのは当たり前だったらしい。野球をしたり凧揚げをしたり釣りをしたり、時には決闘したり下級生の自転車練習に付き合ったりと様々だ。  そんな話を親から聞かされながら育ったせいなのか、僕らの遊び場はもっぱら荒川土手だった。もちろん小学生最後となる六年生の夏休みもいつもと変わらず、いつものように幼馴染で集まってありきたりの遊びに精を出す毎日である。  そして今日は鯉釣りの予定だ。今まで一度も釣り上げたことのない鯉を小学生のうちに釣り上げるのが僕、田口暦(たぐち こよみ)の目標だった。  今日こそはと強い意気込みで釣りを始めた僕だったが、初めての鯉と出会う前に自分を宇宙人だと言う女子、ミクに出会い一目で恋に落ちてしまった。だが夏休みが終わるころには自分の星へ帰ってしまうと言う。  かくして小学生最後の夏休みは、彼女が帰る前に何でもいいから忘れられないくらいの思い出を作り、特別なものにするという目的が最優先となったのだった。  はたして初めての鯉と初めての恋の両方を成就させることができるのだろうか。

野良犬ぽちの冒険

KAORUwithAI
児童書・童話
――ぼくの名前、まだおぼえてる? ぽちは、むかし だれかに かわいがられていた犬。 だけど、ひっこしの日に うっかり わすれられてしまって、 気がついたら、ひとりぼっちの「のらいぬ」に なっていた。 やさしい人もいれば、こわい人もいる。 あめの日も、さむい夜も、ぽちは がんばって生きていく。 それでも、ぽちは 思っている。 ──また だれかが「ぽち」ってよんでくれる日が、くるんじゃないかって。 すこし さみしくて、すこし あたたかい、 のらいぬ・ぽちの ぼうけんが はじまります。

生まれたばかりですが、早速赤ちゃんセラピー?始めます!

mabu
児童書・童話
超ラッキーな環境での転生と思っていたのにママさんの体調が危ないんじゃぁないの? ママさんが大好きそうなパパさんを闇落ちさせない様に赤ちゃんセラピーで頑張ります。 力を使って魔力を増やして大きくなったらチートになる! ちょっと赤ちゃん系に挑戦してみたくてチャレンジしてみました。 読みにくいかもしれませんが宜しくお願いします。 誤字や意味がわからない時は皆様の感性で受け捉えてもらえると助かります。 流れでどうなるかは未定なので一応R15にしております。 現在投稿中の作品と共に地道にマイペースで進めていきますので宜しくお願いします🙇 此方でも感想やご指摘等への返答は致しませんので宜しくお願いします。

独占欲強めの最強な不良さん、溺愛は盲目なほど。

猫菜こん
児童書・童話
 小さな頃から、巻き込まれで絡まれ体質の私。  中学生になって、もう巻き込まれないようにひっそり暮らそう!  そう意気込んでいたのに……。 「可愛すぎる。もっと抱きしめさせてくれ。」  私、最強の不良さんに見初められちゃったみたいです。  巻き込まれ体質の不憫な中学生  ふわふわしているけど、しっかりした芯の持ち主  咲城和凜(さきしろかりん)  ×  圧倒的な力とセンスを持つ、負け知らずの最強不良  和凜以外に容赦がない  天狼絆那(てんろうきずな)  些細な事だったのに、どうしてか私にくっつくイケメンさん。  彼曰く、私に一目惚れしたらしく……? 「おい、俺の和凜に何しやがる。」 「お前が無事なら、もうそれでいい……っ。」 「この世に存在している言葉だけじゃ表せないくらい、愛している。」  王道で溺愛、甘すぎる恋物語。  最強不良さんの溺愛は、独占的で盲目的。

処理中です...