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番外編
藍のバースデー
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今日は休日。特に用事もないし……どうしようかな。どこかに出掛けようかな?
朝ご飯を食べながら今日の予定を考える。今日は洋風らしく、トーストとコーンスープ、そしてサラダ。どれも美味しい。頬を緩めながらサクッとトーストを一口かじった時、茜さんがフッとこちらを向いたのに気がついた。
「藍、今日は俺とデートしようか。」
「ちょ、あかね!?」
「……。」
茜さんの言葉に、竜胆さんが素早く反応する。つーくんは茜さんを睨んでいるようにも見える。藤さんと桃さんは自分に関係ないと言わんばかりにトーストやスープを黙々と食べていた。
さて私はといえば、茜さんから言われた言葉を頭の中で処理しようと試みる。あれ、デート……って何だっけ。ええと、確か好きな人と一緒に出掛けるやつ……だよね。そこまで考えて気恥ずかしさから少し頬が熱くなる。
「私と、ですか?」
「もちろん。」
「それなら私も行きます!」
「……俺もついて行こう。」
「……まあ、仕方ない。皆で行こうか。」
竜胆さんとつーくんが一緒に行きたがっていたのを見て、茜さんは溜息をつきながらも笑ってそう言った。
それなら普通にお出掛けってことで良いのかな。恋愛初心者なのでデート、というワードに私は一々反応してしまう。だから普通にお出掛けってことにしておいて欲しいかな。うん、そういうことにしておこう。
「ねぇ、それじゃあ暇だから俺もついて行っちゃおうかな?」
「え、ふじくんも行くの? じゃあ仲間外れは嫌だから僕も行くー!」
今まで干渉せずにいた藤さんと桃さんも話に入ってきた。
「じゃあ皆で出掛けるか。」
「はーい!」
結局音霧メンバー全員で出掛けることになった。さて、どこに行くのかな?
場所を教えられないまま、午後に寮を出た。出掛けるなら早い時間から動いた方が色々回れていいのではないかとも思ったが、茜さんには何か策があるようだった。だから黙って着いて行く。
「んー、ちょっと早かったか。」
携帯を見ながら渋い顔をする茜さん。あれ、これでも早かったのね。さてさて余計どこに向かうかの見当がつかなくなってきたぞ。
「そんで今日はどこ行くのさー。」
「んー?着いてからのお楽しみ。」
結局どこに向かうか教えられないまま、喫茶ストレリチアにまで来ていた。
「ここ?」
「ん。椿と桃は初めて来た……か?」
「うん。喫茶店ってなかなか自分からは行かないからね。新鮮だよ。」
「……ん。」
そうだったっけ? 私の中では皆で来たと思ってたけど……あ、いや、初めてだね。
「まあ、そろそろいいか。よし、入るぞー。」
「はーい。」
何も気にせずにそこに入っていった私は、それまでOpenと書かれていた看板を茜さんがclosedにひっくり返したのには気がつかなかった。
「おお、よく来たな。」
「よっす。ちゃんと皆連れてきましたよー。」
「ああ。ありがとうな。」
あれ、マスターと茜さんがすごく仲良くなっているみたいだ。
「さて藍さんよ、単刀直入に言う。誕生日おめでとう。」
その言葉と共に ぽん、とマスターに頭を撫でられる。
「あれ、今日私の誕生日……でしたっけ?」
「ちょ、あいさん忘れてたの?」
「ちゃんとここにいる皆は覚えていたよ?」
「はは、まぁそんなこったろうと思ってたがな。」
自分の誕生日なんて祝う気にもなんなかったから、一年の中でただの何でもない一日、という風を装っていたけど。
「今日は藍が主役だ。ご馳走も作ってあるからたんと食えよ? ああほら、皆も座って座って。」
マスターに促されるまま皆席に着く。
「さ、改めて。藍、
『お誕生日おめでとう!』
今日は九月十二日。私が生まれた日。今までは『私がこの世に生まれた忌々しい日』という認識だったが、今年は違うみたい。
だって皆に祝ってもらえた。生まれてきてくれてありがとうとも言われた。
私みたいな化け物は生まれて来なければ良かったと思っていたが、今日は生きてて良かったと思える。それくらい嬉しい。
ああ、嬉しいのに涙が出る。悲しくないのに。
「ありがとう、ございます……!」
