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4章 初めての女友達
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「……花蘇芳ちゃん、ごめん。前言撤回する。この傷は何?」
「ええと……えへ?」
傷を見せた瞬間に前言撤回された。しかしあまりいい話ではないので言いたくない。
「笑って誤魔化しても駄目。可愛いけど。」
駄目かー。笑って誤魔化せなかったかー。可愛いの件はよく分からないけど。
「もー、これ痛いでしょ? それに同じような古傷だっていっぱいあるし。これが初めてじゃないよね?」
「あはは……はい。」
「藍ちゃんは悪くありません! 悪いのは……そう、ミルクティーです!」
「ミルクティー?」
真紀の髪色のことかな? 確かに真紀はミルクティー色の髪色だ。中学までは校則故に黒かったが、高校入学と同時に染め始めたのだ。高校生デビューとか言うやつだろう。髪色を変えられるなんて羨ましい限りだ。
「はい! ミルクティー色の人に傷つけられたらしいです!」
「……そうなの?」
「……まあ、はい。」
嘘をつく必要もないので肯定する。
「そう。私に出来ることはある?」
「……また怪我をしたら、治療してもらいに来てもいいですか?」
「ええ、いつでもいらっしゃい。何もなくても来ていいからね!」
何もなくても、というのはエートス話をしたいってことかな。
「はい。ありがとうございます。」
「空木ちゃんもいつでもいらっしゃいね。」
「はい!」
「舘先生優しかったねえー。」
初めて会った舘先生と意気投合したらしいいちごちゃん。途中から緊張も解れていたものね。
「そうだね。」
治療も終わり、保健室を出た私達は生徒玄関まで歩く。これからは学内を散策するって言ってたよね。花学の敷地はとても広いので歩きがいがあるだろう。
「ねえ、藍ちゃん。温室行かない? 私の秘密基地なんだ!」
「わあ、行ってみたい!」
この敷地内に温室もあるんだ。さすが花学。
「じゃあレッツゴー!」
「ゴー!」
「すごい……!」
温室にはたくさんの草木が生えていた。ベンチも置いてあるので植物を鑑賞するのにはうってつけの場所だろう。
「ここに座ってぼーっとするのが好きなんだ。嫌なことも忘れられるの。」
「そうなんだ。確かにここでぼーっとするのは気持ちよさそうだね。」
「うん!」
植物も多いので空気が綺麗だと思う。深呼吸すると気持ちもどこかすっきりする気がした。
「ねえねえ、藍ちゃん。今日はね、お菓子を持ってきたの! 一緒に食べよ?」
昨日よりもやけに鞄が大きいなあと思ったらそういうことなのね。
「いいの? 私何も持ってきてないよ?」
鞄の中にある物といえば包帯くらいしか……
「いいのー! 私が一緒に食べたいと思って持ってきたのだから!」
ベンチに座ったいちごちゃんと私の間にひょいひょいとお菓子を並べていく。色とりどりのマカロンとクッキー。どれも美味しそうだ。
「ではお言葉に甘えていただきます。」
クッキーを一つ摘む。サクサクしているし、ちょうどいい甘さで美味しい。これは紅茶味かな?
「それはアールグレイのクッキーだよ。どう?」
「とても美味しい!」
「よかった。あ、こっちのクッキーも美味しいよ! はい!」
「むぐ……美味しい……!」
これはチョコチップクッキーだ。これも美味しい。どこで買ってきたのかな。私もそのお店に行きたい。
「よかった! クッキーは昨日帰ってから作ったんだ! どう? どう?」
「え!?」
作ったの!? クオリティ高すぎる。お店開いた方がいいのでは。自慢気な顔をしているが、もっと自慢気な顔をしていいと思う。
「さすがにマカロンは買ったのだけど、クッキーは作ったの! 食べて欲しいって思ったからね!」
「ありがとう! とても美味しい!」
「えへへ、美味しいって言ってくれてありがとね!」
また作ってこなきゃ、と意気込むいちごちゃん。お菓子作りとか今までやったことなかったけど、私もやってみようかな。じょしりょくってやつを身につけた方がいいかな。
「あ、そうだ! 昨日から聞こうと思ってたんだけどさ、藍ちゃんの名前は──から取ってるの?」
うーん、自分の名前なんて気にしたことなかったなあ。でも……
「どうだろう……本当の親を知らないから、なんとも……」
私の名前の由来は? と聞ける人がいないのだ。
あれ、そういえば私の本当の親って、誰なんだろう。マスターからは何も聞いていないが……
「そうなのね。確か藍の──は……」
「じゃあまたゴールデンウィーク明けに学校でね!」
「うん。また学校で。」
いちごちゃんは帰りも音霧寮に送ってくれた。いちごちゃん曰く『藍ちゃん怪我してるし、なんか心配だから送ってく!』だそうだ。
怪我するのはいつもの事なので私は何とも思わないが、いちごちゃんはそうは思わないようで。心配をかけてしまって申し訳ないと同時にありがたい気持ちになる。
カチャリと玄関の扉を開けると藤さんがいた。
「藍ちゃん、おかえり。」
「ただいま帰りました。」
「空木ちゃん、だっけか。その子、まだいる?」
「え? あ、はい。ここまで送ってくれましたから多分すぐそこに……」
「そう。ちょっとお話してこようかなー。」
昨日の刺々しい物言いになるのではと危惧し、藤さんの袖を掴む。
「……いちごちゃんはいい子ですよ。」
言葉も添えて。
「……分かってるよ。そんなに訝しげな顔しなくても大丈夫大丈夫。ちょーっと世間話するだけだよ。」
世間話……。そっかあ、世間話かあ。藤さんもいちごちゃんとお友達になりたいのかな。頑張れ藤さん!
