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二章
四・二
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「あー、ええとー、島国の……下町デスカネー……」
ハハハ、と苦笑いしながらそう真実を伝えると──嘘言ってもいつかはバレるし、バレた時のリスクを考えたら本当のことを言った方がマシだ──、その見知らぬ人は嘲笑した。
「あ~、そっかそっか~。平民だったかぁ~!」
そして周りにも聞こえるように無駄に大きな声を上げ、それを聞いた周りも同様にクスクスと嘲笑した。
確かアリーズ曰く、十二星座のすぐ下の地位にいる貴族達は、トップのすぐ下ということに対して並々ならぬプライドを持っていて、それより下の一般人……目の前の生徒の言葉を借りるならば平民という立場の人間を見下しがちだ、と。
この人もそんな貴族らしい貴族のようだ。威張り散らし、平民と呼ぶ人達を嬲るような。そんな人達とは関わらないに限るな、と私は鞄を持って立ち上がることにした。
「ちょっと、この僕が話している途中だっていうのに、何処に行く気だね?」
「いや、時間の無駄になりそうだから帰ろうかと。」
「……はぁ!? この僕を蔑ろにするつもりかい? この由緒正しきナガミーレ家の僕を!?」
信じられない、と言いたげな見知らぬ人。いや、そっちの事情なんて知らんがな。さすがにそれを声に出すと現状が悪化の一途を辿ることは明白。ということで口を噤んだ私、エライ!
内心でそう自画自賛しながら、この人のお喋りを聞き流すことにした。
あれから数十分経ち、あの人はずっと喋り続けて満足したらしく私を解放してくれた。ハッキリ言ってあんな身のない話に数十分も使えるなんて一種の才能だよな、だなんて考えながら一人城へと帰る。
「おかえり、マロン。」
「ただいまー。」
ちょうど玄関近くにいたのはアリーズだった。こんな所で何をしていたんだろうか。もしかして暇してたとか? そんな疑問を持ちながらアリーズと相対する。
「初登校、どうだった?」
「いや、特に何も。アリーズこそ暇していたんじゃない? 今だってここで私の帰りを寂しく待っていたんでしょ?」
「いやいや、それこそ無いね。充分有意義な時間を過ごしたよ。ここは書庫からの帰り道に必ず通るだろう? 偶々だよ。」
「へぇー」
やっぱりアリーズは読めない。煙に巻くようなやり取りに残り少ない体力を持っていかれるような気分になり、話を切り上げることにした。
「さ、さて、私は部屋に戻るカナー」
「……フッ、話の変え方ヘッタクソ。」
「う、五月蝿いなぁ。いいでしょう? 別に。」
「フフン……ああそうだ、マロン。一つ、いいかい?」
「何さ、改まって。」
鼻で笑ったりなど先程までのおちゃらけた雰囲気から一転、アリーズは真剣な表情を浮かべ始める。何だ何だと頭に疑問符を浮かべながら(一応真剣な表情で)彼の言葉を待つことにした。
「……これから、マロンは大変な思いをするかもしれない。そしてそれを乗り越えてほしいと我輩は思う。だが、もし……もし耐えられなくなったら、我輩でも良い、他の十二星座でも良いから、頼りなさい。」
「……? 分かった。」
アリーズの言葉の真意は分からなかったが、彼がそう言うということは何か考えがあってのことだろう、と自分を納得させて頷いておいた。
その時見せたアリーズの顔はとても神妙で、奇妙で、正直言うと面白かった。
ハハハ、と苦笑いしながらそう真実を伝えると──嘘言ってもいつかはバレるし、バレた時のリスクを考えたら本当のことを言った方がマシだ──、その見知らぬ人は嘲笑した。
「あ~、そっかそっか~。平民だったかぁ~!」
そして周りにも聞こえるように無駄に大きな声を上げ、それを聞いた周りも同様にクスクスと嘲笑した。
確かアリーズ曰く、十二星座のすぐ下の地位にいる貴族達は、トップのすぐ下ということに対して並々ならぬプライドを持っていて、それより下の一般人……目の前の生徒の言葉を借りるならば平民という立場の人間を見下しがちだ、と。
この人もそんな貴族らしい貴族のようだ。威張り散らし、平民と呼ぶ人達を嬲るような。そんな人達とは関わらないに限るな、と私は鞄を持って立ち上がることにした。
「ちょっと、この僕が話している途中だっていうのに、何処に行く気だね?」
「いや、時間の無駄になりそうだから帰ろうかと。」
「……はぁ!? この僕を蔑ろにするつもりかい? この由緒正しきナガミーレ家の僕を!?」
信じられない、と言いたげな見知らぬ人。いや、そっちの事情なんて知らんがな。さすがにそれを声に出すと現状が悪化の一途を辿ることは明白。ということで口を噤んだ私、エライ!
内心でそう自画自賛しながら、この人のお喋りを聞き流すことにした。
あれから数十分経ち、あの人はずっと喋り続けて満足したらしく私を解放してくれた。ハッキリ言ってあんな身のない話に数十分も使えるなんて一種の才能だよな、だなんて考えながら一人城へと帰る。
「おかえり、マロン。」
「ただいまー。」
ちょうど玄関近くにいたのはアリーズだった。こんな所で何をしていたんだろうか。もしかして暇してたとか? そんな疑問を持ちながらアリーズと相対する。
「初登校、どうだった?」
「いや、特に何も。アリーズこそ暇していたんじゃない? 今だってここで私の帰りを寂しく待っていたんでしょ?」
「いやいや、それこそ無いね。充分有意義な時間を過ごしたよ。ここは書庫からの帰り道に必ず通るだろう? 偶々だよ。」
「へぇー」
やっぱりアリーズは読めない。煙に巻くようなやり取りに残り少ない体力を持っていかれるような気分になり、話を切り上げることにした。
「さ、さて、私は部屋に戻るカナー」
「……フッ、話の変え方ヘッタクソ。」
「う、五月蝿いなぁ。いいでしょう? 別に。」
「フフン……ああそうだ、マロン。一つ、いいかい?」
「何さ、改まって。」
鼻で笑ったりなど先程までのおちゃらけた雰囲気から一転、アリーズは真剣な表情を浮かべ始める。何だ何だと頭に疑問符を浮かべながら(一応真剣な表情で)彼の言葉を待つことにした。
「……これから、マロンは大変な思いをするかもしれない。そしてそれを乗り越えてほしいと我輩は思う。だが、もし……もし耐えられなくなったら、我輩でも良い、他の十二星座でも良いから、頼りなさい。」
「……? 分かった。」
アリーズの言葉の真意は分からなかったが、彼がそう言うということは何か考えがあってのことだろう、と自分を納得させて頷いておいた。
その時見せたアリーズの顔はとても神妙で、奇妙で、正直言うと面白かった。
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