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5章 体育祭
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「体育祭だあー!」
今日は体育祭当日。皆気合いが入っているようだ。ジャージに着替えて校庭にぞろぞろと出て。私は音霧の皆さんとお喋りしていた。
「楽しみだね、藍ちゃん。」
ひょこっと隣に現れた藤さんはどこか楽しそう。
「はい。」
今まで嫌われ者の私はそこに存在しているだけで迷惑だと言われてたから、こういう行事の時は人がいない場所で時間が過ぎるのを待ってたっけなあ。懐かしいや。
だから今こうやって行事に参加し、誰かと一緒にいるのは初めてのこと。楽しみでしょうがなくなるのは仕方のないことだと思う。
「藍ちゃん! おはよー!」
「いちごちゃん、おはよう。」
いちごちゃんがてててっと小走りでこっちに来た。可愛い。
いちごちゃんが私達と一緒にいる場面はそこそこ多い──昼休みやちょっと廊下でばったり会った時など──はずなのに、未だに他の生徒さんは私達といちごちゃんのやり取りを見てびっくりしている。
「皆さんもおはようございます!」
もちろん音霧の皆さんとも顔見知りになっているのだが、しかし音霧の皆さんもまだ慣れていないらしい。言動がまだ少しぎこちない。
「おはよー。今日は負けないからね。」
「こちらこそ負けませんよ!」
あれ? いちごちゃんと藤さんっていつの間に仲良くなったんだろう。ばったり会った時もあまり話している所を見たことがなかったのに。
あんなに刺々しかったけど……仲良しになったんだね、良かった、と安心する。
「打倒A組だよね!」
「私も負けないよ、いちごちゃん。」
この学校はクラスごとで組団を分けるらしいのでA組の私はF組のいちごちゃんと今日は敵となる。
B組柊木さん、C組桃さん、D組福寿さん、F組いちごちゃん。A組以外は綺麗に分かれているから、三人纏まっているA組を標的にしているのだろう。しかしこちらも負ける気は無い。
何はともあれ、体育祭、スタートです!
徒競走が向こうで始まりそうだった。確か桃さんが出るはず。
「もっと近くで見たいです。」
「それならあっち行ってみたらどうだ?」
「いいですね。行ってみましょう。」
いちごちゃんは同じクラスの子と見て回るらしく、今ここにいるのは山吹さん、柊木さん、私の三人。
藤さんは救護用のテントに行き、桃さんは徒競走の待機場所に行き、福寿さんはどこかに消えた。
私達が観戦場所に行くと、他の人が場所を空けてくれたので私達の周りにはある程度広めの空間が出来上がった。皆さんやっぱり音霧の人間が怖いんですね。でも危害を加えられないのは救いだね。痛いのは嫌だもの。
「あ、ちょうど桃が走るようですね。」
「グッドタイミングだったな。」
「間に合ってよかったです。」
「……あ? あいつ竹刀持ってねえな。力、使わねえのか?」
竹刀……? そういえば桃さんはいつも竹刀持っていると言ってたけど、いつもっていつのことだろう。
「あれ、花蘇芳さん不思議そうな顔していますね。桃はいつも寮以外では竹刀持っていますよ。」
「持っていましたっけ……?」
「いつも背負ってる黒い袋ん中に竹刀入ってんだよ。」
「ああ! あれの中に竹刀入ってたんですね!」
初めて知った。確かに寮以外ではいつも持ち歩いているね。
「あれを持っていないということは自力で勝負するってことか。ふーん、お手並み拝見だな。」
「まあ、桃は普段から走ったりしてますからね。早いんじゃないですかね。」
そんな風に話していると、パンッと合図が鳴る。その瞬間に皆さん走り出す。
桃さんはやっぱり普段から走っているらしいので早い。あっという間に一番前を走っている。そしてそのまま二位以下を突き放してゴール。
あ、桃さんこっちに向かってピースしてる。私もそれに倣ってピースすると一瞬驚いた顔をし、その後破顔した。いつも以上に嬉しそうな笑みだった。
色々な競技が進む中、玉入れに出る人が集まる時間になった。
「では、時間なので行ってきます。」
「おう、行ってこい。」
「頑張ってください。応援してます。」
「はいっ。」
山吹さんと柊木さんに見送られ、集合場所へ。楽しみだなあ。
パンッ!
