『あなた次第』 【本編は完結】

君影 ルナ

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番外編(続)

1 お披露目

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「ああどうしよう……」

 本編直後のこと。登校した私達はクラスが違う三人と途中で別れ、A組の教室の扉の前で一人もだもだしていた。竜胆さんと藤さんは『大丈夫だよー』などと声を掛けてくれるが……

 同じクラスの人からは『素の姿で来てね!』と前に言われていたが、いざそのような状況になってみると不安で仕方がない。どうすればいいかな……

「はっ! そうか、手ぬぐいか何かでほっかむりしてサングラスをすれば……隠せる!」

 と思って自分の鞄を覗いてみたが、手ぬぐいもサングラスも見当たらない。当たり前だ。そもそも寮にすらあるかどうか分からないくらいなのだから。

「圧倒的不審者。」
「本当にやりませんよね?」

 藤さんと竜胆さんはドン引きする。そこまで引かなくてもいいじゃないですか。ぷぅ、と頬が膨らむ。

「……ここに手ぬぐいもサングラスも無いので諦めます。」
「ふふ、それは良かったです。ですが藍さん、大丈夫ですよ。」
「そうそう、クラスの人達は本心で言ってるんだからさ。その言葉を信じようよ。」

 竜胆さんと藤さんにそう言われる。ああ、信じることも大切なのか。

「そうですね、信じます。大丈夫大丈夫大丈夫大丈……」

 自分に暗示を掛けながらガラリと扉を開けるが、恐怖で思わずぎゅっと目を瞑ってしまう。

「あ! 花蘇芳さんそれ!」
「素の方だ!」

 そんな言葉と共にわらわらと私の周りに人集りが出来る。怖がられてはいないようで、そのことにほっと一息つく。

「ねぇねぇ、ヘアアレンジさせて! ね、いいよね! いいよね!?」
「う、うん……?」

 と、何がどうなっているか分からず流れに身を任せていると、その間に髪を弄られていた。




 出来上がったものを手鏡で見せてくれたのだが、それはもうとても可愛かった。うん、多分私は不器用なのできっと無理なやつだ。すごく凝った感じだもん。

「ほわぁー……すごい。」

 本当どうやればこんなにすごいのが出来るんだろう……! 尊敬に値する。

「すごいって言っても……ただくるりんぱしただけだよ?」
「うーん?」

 そのくるりんぱとか言うのが何者か分からないのだけれども。くるりんって言うくらいだから回ってるのかな?

「これであと髪飾りでもあれば完璧なんだけど……あたし自分用しか今持ってきてないからねえ……」

 ヘアアレンジしてくれた方がそう呟く。髪飾りか……うん、やっぱり一つも持ってないです。はい。

 自分の記憶を辿ったけど、髪飾りを買った記憶もなければ付けた記憶もない。

「花蘇芳さん、髪飾りって持ってる?」
「持ってないです。寮にもありません。」
「そっかー。」
「……やっぱりジョシリョクって磨いた方いいですよね?」

 服も髪も動きやすさを第一にしているので、可愛げというものが欠如していると思う。やっぱり女子力を磨いて可愛くなる努力をするべきかな……? 女子だし。

「なんで片言なのさ。花蘇芳さんって面白いね。」

 笑われてしまった。しかし片言にもなる。

「今の私には程遠い力なので……。」

 頑張って考えて、私の中での一番の女子力っていえばマカロンを食べたことがある、とかだと思うし。(なんか違う?)

「じゃあこれから磨けばいいじゃん!」
「あの……どうすれば女子力磨けるか、教えていただけませんか?」

 多分皆さんに聞くのが一番だと思うからね。

「もちろんいいよ! なんか花蘇芳さんって磨けばもっと光る気がするもん! 私見てみたい!」
「ありがとうございます! 私頑張ります!」
「その意気だ!」




 和気あいあいと始業の鐘が鳴るまで色々とクラスメイトの皆さんとお喋りしたのだった。

 その時にはもう、容姿で怖がられるのではないかという心配も不安もなくなっていた。
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