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番外編
柊木 茜の休日(後編)
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「はい、ブレンド。」
「あざっす。」
「ありがとうございます。」
りんと俺の目の前に置かれたブレンドコーヒー。ああ、良い香りだ。それをしばし堪能し、こくりと一口飲む。
苦味の中にあるコクが口の中に広がる。それなのに後味はスッキリしている。実に美味い。
しばらくの間コーヒーに舌鼓をうっていると、龍二サンは話しかけてきた。
「……藍は、元気にしているか?」
「弟子にしてくれたら教えます。」
なんて言ってみるが、本当に教えないわけではない。軽いノリだ。
「そんなこと言うなって~。俺達の間柄だろ~?」
このこの~と龍二サンにいつも通りの軽いノリで返される。そのことにフッと笑みがこぼれた。
「藍は元……」
「元気ですよ。」
「そうか。」
コーヒーを飲みながらりんが先に答えてしまう。
「ちょ、りん! 今俺が龍二サンと話してたんじゃねえかよ!」
「別にいいじゃないですか。これくらい。」
付き合わせれている身にもなってくださいよ、とでも言わんばかりの言い方だった。いやぁ、だが一人で来るのは……ねぇ……寂しいしぃ……。
「まあ、美味しいコーヒーが飲めるのでいいですけど。」
「だろ?」
「……??」
「さ、コーヒーも飲んだしそろそろ帰るかー。今日も良い返事は貰えぬ、と。」
「そうみたいですね。」
「じゃあ龍二サン、また来るなー。」
「ご馳走様でした。」
「お、おお……?」
チャリンとお代をテーブルに置き、席を立つ。
「ま、また来いな。」
今はちょうどお客も途切れ、さらに言えばここにいるのが俺達だけだったから、龍二サンは外まで見送りに来てくれた。
「うっす。」
「もちろんです。」
また来たのか、なんて言ってた龍二サンでも、帰る時は『また来いよ』と言ってくれる。だからこそまた行きたくなるというもんだ。嬉しさでクッと口角が上がる。
「ああ、それと……」
「んあ?」
「いつも藍と一緒にいてくれているんだろう? あいつも君達と出会って良く笑うようになった。俺一人では成し得なかったことだ。だからありがとう。そして出来たらこれからもよろしくやってくれるとありがたい。」
「ああ、そんなことか。」
「そんなことって言わんでも……」
りんも黙っているが俺と同じことを考えているようだった。フッと二人で笑う。
「大丈夫っすよ。惚れたやつから離れることはそうそうないっすから。」
「……はぁっ!?」
「じゃ、またー。」
「また来ますね。」
おい、ちょっと待て、なんて叫んでいる龍二サンを背後に、俺達は帰路に着く。
「娘は渡さんからな!」
「ククク……」
「ふふ、ふ……」
龍二サンのあの慌てた声に、どちらともなく笑い転げる。ああ、愉快だ。
「なあ、聞いたかりん。あの慌てよう。」
「ええ。」
「だが次に行く時は龍二サン五月蝿そうだよなぁ。」
「私はパスで。今度こそ一人で行ってくださいね? 私はそんなに暇人ではありませんから。」
「そんなこと言うなよー。あ、に、き?」
「うわ。一度も呼んだことない癖に今それ出すんですか?」
「あ、に、き?」
確かに言われてみれば兄貴だなんて呼んだこと無かったから、なんか言い慣れねぇな。
「うわ、うわ。寒気がする。」
「酷ぇー。」
ケラケラ、ケラケラ、ケラケラ。お互い軽口を叩きながら笑い帰り、寮にいた藍に怪訝な顔をされた。解せぬ。
「あざっす。」
「ありがとうございます。」
りんと俺の目の前に置かれたブレンドコーヒー。ああ、良い香りだ。それをしばし堪能し、こくりと一口飲む。
苦味の中にあるコクが口の中に広がる。それなのに後味はスッキリしている。実に美味い。
しばらくの間コーヒーに舌鼓をうっていると、龍二サンは話しかけてきた。
「……藍は、元気にしているか?」
「弟子にしてくれたら教えます。」
なんて言ってみるが、本当に教えないわけではない。軽いノリだ。
「そんなこと言うなって~。俺達の間柄だろ~?」
このこの~と龍二サンにいつも通りの軽いノリで返される。そのことにフッと笑みがこぼれた。
「藍は元……」
「元気ですよ。」
「そうか。」
コーヒーを飲みながらりんが先に答えてしまう。
「ちょ、りん! 今俺が龍二サンと話してたんじゃねえかよ!」
「別にいいじゃないですか。これくらい。」
付き合わせれている身にもなってくださいよ、とでも言わんばかりの言い方だった。いやぁ、だが一人で来るのは……ねぇ……寂しいしぃ……。
「まあ、美味しいコーヒーが飲めるのでいいですけど。」
「だろ?」
「……??」
「さ、コーヒーも飲んだしそろそろ帰るかー。今日も良い返事は貰えぬ、と。」
「そうみたいですね。」
「じゃあ龍二サン、また来るなー。」
「ご馳走様でした。」
「お、おお……?」
チャリンとお代をテーブルに置き、席を立つ。
「ま、また来いな。」
今はちょうどお客も途切れ、さらに言えばここにいるのが俺達だけだったから、龍二サンは外まで見送りに来てくれた。
「うっす。」
「もちろんです。」
また来たのか、なんて言ってた龍二サンでも、帰る時は『また来いよ』と言ってくれる。だからこそまた行きたくなるというもんだ。嬉しさでクッと口角が上がる。
「ああ、それと……」
「んあ?」
「いつも藍と一緒にいてくれているんだろう? あいつも君達と出会って良く笑うようになった。俺一人では成し得なかったことだ。だからありがとう。そして出来たらこれからもよろしくやってくれるとありがたい。」
「ああ、そんなことか。」
「そんなことって言わんでも……」
りんも黙っているが俺と同じことを考えているようだった。フッと二人で笑う。
「大丈夫っすよ。惚れたやつから離れることはそうそうないっすから。」
「……はぁっ!?」
「じゃ、またー。」
「また来ますね。」
おい、ちょっと待て、なんて叫んでいる龍二サンを背後に、俺達は帰路に着く。
「娘は渡さんからな!」
「ククク……」
「ふふ、ふ……」
龍二サンのあの慌てた声に、どちらともなく笑い転げる。ああ、愉快だ。
「なあ、聞いたかりん。あの慌てよう。」
「ええ。」
「だが次に行く時は龍二サン五月蝿そうだよなぁ。」
「私はパスで。今度こそ一人で行ってくださいね? 私はそんなに暇人ではありませんから。」
「そんなこと言うなよー。あ、に、き?」
「うわ。一度も呼んだことない癖に今それ出すんですか?」
「あ、に、き?」
確かに言われてみれば兄貴だなんて呼んだこと無かったから、なんか言い慣れねぇな。
「うわ、うわ。寒気がする。」
「酷ぇー。」
ケラケラ、ケラケラ、ケラケラ。お互い軽口を叩きながら笑い帰り、寮にいた藍に怪訝な顔をされた。解せぬ。
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