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事例 壱 『コウシュ村』
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本気で走れば、いくら鍛えているとは言え疲れるもので。まあ、この前にも病院から事務所まで全力疾走していたから、その疲れも蓄積されているのかもしれないが。それは置いておこう。
「夜分遅くに申し訳ありません。首吊り病で運ばれた方の面会は可能ですか?」
「……どのようなご用件で?」
受付のお姉さんからあからさまに警戒されているのが分かるが、どうにかしてその人に会わなければならないらしい。先生がそう言っている。
いつもの看護師さんが今ここにいれば良いんだけど、この方はお初。だから僕たちの事情を知らない人にどう説明すれば良いか、と思案する──幽霊がウンヌン言っても、そもそも信じてもらえないだろうし──。
「いいから通せ。このままだとその患者の命が危ない。」
「だからどうして部外者がそんなこと分かるって言うんですか!」
「死なせたいのか! 良いから早くしろ!」
「ちょ、ま、先生~!」
今僕が説得しようと考えているっていうのに、それをガン無視して先生は突っ走ろうとして……
もー、人の話を聞けー……
「あれ、阿部さん……と、ジョシュアベさん?」
収集がつかない状況を前に僕が途方に暮れていると、良いタイミングで現れたのは馴染み深い看護師さんだった。僕のことをジョシュアベと呼ぶところからもそれは窺える。
僕の呼び名はジョシュア・べイカーという名前と、アベの助手という意味をを混ぜたものだから、先生の助手をしていると知っているからこそ出てくるものなのだ。
「あ、斉藤さん。こんばんは。あの、かくかくしかじかで……」
この斉藤さんは僕たちがどういったことに関わっているか知っている数少ない方で、簡単にことのあらましを話せば分かってくれた。
「あー、そうだったの。それなら特別に、案内しますね。」
「斉藤さん!? 何を言って……」
「箕島さん、後で詳しいことは話すわ。じゃあお二人さん、こっちよ。」
最初に対応してくれた方……箕島さんは斉藤さんの行動に不信感を持ってしまったらしい。眉間に寄った皺がそりゃあもうすごいことになっている。
後で話を通してくれるのは有り難い。ご面倒をかけます、と一言かけてから病室へと向かう。
…………
「ここよ。」
「ありがとうございます。ほら先生もお礼する!」
「ありがとな。」
「良いのよ。私たちではどうにもならない人が、あなたたちに救われていたのを知っているからね。これくらいはするわ。」
──それに、もしこの病に治療法が見つかったら御の字よ。
そう笑って『じゃあまだ仕事あるから』と去って行った斉藤さん。いつもありがとうございます、と今一度お礼の言葉を添え、僕たちは病室へと入っていく。
「夜分遅くに申し訳ありません。首吊り病で運ばれた方の面会は可能ですか?」
「……どのようなご用件で?」
受付のお姉さんからあからさまに警戒されているのが分かるが、どうにかしてその人に会わなければならないらしい。先生がそう言っている。
いつもの看護師さんが今ここにいれば良いんだけど、この方はお初。だから僕たちの事情を知らない人にどう説明すれば良いか、と思案する──幽霊がウンヌン言っても、そもそも信じてもらえないだろうし──。
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