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事例 壱 『コウシュ村』
弍拾伍
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(ようやく、出て行った……)
息を整えつつロッカーに隠れていると、数分もすれば諦めたように足音と声は部屋を出て行った。
バクバクと五月蝿い心臓を深呼吸で宥め、その呼気で冷えた手を温め、噴き出る汗は袖で拭う。
この村に来てから冷や汗かいたり鳥肌立ったり心臓が縮む思いをしてばかり。この数時間の内に幾らの寿命が減っていったのだろう。そう思わずにはいられなかった。
でも、名を忘れた親友のためだから。そう何度も自分に言い聞かせて前を向く。
(まずはこのロッカーを出ることから始めよう……)
今一度何も誰もいないか確認してから、なるべく音を立てないようにユックリロッカーを開ける。
キィ……ィ……
開けた視界でこの部屋を見回すと、どうやらここは更衣室であるらしいことが分かった。
確かにこれだけの──多分十台は余裕だろう──ロッカーがあれば、イチイチ確認するのも面倒だろう。ここに飛び込んだのは不幸中の幸いだったというわけか。
どうせなら『ここには何もない』という確証を持って出て行きたいからな。俺は全部のロッカーを開けてみようと思う。
なるべく音を立てないように、静かに手前の扉から開けていく。
ッタン、ギィ……
「空、か……」
ッタン、ギィ……
「ここも空……」
ッタン、ギィ……
「……ん? 紙切れ?」
三つ目のロッカーを開けると、手のひらサイズの紙切れ一枚がポツンと置かれていた。
「なになに……?」
どうやら何人かで回し書きしたモノらしく、何通りかの筆跡がビッシリと紙を埋め尽くしていた。
まるで授業中に手紙を回してお喋りするあの感じ、といえば分かりやすいだろうか。
『あの家のイケニエが逃げたって知ってる?
知ってる知ってる。まじヤバいよね(笑)
そのせいであそこん家の太郎が代わりになるらしいよ。
まじかよ。太郎いい奴じゃん、亡くすのは惜しい~
ほんとソレな。ってか太郎が死ぬのって親の責任だよね。だってちゃんとイケニエを管理できなかったんだもん。
それはそう。でも太郎可愛さに儀式ができなくなったらこの村は終わりじゃん。クビガミサマ怒っちゃう
……ねえ、アタシ、聞いちゃった。イケニエを逃したのはあの家のババアだって。
あの偏屈ババア?この村で一番儀式を正しく行うことに煩さそうなあの?
まじで?ありえなくない??正しいことに関してすっげー煩いじゃん。それなのに儀式に背くようなことするかね???
普通に考えてソレはないでしょ。だってイケニエを逃すなんて間違いの極みじゃん
それなー』
「……クローズドな村特有の価値観、だな。」
ヒト一人が犠牲になることに何の疑問も持たないサマから、閉鎖的コミュニティ故の考え方が見て取れる。胃のあたりがムカムカする気がした。
ソレ以降、全てのロッカーを開けてみたがこの村に関することも首吊り病の手がかりも見つからなかった。というわけでサッサと部屋を出ることにした。
廊下の気配を探れど何も感じなかったので、これまた音を立てずに戸を開けて一階を目指していく。
息を整えつつロッカーに隠れていると、数分もすれば諦めたように足音と声は部屋を出て行った。
バクバクと五月蝿い心臓を深呼吸で宥め、その呼気で冷えた手を温め、噴き出る汗は袖で拭う。
この村に来てから冷や汗かいたり鳥肌立ったり心臓が縮む思いをしてばかり。この数時間の内に幾らの寿命が減っていったのだろう。そう思わずにはいられなかった。
でも、名を忘れた親友のためだから。そう何度も自分に言い聞かせて前を向く。
(まずはこのロッカーを出ることから始めよう……)
今一度何も誰もいないか確認してから、なるべく音を立てないようにユックリロッカーを開ける。
キィ……ィ……
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確かにこれだけの──多分十台は余裕だろう──ロッカーがあれば、イチイチ確認するのも面倒だろう。ここに飛び込んだのは不幸中の幸いだったというわけか。
どうせなら『ここには何もない』という確証を持って出て行きたいからな。俺は全部のロッカーを開けてみようと思う。
なるべく音を立てないように、静かに手前の扉から開けていく。
ッタン、ギィ……
「空、か……」
ッタン、ギィ……
「ここも空……」
ッタン、ギィ……
「……ん? 紙切れ?」
三つ目のロッカーを開けると、手のひらサイズの紙切れ一枚がポツンと置かれていた。
「なになに……?」
どうやら何人かで回し書きしたモノらしく、何通りかの筆跡がビッシリと紙を埋め尽くしていた。
まるで授業中に手紙を回してお喋りするあの感じ、といえば分かりやすいだろうか。
『あの家のイケニエが逃げたって知ってる?
知ってる知ってる。まじヤバいよね(笑)
そのせいであそこん家の太郎が代わりになるらしいよ。
まじかよ。太郎いい奴じゃん、亡くすのは惜しい~
ほんとソレな。ってか太郎が死ぬのって親の責任だよね。だってちゃんとイケニエを管理できなかったんだもん。
それはそう。でも太郎可愛さに儀式ができなくなったらこの村は終わりじゃん。クビガミサマ怒っちゃう
……ねえ、アタシ、聞いちゃった。イケニエを逃したのはあの家のババアだって。
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