扉が閉まるまで藤さんを見届ける。
「ええと……えへ?」
傷を見せた瞬間に前言撤回された。しかしあまりいい話ではないので言いたくない。
「笑って誤魔化しても駄目。可愛いけど。」
駄目かー。笑って誤魔化せなかったかー。可愛いの件はよく分からないけど。
「もー、これ痛いでしょ? それに同じような古傷だっていっぱいあるし。これが初めてじゃないよね?」
「あはは……はい。」
「藍ちゃんは悪くありません! 悪いのは……そう、ミルクティーです!」
「ミルクティー?」
真紀の髪色のことかな? 確かに真紀はミルクティー色の髪色だ。中学までは校則故に黒かったが、高校入学と同時に染め始めたのだ。高校生デビューとか言うやつだろう。髪色を変えられるなんて羨ましい限りだ。
「はい! ミルクティー色の人に傷つけられたらしいです!」
「……そうなの?」
「……まあ、はい。」
嘘をつく必要もないので肯定する。
「そう。私に出来ることはある?」
「……また怪我をしたら、治療してもらいに来てもいいですか?」
「ええ、いつでもいらっしゃい。何もなくても来ていいからね!」
何もなくても、というのはエートス話をしたいってことかな。
「はい。ありがとうございます。」
「空木ちゃんもいつでもいらっしゃいね。」
「はい!」
「舘先生優しかったねえー。」
初めて会った舘先生と意気投合したらしいいちごちゃん。途中から緊張も解れていたものね。
「そうだね。」
治療も終わり、保健室を出た私達は生徒玄関まで歩く。これからは学内を散策するって言ってたよね。花学の敷地はとても広いので歩きがいがあるだろう。
「ねえ、藍ちゃん。温室行かない? 私の秘密基地なんだ!」
「わあ、行ってみたい!」
この敷地内に温室もあるんだ。さすが花学。
「じゃあレッツゴー!」
「ゴー!」
「すごい……!」
温室にはたくさんの草木が生えていた。ベンチも置いてあるので植物を鑑賞するのにはうってつけの場所だろう。
「ここに座ってぼーっとするのが好きなんだ。嫌なことも忘れられるの。」
「そうなんだ。確かにここでぼーっとするのは気持ちよさそうだね。」
「うん!」
植物も多いので空気が綺麗だと思う。深呼吸すると気持ちもどこかすっきりする気がした。
「ねえねえ、藍ちゃん。今日はね、お菓子を持ってきたの! 一緒に食べよ?」
昨日よりもやけに鞄が大きいなあと思ったらそういうことなのね。
「いいの? 私何も持ってきてないよ?」
鞄の中にある物といえば包帯くらいしか……
「いいのー! 私が一緒に食べたいと思って持ってきたのだから!」
ベンチに座ったいちごちゃんと私の間にひょいひょいとお菓子を並べていく。色とりどりのマカロンとクッキー。どれも美味しそうだ。
「ではお言葉に甘えていただきます。」
クッキーを一つ摘む。サクサクしているし、ちょうどいい甘さで美味しい。これは紅茶味かな?
「それはアールグレイのクッキーだよ。どう?」
「とても美味しい!」
「よかった。あ、こっちのクッキーも美味しいよ! はい!」
「むぐ……美味しい……!」
これはチョコチップクッキーだ。これも美味しい。どこで買ってきたのかな。私もそのお店に行きたい。
「よかった! クッキーは昨日帰ってから作ったんだ! どう? どう?」
「え!?」
作ったの!? クオリティ高すぎる。お店開いた方がいいのでは。自慢気な顔をしているが、もっと自慢気な顔をしていいと思う。
「さすがにマカロンは買ったのだけど、クッキーは作ったの! 食べて欲しいって思ったからね!」
「ありがとう! とても美味しい!」
「えへへ、美味しいって言ってくれてありがとね!」
また作ってこなきゃ、と意気込むいちごちゃん。お菓子作りとか今までやったことなかったけど、私もやってみようかな。じょしりょくってやつを身につけた方がいいかな。
「あ、そうだ! 昨日から聞こうと思ってたんだけどさ、藍ちゃんの名前は──から取ってるの?」
うーん、自分の名前なんて気にしたことなかったなあ。でも……
「どうだろう……本当の親を知らないから、なんとも……」
私の名前の由来は? と聞ける人がいないのだ。
あれ、そういえば私の本当の親って、誰なんだろう。マスターからは何も聞いていないが……
「そうなのね。確か藍の──は……」
「じゃあまたゴールデンウィーク明けに学校でね!」
「うん。また学校で。」
いちごちゃんは帰りも音霧寮に送ってくれた。いちごちゃん曰く『藍ちゃん怪我してるし、なんか心配だから送ってく!』だそうだ。
怪我するのはいつもの事なので私は何とも思わないが、いちごちゃんはそうは思わないようで。心配をかけてしまって申し訳ないと同時にありがたい気持ちになる。
カチャリと玄関の扉を開けると藤さんがいた。
「藍ちゃん、おかえり。」
「ただいま帰りました。」
「空木ちゃん、だっけか。その子、まだいる?」
「え? あ、はい。ここまで送ってくれましたから多分すぐそこに……」
「そう。ちょっとお話してこようかなー。」
昨日の刺々しい物言いになるのではと危惧し、藤さんの袖を掴む。
「……いちごちゃんはいい子ですよ。」
言葉も添えて。
「……分かってるよ。そんなに訝しげな顔しなくても大丈夫大丈夫。ちょーっと世間話するだけだよ。」
世間話……。そっかあ、世間話かあ。藤さんもいちごちゃんとお友達になりたいのかな。頑張れ藤さん!
扉が閉まるまで藤さんを見届ける。
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