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事例 壱 『コウシュ村』
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「グスッ……すみません、もう大丈夫です。」
しばらく泣いたからだろう。だんだんと正気に戻ってきたところで、ジワジワと羞恥で顔が熱くなった。
「そうだな、もう大丈夫そうだ。」
先生はそれを見て笑うこともなく、何なら見なかったフリすらしてくれているようで。
じゃあ先に進むか、と何事もなかったようにそう仕切り直してくれた。
「ジョシュアベにはまだまだ働いてもらうからな。覚悟しておけ。」
わざと突き放すような言い方をしているが、僕を見捨てる気など更々ないと言外に伝えてくれる。先生、今度はちゃんと言いたいこと、伝わりましたよ!
「っ、はいっ!」
僕はそれに心底安堵して、最後に一粒涙をこぼし笑って先生に応える。
その反応を見てから、先生は本格的に歩き始めた。僕もその背中を追う。
…………
「さて、この家の禍々しさは消えたが……それが逆に大元の顰蹙を買ってしまったようだな。村全体が禍々しくなってしまった。はぁーめんど。」
家から出てすぐ、先生はそうため息をこぼした。先生よりはそういうのに鈍い僕でさえ、恐怖で肌が粟立つくらいにはマズイ状況であるのだと分かった。
「先生、ため息なんて吐いている場合じゃあないですよ! 一刻も早くなんとかしないと!!」
「まあまあ、落ち着けジョシュアベ。ここまでくれば、大元自ら私たちを襲いに現れるだろう。とは言え、ここは戦闘になった時に狭い。移動しよう。」
確かにここは住宅が密集していて、動き回るには手狭だろう。
「……僕にできることはありますか?」
「そうさなぁ、お前のその引き寄せで、私たちに有利な場所にまで大元を誘き寄せる仕事を任せようか。」
「はいっ!」
これからは最終局面を迎える。祓うのは先生とは言え、僕はただ守られているだけではいたくない。そんな気持ちを先生は汲んでくれたのだろう。
己に課された仕事のためにも、今僕にできる補佐に専念していくのだった。
…………
僕はいつものように先生をおぶり、広い場所を探して走っている。
そして僕の背で休んでいる間に、先生には甘酒でも飲んでもらって体力気力を回復してもらう。
「ンム、ジョシュアベ。あっちだ。」
「あっちってどっちですかね!」
「右右」
「了解!」
僅かに何かを感じ取ったらしい先生の指示で、右に伸びる道へと方向転換する。すると数十メートル先に広場のようなところが見えた。きっとあの場所なら……
「フゥ、さすがはジョシュアベ。この甘酒といい足の速さといい、文句のつけようがない。これなら……よし、降ろせ。」
言われるがまましゃがむと、ヒョイと僕の背中から降りる先生。その様子をジッと眺めていると、先生は懐をゴソゴソと漁っているようだった。
「えーっと……あ、あった。おい、ジョシュアベ。」
「あ、はい。」
「一度そのお守りを首から外せ。それでお前の全力の引き寄せを利用させてもらう。そして誘き寄せたらすぐにお守りを……更にこのお守りも、二つとも首にすぐ掛けろ。」
懐にしまっていたのはまた新しい、桃色のお守りだった。
「じゃあ、行きますよ!」
「ああ!」
一度声をかけてから、首に下がるお守りを外していく。
しばらく泣いたからだろう。だんだんと正気に戻ってきたところで、ジワジワと羞恥で顔が熱くなった。
「そうだな、もう大丈夫そうだ。」
先生はそれを見て笑うこともなく、何なら見なかったフリすらしてくれているようで。
じゃあ先に進むか、と何事もなかったようにそう仕切り直してくれた。
「ジョシュアベにはまだまだ働いてもらうからな。覚悟しておけ。」
わざと突き放すような言い方をしているが、僕を見捨てる気など更々ないと言外に伝えてくれる。先生、今度はちゃんと言いたいこと、伝わりましたよ!
「っ、はいっ!」
僕はそれに心底安堵して、最後に一粒涙をこぼし笑って先生に応える。
その反応を見てから、先生は本格的に歩き始めた。僕もその背中を追う。
…………
「さて、この家の禍々しさは消えたが……それが逆に大元の顰蹙を買ってしまったようだな。村全体が禍々しくなってしまった。はぁーめんど。」
家から出てすぐ、先生はそうため息をこぼした。先生よりはそういうのに鈍い僕でさえ、恐怖で肌が粟立つくらいにはマズイ状況であるのだと分かった。
「先生、ため息なんて吐いている場合じゃあないですよ! 一刻も早くなんとかしないと!!」
「まあまあ、落ち着けジョシュアベ。ここまでくれば、大元自ら私たちを襲いに現れるだろう。とは言え、ここは戦闘になった時に狭い。移動しよう。」
確かにここは住宅が密集していて、動き回るには手狭だろう。
「……僕にできることはありますか?」
「そうさなぁ、お前のその引き寄せで、私たちに有利な場所にまで大元を誘き寄せる仕事を任せようか。」
「はいっ!」
これからは最終局面を迎える。祓うのは先生とは言え、僕はただ守られているだけではいたくない。そんな気持ちを先生は汲んでくれたのだろう。
己に課された仕事のためにも、今僕にできる補佐に専念していくのだった。
…………
僕はいつものように先生をおぶり、広い場所を探して走っている。
そして僕の背で休んでいる間に、先生には甘酒でも飲んでもらって体力気力を回復してもらう。
「ンム、ジョシュアベ。あっちだ。」
「あっちってどっちですかね!」
「右右」
「了解!」
僅かに何かを感じ取ったらしい先生の指示で、右に伸びる道へと方向転換する。すると数十メートル先に広場のようなところが見えた。きっとあの場所なら……
「フゥ、さすがはジョシュアベ。この甘酒といい足の速さといい、文句のつけようがない。これなら……よし、降ろせ。」
言われるがまましゃがむと、ヒョイと僕の背中から降りる先生。その様子をジッと眺めていると、先生は懐をゴソゴソと漁っているようだった。
「えーっと……あ、あった。おい、ジョシュアベ。」
「あ、はい。」
「一度そのお守りを首から外せ。それでお前の全力の引き寄せを利用させてもらう。そして誘き寄せたらすぐにお守りを……更にこのお守りも、二つとも首にすぐ掛けろ。」
懐にしまっていたのはまた新しい、桃色のお守りだった。
「じゃあ、行きますよ!」
「ああ!」
一度声をかけてから、首に下がるお守りを外していく。
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