114 / 127
番外編(続)
1 お披露目
しおりを挟む
「ああどうしよう……」
本編直後のこと。登校した私達はクラスが違う三人と途中で別れ、A組の教室の扉の前で一人もだもだしていた。竜胆さんと藤さんは『大丈夫だよー』などと声を掛けてくれるが……
同じクラスの人からは『素の姿で来てね!』と前に言われていたが、いざそのような状況になってみると不安で仕方がない。どうすればいいかな……
「はっ! そうか、手ぬぐいか何かでほっかむりしてサングラスをすれば……隠せる!」
と思って自分の鞄を覗いてみたが、手ぬぐいもサングラスも見当たらない。当たり前だ。そもそも寮にすらあるかどうか分からないくらいなのだから。
「圧倒的不審者。」
「本当にやりませんよね?」
藤さんと竜胆さんはドン引きする。そこまで引かなくてもいいじゃないですか。ぷぅ、と頬が膨らむ。
「……ここに手ぬぐいもサングラスも無いので諦めます。」
「ふふ、それは良かったです。ですが藍さん、大丈夫ですよ。」
「そうそう、クラスの人達は本心で言ってるんだからさ。その言葉を信じようよ。」
竜胆さんと藤さんにそう言われる。ああ、信じることも大切なのか。
「そうですね、信じます。大丈夫大丈夫大丈夫大丈……」
自分に暗示を掛けながらガラリと扉を開けるが、恐怖で思わずぎゅっと目を瞑ってしまう。
「あ! 花蘇芳さんそれ!」
「素の方だ!」
そんな言葉と共にわらわらと私の周りに人集りが出来る。怖がられてはいないようで、そのことにほっと一息つく。
「ねぇねぇ、ヘアアレンジさせて! ね、いいよね! いいよね!?」
「う、うん……?」
と、何がどうなっているか分からず流れに身を任せていると、その間に髪を弄られていた。
出来上がったものを手鏡で見せてくれたのだが、それはもうとても可愛かった。うん、多分私は不器用なのできっと無理なやつだ。すごく凝った感じだもん。
「ほわぁー……すごい。」
本当どうやればこんなにすごいのが出来るんだろう……! 尊敬に値する。
「すごいって言っても……ただくるりんぱしただけだよ?」
「うーん?」
そのくるりんぱとか言うのが何者か分からないのだけれども。くるりんって言うくらいだから回ってるのかな?
「これであと髪飾りでもあれば完璧なんだけど……あたし自分用しか今持ってきてないからねえ……」
ヘアアレンジしてくれた方がそう呟く。髪飾りか……うん、やっぱり一つも持ってないです。はい。
自分の記憶を辿ったけど、髪飾りを買った記憶もなければ付けた記憶もない。
「花蘇芳さん、髪飾りって持ってる?」
「持ってないです。寮にもありません。」
「そっかー。」
「……やっぱりジョシリョクって磨いた方いいですよね?」
服も髪も動きやすさを第一にしているので、可愛げというものが欠如していると思う。やっぱり女子力を磨いて可愛くなる努力をするべきかな……? 女子だし。
「なんで片言なのさ。花蘇芳さんって面白いね。」
笑われてしまった。しかし片言にもなる。
「今の私には程遠い力なので……。」
頑張って考えて、私の中での一番の女子力っていえばマカロンを食べたことがある、とかだと思うし。(なんか違う?)
