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5章 体育祭
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早いもので体育祭の準備も終わりつつある。いよいよ明日が本番。
振り返ってみるととても忙しかったが、充実していたのではないだろうか。それに加えて今年は初めて行事に参加出来るのだからとても楽しみだ。
今は前日ということで各自やり残した作業や確認をしている。私は校庭に荷物を運んでいる。もちろん能力を使っているので全く重くない。
そんなことを考えながら歩いていると、
「テントを張りたいのだが、こちらに人員を割けないのだな……どうすればいいのだ!」
私の少し先で織田さんが叫んでいた。校庭に点々と来客用のテントの機材が置いてあるのを見ると、これを組み立てる人が必要なのだと分かる。確かにこれはある程度の人数が必要だ。
私の能力がなければ、の話だが。
初めて会った日から織田さんとは一人で会っていなかったが、どうしよう。今山吹さんが近くにいない。一人で話しかけて下手に心配をかけるのも嫌なんだけど……。
あ、いざとなったらいちごちゃんを助けた時みたいに能力を使えばいいか。よし、それなら大丈夫だね。困っている人を見過ごすことは出来ない。
「織田さん、これは今すぐに建てなければならないものですか?」
「え? いきなりどうしたんだい、花蘇芳 藍さん。」
「質問に答えてください。今すぐですか、それとも今日中ですか。」
「ああ、今日中でいいのだが、他の人はそれぞれ準備があるらしくてな……。それで、どうしてそんなことを聞くのかい?」
「でしたら私が組み立てますよ。」
私の能力を使えば簡単に組み立てられる。ひょひょいっとね。
「あなたの手を煩わせるわけにはいかな」
「そういうのいいですから。適材適所、というものですよ。私がこれに関しては適材だと思います。」
「……? そうか、分かった。よろしく頼むよ。」
「ありがとうございます。今日皆さんが帰った後に組み立てますから。」
「そうかい? 他に誰か必要かい? 派遣するよ?」
「いや、要らないです。」
むしろ一人の方が都合いい。能力を使っているところを見られるのはまずいから。
「……そうか。じゃあお願いするね。」
「はい。」
テントを建てること以外はもう準備万端。皆さん帰っていきます。
「花蘇芳さん、私も何か手伝いますか?」
山吹さんに事情を説明したところ、一緒に残ってくれることに。ありがたいですね。
「大丈夫です。能力使ってちょちょいと建ててしまいますから。」
「そうですか。」
周りを見渡して人がいなくなったことを確認し、よし、と気合を入れる。
「それでは山吹さん、少し離れていてください。」
「分かりました。」
山吹さんが少し離れたことを確認し、視界に入れたテントの骨組み達をふわりふわりと浮かせ、設計図通りに組み立てていく。何の労力もない。
ものの数分で組み立て終えた。山吹さんにも出来を確認してもらい、大丈夫とのこと。よかった。
建て終えたのであとは帰っていい。ということで山吹さんと私は鞄を取りに教室に戻ってきた。
「それにしてもすごいですね、花蘇芳さんの能力。」
「そうですか?」
「ええ。私の能力は使い所がないと言いますか……。」
「そうですか? 色々と使えそうだと思いますが……」
話しながら机の中の物を鞄に入れようとして、白い封筒が一通入っているのを見つけた。その封筒には『ハナズオウ アイへ』としか書かれておらず、裏返しても差出人は不明だった。
「どうされましたか?」
「あ……いえ、なんでもないです。ただ手紙が入っていただけで……」
「手紙?」
「はい。私宛の。」
「そうですか。」
そう、ただの手紙なはずなのに、胸がざわざわするのは……何故?
自分の部屋に戻ってから先程の手紙を開封し、かさりと中の手紙を取り出す。
中に入っていた紙には一言、『ミツケタ』の文字が。
何か嫌な予感がする。当たらなければいいけど。
振り返ってみるととても忙しかったが、充実していたのではないだろうか。それに加えて今年は初めて行事に参加出来るのだからとても楽しみだ。
今は前日ということで各自やり残した作業や確認をしている。私は校庭に荷物を運んでいる。もちろん能力を使っているので全く重くない。
そんなことを考えながら歩いていると、
「テントを張りたいのだが、こちらに人員を割けないのだな……どうすればいいのだ!」
私の少し先で織田さんが叫んでいた。校庭に点々と来客用のテントの機材が置いてあるのを見ると、これを組み立てる人が必要なのだと分かる。確かにこれはある程度の人数が必要だ。
私の能力がなければ、の話だが。
初めて会った日から織田さんとは一人で会っていなかったが、どうしよう。今山吹さんが近くにいない。一人で話しかけて下手に心配をかけるのも嫌なんだけど……。
あ、いざとなったらいちごちゃんを助けた時みたいに能力を使えばいいか。よし、それなら大丈夫だね。困っている人を見過ごすことは出来ない。
「織田さん、これは今すぐに建てなければならないものですか?」
「え? いきなりどうしたんだい、花蘇芳 藍さん。」
「質問に答えてください。今すぐですか、それとも今日中ですか。」
「ああ、今日中でいいのだが、他の人はそれぞれ準備があるらしくてな……。それで、どうしてそんなことを聞くのかい?」
「でしたら私が組み立てますよ。」
私の能力を使えば簡単に組み立てられる。ひょひょいっとね。
「あなたの手を煩わせるわけにはいかな」
「そういうのいいですから。適材適所、というものですよ。私がこれに関しては適材だと思います。」
「……? そうか、分かった。よろしく頼むよ。」
「ありがとうございます。今日皆さんが帰った後に組み立てますから。」
「そうかい? 他に誰か必要かい? 派遣するよ?」
「いや、要らないです。」
むしろ一人の方が都合いい。能力を使っているところを見られるのはまずいから。
「……そうか。じゃあお願いするね。」
「はい。」
テントを建てること以外はもう準備万端。皆さん帰っていきます。
「花蘇芳さん、私も何か手伝いますか?」
山吹さんに事情を説明したところ、一緒に残ってくれることに。ありがたいですね。
「大丈夫です。能力使ってちょちょいと建ててしまいますから。」
「そうですか。」
周りを見渡して人がいなくなったことを確認し、よし、と気合を入れる。
「それでは山吹さん、少し離れていてください。」
「分かりました。」
山吹さんが少し離れたことを確認し、視界に入れたテントの骨組み達をふわりふわりと浮かせ、設計図通りに組み立てていく。何の労力もない。
ものの数分で組み立て終えた。山吹さんにも出来を確認してもらい、大丈夫とのこと。よかった。
建て終えたのであとは帰っていい。ということで山吹さんと私は鞄を取りに教室に戻ってきた。
「それにしてもすごいですね、花蘇芳さんの能力。」
「そうですか?」
「ええ。私の能力は使い所がないと言いますか……。」
「そうですか? 色々と使えそうだと思いますが……」
話しながら机の中の物を鞄に入れようとして、白い封筒が一通入っているのを見つけた。その封筒には『ハナズオウ アイへ』としか書かれておらず、裏返しても差出人は不明だった。
「どうされましたか?」
「あ……いえ、なんでもないです。ただ手紙が入っていただけで……」
「手紙?」
「はい。私宛の。」
「そうですか。」
そう、ただの手紙なはずなのに、胸がざわざわするのは……何故?
自分の部屋に戻ってから先程の手紙を開封し、かさりと中の手紙を取り出す。
中に入っていた紙には一言、『ミツケタ』の文字が。
何か嫌な予感がする。当たらなければいいけど。
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