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事例 壱 『コウシュ村』
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「よし、お前。詳しく話を聞こうか。これは私が片手で祓えるほどの小物ではなさそうだ。」
先生はまたまたローテーブルを乗り越えて先程まで座っていた場所まで戻った。
「先生、お前ではありません。牧村さんです。」
「そうか、すまない。じゃあ牧村、話せ。」
ソファーにドカンと乱暴に座り、足を組みふんぞり返る先生の姿はまるで話を聞く態度ではないが、それが許されてしまうのが先生という者で。牧村さんもあまり気にした様子を見せなかった。
というか、さっきので少し肩が軽くなったとか何とか言って、牧村さんは先生を信用したようだった。
彼女は人を信じやすい方なのかもしれない、とそのまっすぐな心に感心してしまったのは内緒だ。
「ええと……そう言われましても、私には詳しいことなんて分からなくて……」
「フム、じゃあ悪夢の内容を教えろ。」
「悪夢の、ですか……わ、わかりました。」
恐怖からか牧村さんは一瞬言葉に詰まり、しかしそれを押し殺して一度深呼吸した。その後震える声で夢の内容は語られる。
「いつも始まりは同じ。大学のオカルトサークルの部室に私はいて、浅川くんと何故か安芸くんも首吊り病に罹ってしまっているところから始まります。」
「ん? まだ安芸は死んでなかったよな?」
「はい。そこがオカシイなって思ってまして……。それで、安芸くんがおかしくなったのも、浅川くんがソレに罹って亡くなってからなんです。だから次は私がおかしくなる番かもって……」
また恐怖に震え始めた牧村さん。先生はそんな牧村さんに向かってぶっきらぼうに、でも自信に満ち溢れた言葉を投げつけた。
「いいか、片手では祓えないとは言ったが、そもそもこの天才が祓えなかったコトなんて無いからな。大船に乗った気でいろ。」
「っ……! そう、なんですね。ちょっと落ち着きました。」
依頼者を落ち着かせるため、そして負の感情を和らげるためとは言え、そんな身勝手なことを……とも思ったが、そもそも僕が助手になってからの事件で先生に解決できなかったことはなかったな、と思い直した。
牧村さんは今一度深呼吸して、口を開いた。
「夢の続き……ですよね。ええと、そうだ、首吊り病に罹って死んだ二人を見上げる勇気はなくて、二人分の靴部分だけ見て動揺して……唐突に逃げなきゃって思って、大学から走って逃げて……それで、外に出ても至るところで宙ぶらりんの靴が見えて、
それで、それで、逃げていると背中の方から『見つけた、お前だ、お前のせいで』って子供の声が聞こえてきて……そこで毎回目が覚めます。あ、でもその声が日に日に大きくなってきていて、なんかそれがより一層気味悪くて……」
──今日なんて耳元で聞こえてきて、すごく怖かったんです。
その言葉を聞いた僕は、恐怖でヒュッと息を呑んだ。
先生はまたまたローテーブルを乗り越えて先程まで座っていた場所まで戻った。
「先生、お前ではありません。牧村さんです。」
「そうか、すまない。じゃあ牧村、話せ。」
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というか、さっきので少し肩が軽くなったとか何とか言って、牧村さんは先生を信用したようだった。
彼女は人を信じやすい方なのかもしれない、とそのまっすぐな心に感心してしまったのは内緒だ。
「ええと……そう言われましても、私には詳しいことなんて分からなくて……」
「フム、じゃあ悪夢の内容を教えろ。」
「悪夢の、ですか……わ、わかりました。」
恐怖からか牧村さんは一瞬言葉に詰まり、しかしそれを押し殺して一度深呼吸した。その後震える声で夢の内容は語られる。
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「ん? まだ安芸は死んでなかったよな?」
「はい。そこがオカシイなって思ってまして……。それで、安芸くんがおかしくなったのも、浅川くんがソレに罹って亡くなってからなんです。だから次は私がおかしくなる番かもって……」
また恐怖に震え始めた牧村さん。先生はそんな牧村さんに向かってぶっきらぼうに、でも自信に満ち溢れた言葉を投げつけた。
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それで、それで、逃げていると背中の方から『見つけた、お前だ、お前のせいで』って子供の声が聞こえてきて……そこで毎回目が覚めます。あ、でもその声が日に日に大きくなってきていて、なんかそれがより一層気味悪くて……」
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