その時の私の顔はきっと涙でぐしゃぐしゃになって見るに耐えないものだっただろう。それでも皆は笑ってくれた。
朝ご飯を食べながら今日の予定を考える。今日は洋風らしく、トーストとコーンスープ、そしてサラダ。どれも美味しい。頬を緩めながらサクッとトーストを一口かじった時、茜さんがフッとこちらを向いたのに気がついた。
「藍、今日は俺とデートしようか。」
「ちょ、あかね!?」
「……。」
茜さんの言葉に、竜胆さんが素早く反応する。つーくんは茜さんを睨んでいるようにも見える。藤さんと桃さんは自分に関係ないと言わんばかりにトーストやスープを黙々と食べていた。
さて私はといえば、茜さんから言われた言葉を頭の中で処理しようと試みる。あれ、デート……って何だっけ。ええと、確か好きな人と一緒に出掛けるやつ……だよね。そこまで考えて気恥ずかしさから少し頬が熱くなる。
「私と、ですか?」
「もちろん。」
「それなら私も行きます!」
「……俺もついて行こう。」
「……まあ、仕方ない。皆で行こうか。」
竜胆さんとつーくんが一緒に行きたがっていたのを見て、茜さんは溜息をつきながらも笑ってそう言った。
それなら普通にお出掛けってことで良いのかな。恋愛初心者なのでデート、というワードに私は一々反応してしまう。だから普通にお出掛けってことにしておいて欲しいかな。うん、そういうことにしておこう。
「ねぇ、それじゃあ暇だから俺もついて行っちゃおうかな?」
「え、ふじくんも行くの? じゃあ仲間外れは嫌だから僕も行くー!」
今まで干渉せずにいた藤さんと桃さんも話に入ってきた。
「じゃあ皆で出掛けるか。」
「はーい!」
結局音霧メンバー全員で出掛けることになった。さて、どこに行くのかな?
場所を教えられないまま、午後に寮を出た。出掛けるなら早い時間から動いた方が色々回れていいのではないかとも思ったが、茜さんには何か策があるようだった。だから黙って着いて行く。
「んー、ちょっと早かったか。」
携帯を見ながら渋い顔をする茜さん。あれ、これでも早かったのね。さてさて余計どこに向かうかの見当がつかなくなってきたぞ。
「そんで今日はどこ行くのさー。」
「んー?着いてからのお楽しみ。」
結局どこに向かうか教えられないまま、喫茶ストレリチアにまで来ていた。
「ここ?」
「ん。椿と桃は初めて来た……か?」
「うん。喫茶店ってなかなか自分からは行かないからね。新鮮だよ。」
「……ん。」
そうだったっけ? 私の中では皆で来たと思ってたけど……あ、いや、初めてだね。
「まあ、そろそろいいか。よし、入るぞー。」
「はーい。」
何も気にせずにそこに入っていった私は、それまでOpenと書かれていた看板を茜さんがclosedにひっくり返したのには気がつかなかった。
「おお、よく来たな。」
「よっす。ちゃんと皆連れてきましたよー。」
「ああ。ありがとうな。」
あれ、マスターと茜さんがすごく仲良くなっているみたいだ。
「さて藍さんよ、単刀直入に言う。誕生日おめでとう。」
その言葉と共に ぽん、とマスターに頭を撫でられる。
「あれ、今日私の誕生日……でしたっけ?」
「ちょ、あいさん忘れてたの?」
「ちゃんとここにいる皆は覚えていたよ?」
「はは、まぁそんなこったろうと思ってたがな。」
自分の誕生日なんて祝う気にもなんなかったから、一年の中でただの何でもない一日、という風を装っていたけど。
「今日は藍が主役だ。ご馳走も作ってあるからたんと食えよ? ああほら、皆も座って座って。」
マスターに促されるまま皆席に着く。
「さ、改めて。藍、
『お誕生日おめでとう!』
今日は九月十二日。私が生まれた日。今までは『私がこの世に生まれた忌々しい日』という認識だったが、今年は違うみたい。
だって皆に祝ってもらえた。生まれてきてくれてありがとうとも言われた。
私みたいな化け物は生まれて来なければ良かったと思っていたが、今日は生きてて良かったと思える。それくらい嬉しい。
ああ、嬉しいのに涙が出る。悲しくないのに。
「ありがとう、ございます……!」
その時の私の顔はきっと涙でぐしゃぐしゃになって見るに耐えないものだっただろう。それでも皆は笑ってくれた。
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