「じゃあこれから磨けばいいじゃん!」
「あの……どうすれば女子力磨けるか、教えていただけませんか?」
多分皆さんに聞くのが一番だと思うからね。
「もちろんいいよ! なんか花蘇芳さんって磨けばもっと光る気がするもん! 私見てみたい!」
「ありがとうございます! 私頑張ります!」
「その意気だ!」
和気あいあいと始業の鐘が鳴るまで色々とクラスメイトの皆さんとお喋りしたのだった。
その時にはもう、容姿で怖がられるのではないかという心配も不安もなくなっていた。
本編直後のこと。登校した私達はクラスが違う三人と途中で別れ、A組の教室の扉の前で一人もだもだしていた。竜胆さんと藤さんは『大丈夫だよー』などと声を掛けてくれるが……
同じクラスの人からは『素の姿で来てね!』と前に言われていたが、いざそのような状況になってみると不安で仕方がない。どうすればいいかな……
「はっ! そうか、手ぬぐいか何かでほっかむりしてサングラスをすれば……隠せる!」
と思って自分の鞄を覗いてみたが、手ぬぐいもサングラスも見当たらない。当たり前だ。そもそも寮にすらあるかどうか分からないくらいなのだから。
「圧倒的不審者。」
「本当にやりませんよね?」
藤さんと竜胆さんはドン引きする。そこまで引かなくてもいいじゃないですか。ぷぅ、と頬が膨らむ。
「……ここに手ぬぐいもサングラスも無いので諦めます。」
「ふふ、それは良かったです。ですが藍さん、大丈夫ですよ。」
「そうそう、クラスの人達は本心で言ってるんだからさ。その言葉を信じようよ。」
竜胆さんと藤さんにそう言われる。ああ、信じることも大切なのか。
「そうですね、信じます。大丈夫大丈夫大丈夫大丈……」
自分に暗示を掛けながらガラリと扉を開けるが、恐怖で思わずぎゅっと目を瞑ってしまう。
「あ! 花蘇芳さんそれ!」
「素の方だ!」
そんな言葉と共にわらわらと私の周りに人集りが出来る。怖がられてはいないようで、そのことにほっと一息つく。
「ねぇねぇ、ヘアアレンジさせて! ね、いいよね! いいよね!?」
「う、うん……?」
と、何がどうなっているか分からず流れに身を任せていると、その間に髪を弄られていた。
出来上がったものを手鏡で見せてくれたのだが、それはもうとても可愛かった。うん、多分私は不器用なのできっと無理なやつだ。すごく凝った感じだもん。
「ほわぁー……すごい。」
本当どうやればこんなにすごいのが出来るんだろう……! 尊敬に値する。
「すごいって言っても……ただくるりんぱしただけだよ?」
「うーん?」
そのくるりんぱとか言うのが何者か分からないのだけれども。くるりんって言うくらいだから回ってるのかな?
「これであと髪飾りでもあれば完璧なんだけど……あたし自分用しか今持ってきてないからねえ……」
ヘアアレンジしてくれた方がそう呟く。髪飾りか……うん、やっぱり一つも持ってないです。はい。
自分の記憶を辿ったけど、髪飾りを買った記憶もなければ付けた記憶もない。
「花蘇芳さん、髪飾りって持ってる?」
「持ってないです。寮にもありません。」
「そっかー。」
「……やっぱりジョシリョクって磨いた方いいですよね?」
服も髪も動きやすさを第一にしているので、可愛げというものが欠如していると思う。やっぱり女子力を磨いて可愛くなる努力をするべきかな……? 女子だし。
「なんで片言なのさ。花蘇芳さんって面白いね。」
笑われてしまった。しかし片言にもなる。
「今の私には程遠い力なので……。」
頑張って考えて、私の中での一番の女子力っていえばマカロンを食べたことがある、とかだと思うし。(なんか違う?)
「じゃあこれから磨けばいいじゃん!」
「あの……どうすれば女子力磨けるか、教えていただけませんか?」
多分皆さんに聞くのが一番だと思うからね。
「もちろんいいよ! なんか花蘇芳さんって磨けばもっと光る気がするもん! 私見てみたい!」
「ありがとうございます! 私頑張ります!」
「その意気だ!」
和気あいあいと始業の鐘が鳴るまで色々とクラスメイトの皆さんとお喋りしたのだった。
その時にはもう、容姿で怖がられるのではないかという心配も不安もなくなっていた。
0
あなたにおすすめの小説
この世界、イケメンが迫害されてるってマジ!?〜アホの子による無自覚救済物語〜
具なっしー
恋愛
※この表紙は前世基準。本編では美醜逆転してます。AIです
転生先は──美醜逆転、男女比20:1の世界!?
肌は真っ白、顔のパーツは小さければ小さいほど美しい!?
その結果、地球基準の超絶イケメンたちは “醜男(キメオ)” と呼ばれ、迫害されていた。
そんな世界に爆誕したのは、脳みそふわふわアホの子・ミーミ。
前世で「喋らなければ可愛い」と言われ続けた彼女に同情した神様は、
「この子は救済が必要だ…!」と世界一の美少女に転生させてしまった。
「ひきわり納豆顔じゃん!これが美しいの??」
己の欲望のために押せ押せ行動するアホの子が、
結果的にイケメン達を救い、世界を変えていく──!
「すきーー♡結婚してください!私が幸せにしますぅ〜♡♡♡」
でも、気づけば彼らが全方向から迫ってくる逆ハーレム状態に……!
アホの子が無自覚に世界を救う、
価値観バグりまくりご都合主義100%ファンタジーラブコメ!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)
大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。
この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人)
そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ!
この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。
前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。
顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。
どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね!
そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる!
主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。
外はその限りではありません。
カクヨムでも投稿しております。
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる