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事例 壱 『コウシュ村』
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僕がそう絶望している間に先生はクルリと牧村さんへ振り返ってビシッと指をさした。
「牧村はこの事務所で待て。一晩くらいなら過ごせる快適性はあるはずだからな。なんなら今のうちに出前を取ってもらっても構わない。
そして私たちが出たあとは誰が来ても居留守を使え。私やジョシュアベが来ても開けるな。私たちは鍵を使って勝手に入れるからな。絶対ここから出るなよ。分かったか。」
「は、はい……」
ダダダと長文を並べ立てる先生に、牧村さんは圧倒されたらしい。なんとか返事をとその単語だけを掠れた音にしていた。
「この事務所には結界を張っているからな。お前が出ていくか、ナニカを招き入れることをしない限り、お前を守ってくれる。死にたくなければ絶対開けるなよ。」
「分かりました!」
乱暴な言い方ではあるが、牧村さんの命を優先的に考えていることが彼女にも分かったらしい。今度はハッキリと答えた。
「よし、じゃあ色々準備することにしよう。」
その先生の言葉を皮切りに、僕と牧村さんも一緒に何かの準備を始める。
…………
「ピザヨシ、コーラヨシ、ポテチヨシ! あとは塩饅頭にお茶に盛り塩に聖水にお札に……あ、牧村、式は欲しいか?」
出前した出来立てピザ、事務所にあったコーラ、ポテチ、(以下略)。
それらは牧村さんが今晩事務所で過ごすのに退屈しないよう集められたらしい。先生が一つ一つ指差して確認していた。
盛り塩と聖水とお札の辺りが『ナニカがやって来る』と言外に伝えているようで不穏だが……。まあ、これ以上牧村さんを怯えさせないためにも僕は口を噤んでおこう。
「式、とは……?」
「ん、私特製の護衛みたいなモンだな。ちょっと見た目がアレだが、役には立つはずだ。」
あ、先生。その式はまさかあの方ではなかろうか。だとしたら見た目がアレなのは『ちょっと』ではない。『とても』だ。
「こいつはオシャレな髑髏だ。」
ポンと顕現させた先生の最高傑作の式とは、ツケマと口紅を付けた頭蓋骨なのである。インパクトは相当あるだろう。
「やっほぉ~! オシャレな髑髏こと、シャリーちゃんだよぉ~!」
喋る頭蓋骨を見た牧村さんはそのインパクトに怖がるよりも唖然としていた。
その気持ち、よく分かる。僕も最初見た時はポカーンと口を開けたまま固まってしまったもの。
『オシャレ』と『しゃれこうべ』でいい感じのダジャレになっている、とは先生談。
それ自体はとんでもなくしょうもないが、当の本人はそのくだらなさを気に入っているらしい。毎回良い笑顔で顕現させている。
とは言っても、このシャリーさんを侮ること勿れ。守りに特化している式だからこそ今回のような場面で最大限の威力を発揮するのだ。僕も何度もお世話になっているくらいにはお強い。
「嫌でなければ、こいつを置いておいてくれ。何ならお喋り相手にでも思ってくれれば良い。」
「そ、それは勿論大丈夫です……」
牧村さんはしょうもないダジャレに対してなのか、それともこの見た目に対してなのか、とにかく唖然としたまま固まっている。
「よし、じゃあ牧村の方は良いとして。ジョシュアベ、行くぞ。」
「え、どこに?」
思いもよらないことを言われ、僕は先生相手だというのにタメ口をきいてしまった。
「牧村はこの事務所で待て。一晩くらいなら過ごせる快適性はあるはずだからな。なんなら今のうちに出前を取ってもらっても構わない。
そして私たちが出たあとは誰が来ても居留守を使え。私やジョシュアベが来ても開けるな。私たちは鍵を使って勝手に入れるからな。絶対ここから出るなよ。分かったか。」
「は、はい……」
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「この事務所には結界を張っているからな。お前が出ていくか、ナニカを招き入れることをしない限り、お前を守ってくれる。死にたくなければ絶対開けるなよ。」
「分かりました!」
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「よし、じゃあ色々準備することにしよう。」
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…………
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あ、先生。その式はまさかあの方ではなかろうか。だとしたら見た目がアレなのは『ちょっと』ではない。『とても』だ。
「こいつはオシャレな髑髏だ。」
ポンと顕現させた先生の最高傑作の式とは、ツケマと口紅を付けた頭蓋骨なのである。インパクトは相当あるだろう。
「やっほぉ~! オシャレな髑髏こと、シャリーちゃんだよぉ~!」
喋る頭蓋骨を見た牧村さんはそのインパクトに怖がるよりも唖然としていた。
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とは言っても、このシャリーさんを侮ること勿れ。守りに特化している式だからこそ今回のような場面で最大限の威力を発揮するのだ。僕も何度もお世話になっているくらいにはお強い。
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