怨念がおんねん〜事例 壱【完】〜

君影 ルナ

文字の大きさ
36 / 63
事例 壱 『コウシュ村』

7

しおりを挟む
 僕がそう絶望している間に先生はクルリと牧村さんへ振り返ってビシッと指をさした。

「牧村はこの事務所で待て。一晩くらいなら過ごせる快適性はあるはずだからな。なんなら今のうちに出前を取ってもらっても構わない。

そして私たちが出たあとは誰が来ても居留守を使え。私やジョシュアベが来ても開けるな。私たちは鍵を使って勝手に入れるからな。絶対ここから出るなよ。分かったか。」

「は、はい……」

 ダダダと長文を並べ立てる先生に、牧村さんは圧倒されたらしい。なんとか返事をとその単語だけを掠れた音にしていた。

「この事務所には結界を張っているからな。お前が出ていくか、ナニカを招き入れることをしない限り、お前を守ってくれる。死にたくなければ絶対開けるなよ。」

「分かりました!」

 乱暴な言い方ではあるが、牧村さんの命を優先的に考えていることが彼女にも分かったらしい。今度はハッキリと答えた。

「よし、じゃあ色々準備することにしよう。」

 その先生の言葉を皮切りに、僕と牧村さんも一緒に何かの準備を始める。

…………

「ピザヨシ、コーラヨシ、ポテチヨシ! あとは塩饅頭にお茶に盛り塩に聖水におふだに……あ、牧村、式は欲しいか?」

 出前した出来立てピザ、事務所にあったコーラ、ポテチ、(以下略)。

 それらは牧村さんが今晩事務所で過ごすのに退屈しないよう集められたらしい。先生が一つ一つ指差して確認していた。

 盛り塩と聖水とお札の辺りが『ナニカがやって来る』と言外に伝えているようで不穏だが……。まあ、これ以上牧村さんを怯えさせないためにも僕は口を噤んでおこう。

「式、とは……?」

「ん、私特製の護衛みたいなモンだな。ちょっと見た目がアレだが、役には立つはずだ。」

 あ、先生。その式はまさかあの方ではなかろうか。だとしたら見た目がアレなのは『ちょっと』ではない。『とても』だ。



「こいつはオシャレな髑髏しゃれこうべだ。」



 ポンと顕現させた先生の最高傑作の式とは、ツケマと口紅を付けた頭蓋骨なのである。インパクトは相当あるだろう。

「やっほぉ~! オシャレな髑髏こと、シャリーちゃんだよぉ~!」

 喋る頭蓋骨を見た牧村さんはそのインパクトに怖がるよりも唖然としていた。

 その気持ち、よく分かる。僕も最初見た時はポカーンと口を開けたまま固まってしまったもの。

 『オ』と『こうべ』でいい感じのダになっている、とは先生談。

 それ自体はとんでもなくしょうもないが、当の本人はそのくだらなさを気に入っているらしい。毎回良いドヤ顔で顕現させている。

 とは言っても、このシャリーさんを侮ること勿れ。守りに特化している式だからこそ今回のような場面で最大限の威力を発揮するのだ。僕も何度もお世話になっているくらいにはお強い。

「嫌でなければ、こいつを置いておいてくれ。何ならお喋り相手にでも思ってくれれば良い。」

「そ、それは勿論大丈夫です……」

 牧村さんはしょうもないダジャレに対してなのか、それともこの見た目に対してなのか、とにかく唖然としたまま固まっている。

「よし、じゃあ牧村の方は良いとして。ジョシュアベ、行くぞ。」

「え、どこに?」

 思いもよらないことを言われ、僕は先生相手だというのにタメ口をきいてしまった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

それなりに怖い話。

只野誠
ホラー
これは創作です。 実際に起きた出来事はございません。創作です。事実ではございません。創作です創作です創作です。 本当に、実際に起きた話ではございません。 なので、安心して読むことができます。 オムニバス形式なので、どの章から読んでも問題ありません。 不定期に章を追加していきます。 2026/1/10:『つかまれる』の章を追加。2026/1/17の朝8時頃より公開開始予定。 2026/1/9:『ゆうじんのかお』の章を追加。2026/1/16の朝4時頃より公開開始予定。 2026/1/8:『ついてきたもの』の章を追加。2026/1/15の朝4時頃より公開開始予定。 2026/1/7:『かわぞいのみち』の章を追加。2026/1/14の朝4時頃より公開開始予定。 2026/1/6:『まどのそと』の章を追加。2026/1/13の朝4時頃より公開開始予定。 2026/1/5:『おちゃ』の章を追加。2026/1/12の朝4時頃より公開開始予定。 2026/1/4:『かみ』の章を追加。2026/1/11の朝4時頃より公開開始予定。 ※こちらの作品は、小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで同時に掲載しています。

【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】

絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。 下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。 ※全話オリジナル作品です。

なくなって気付く愛

戒月冷音
恋愛
生まれて死ぬまで…意味があるのかしら?

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。

たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】 『み、見えるの?』 「見えるかと言われると……ギリ見えない……」 『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』  ◆◆◆  仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。  劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。  ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。  後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。  尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。    また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。  尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……    霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。  3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。  愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー! ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

私の守護霊さん

Masa&G
キャラ文芸
大学生活を送る彩音には、誰にも言えない秘密がある。 彼女のそばには、他人には姿の見えない“守護霊さん”がずっと寄り添っていた。 これは——二人で過ごした最後の一年を描く、かけがえのない物語。

春に狂(くる)う

転生新語
恋愛
 先輩と後輩、というだけの関係。後輩の少女の体を、私はホテルで時間を掛けて味わう。  小説家になろう、カクヨムに投稿しています。  小説家になろう→https://ncode.syosetu.com/n5251id/  カクヨム→https://kakuyomu.jp/works/16817330654752443761

処理中です...