合図が鳴り、一斉に玉を籠に入れ始める。私は能力使えるし、と少し離れたところから投げ入れる。
二、三個持って能力使ってぽいっと。どれだけ自然に入れられるかが重要かな、とどうでもいいことに拘り出す。
「意外と楽しい。」
ぽいぽいと拾っては投げ、拾っては投げ。ちらっと他のクラスの籠を見ると圧倒的にA組が優勢だということが分かった。これ私も貢献出来てるんじゃない? そう思うと余計頑張れる気がした。
いーち、にー、さーん……と籠の中の玉の数を数える。他の組は数え終わるが、A組はまだ籠に残っている。
さんじゅうさーん……
「玉入れの結果は、A組の勝利!」
やったーだのわーいだの色々なところから聞こえる。クラスメイトの中で私と話をする人はいないので一人ぽつんと立ち尽くす。まあ、楽しかったからいいんだよ。まだ私達は怖がられているからね。仕方ない。
あとは私の出番は全員リレーだけだとほっとする。さて山吹さん達のところへ戻ろう。
と思って歩き、人目が少ないところまで来た時。
それは突然に起こった。
ガッ
後ろから殴られたようで。
意識はそこで途切れた。
今日は体育祭当日。皆気合いが入っているようだ。ジャージに着替えて校庭にぞろぞろと出て。私は音霧の皆さんとお喋りしていた。
「楽しみだね、藍ちゃん。」
ひょこっと隣に現れた藤さんはどこか楽しそう。
「はい。」
今まで嫌われ者の私はそこに存在しているだけで迷惑だと言われてたから、こういう行事の時は人がいない場所で時間が過ぎるのを待ってたっけなあ。懐かしいや。
だから今こうやって行事に参加し、誰かと一緒にいるのは初めてのこと。楽しみでしょうがなくなるのは仕方のないことだと思う。
「藍ちゃん! おはよー!」
「いちごちゃん、おはよう。」
いちごちゃんがてててっと小走りでこっちに来た。可愛い。
いちごちゃんが私達と一緒にいる場面はそこそこ多い──昼休みやちょっと廊下でばったり会った時など──はずなのに、未だに他の生徒さんは私達といちごちゃんのやり取りを見てびっくりしている。
「皆さんもおはようございます!」
もちろん音霧の皆さんとも顔見知りになっているのだが、しかし音霧の皆さんもまだ慣れていないらしい。言動がまだ少しぎこちない。
「おはよー。今日は負けないからね。」
「こちらこそ負けませんよ!」
あれ? いちごちゃんと藤さんっていつの間に仲良くなったんだろう。ばったり会った時もあまり話している所を見たことがなかったのに。
あんなに刺々しかったけど……仲良しになったんだね、良かった、と安心する。
「打倒A組だよね!」
「私も負けないよ、いちごちゃん。」
この学校はクラスごとで組団を分けるらしいのでA組の私はF組のいちごちゃんと今日は敵となる。
B組柊木さん、C組桃さん、D組福寿さん、F組いちごちゃん。A組以外は綺麗に分かれているから、三人纏まっているA組を標的にしているのだろう。しかしこちらも負ける気は無い。
何はともあれ、体育祭、スタートです!
徒競走が向こうで始まりそうだった。確か桃さんが出るはず。
「もっと近くで見たいです。」
「それならあっち行ってみたらどうだ?」
「いいですね。行ってみましょう。」
いちごちゃんは同じクラスの子と見て回るらしく、今ここにいるのは山吹さん、柊木さん、私の三人。
藤さんは救護用のテントに行き、桃さんは徒競走の待機場所に行き、福寿さんはどこかに消えた。
私達が観戦場所に行くと、他の人が場所を空けてくれたので私達の周りにはある程度広めの空間が出来上がった。皆さんやっぱり音霧の人間が怖いんですね。でも危害を加えられないのは救いだね。痛いのは嫌だもの。
「あ、ちょうど桃が走るようですね。」
「グッドタイミングだったな。」
「間に合ってよかったです。」
「……あ? あいつ竹刀持ってねえな。力、使わねえのか?」
竹刀……? そういえば桃さんはいつも竹刀持っていると言ってたけど、いつもっていつのことだろう。
「あれ、花蘇芳さん不思議そうな顔していますね。桃はいつも寮以外では竹刀持っていますよ。」
「持っていましたっけ……?」
「いつも背負ってる黒い袋ん中に竹刀入ってんだよ。」
「ああ! あれの中に竹刀入ってたんですね!」
初めて知った。確かに寮以外ではいつも持ち歩いているね。
「あれを持っていないということは自力で勝負するってことか。ふーん、お手並み拝見だな。」
「まあ、桃は普段から走ったりしてますからね。早いんじゃないですかね。」
そんな風に話していると、パンッと合図が鳴る。その瞬間に皆さん走り出す。
桃さんはやっぱり普段から走っているらしいので早い。あっという間に一番前を走っている。そしてそのまま二位以下を突き放してゴール。
あ、桃さんこっちに向かってピースしてる。私もそれに倣ってピースすると一瞬驚いた顔をし、その後破顔した。いつも以上に嬉しそうな笑みだった。
色々な競技が進む中、玉入れに出る人が集まる時間になった。
「では、時間なので行ってきます。」
「おう、行ってこい。」
「頑張ってください。応援してます。」
「はいっ。」
山吹さんと柊木さんに見送られ、集合場所へ。楽しみだなあ。
パンッ!
合図が鳴り、一斉に玉を籠に入れ始める。私は能力使えるし、と少し離れたところから投げ入れる。
二、三個持って能力使ってぽいっと。どれだけ自然に入れられるかが重要かな、とどうでもいいことに拘り出す。
「意外と楽しい。」
ぽいぽいと拾っては投げ、拾っては投げ。ちらっと他のクラスの籠を見ると圧倒的にA組が優勢だということが分かった。これ私も貢献出来てるんじゃない? そう思うと余計頑張れる気がした。
いーち、にー、さーん……と籠の中の玉の数を数える。他の組は数え終わるが、A組はまだ籠に残っている。
さんじゅうさーん……
「玉入れの結果は、A組の勝利!」
やったーだのわーいだの色々なところから聞こえる。クラスメイトの中で私と話をする人はいないので一人ぽつんと立ち尽くす。まあ、楽しかったからいいんだよ。まだ私達は怖がられているからね。仕方ない。
あとは私の出番は全員リレーだけだとほっとする。さて山吹さん達のところへ戻ろう。
と思って歩き、人目が少ないところまで来た時。
それは突然に起こった。
ガッ
後ろから殴られたようで。
意識はそこで途切れた。
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