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独白

サン スッキリスルハナシ

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 外食に誘った夜のこと。この日は珍しくお寿司を食べに行きました。最後の晩餐ってやつです。

 今考えるとCの最後の晩餐にしては豪華すぎたような気もしますが、まあ、過ぎ去ったことなのでどうでもいいですが。

「かーっ、美味かった美味かった!」
「あ、少し寄るところがあるので、先に帰っていてください。」
「はあ? ……まあいいか。分かった。」

 Cは……私の兄は珍しく私の言うことを聞いて先に帰ってくれるようでした。

 ああ、この話の中のRは私です。ほら、テラーのスペル、一番最後の文字がRですからね。

 ……え、私は物静かな人間ではないって? またまたぁ。私程物静かな人間はいませんよー。

「次の電車は、××時××分ですからね。」

 現在位置から家までは電車を使います。これも想定済み。というよりそうなるように仕向けました。

「おう。じゃあその時間で帰ってやろう。」

 私のその言葉に、 兄は疑いもせず帰り道を歩いていきました。その後ろ姿をじっと数秒見つめ、さて、と私も歩き出しました。遠回りで私も駅に向かいます。






















 駅に着いた私は、兄の立ち位置を確認しました。やはりいつも通りホームの先頭にいました。これも想定済み。

 この駅は薄暗く、また兄が立っている場所は色々な意味で死角となる。だから





 ポロロンと電車が駅に入ってくる予告音が鳴る。

 ガタンゴトン、電車が減速せずに駅に入ってこようとする。これは各駅停車ではないのだから当たり前。わざと兄にこの時間を教えたのも、死ぬ確率を考えてのものだ。

 タイミングを見計らって、私はCを突き飛ばしました。

 ああ、今まで生きてきて何度この場面を想像して耐えてきたか。思わず笑みがこぼれる。

「おまっ!?」

 線路に落ちていくCはこちらを向き、その顔は恐怖におののいていた。

 その瞬間、とても満ち足りた気分になりました。もうこんな奴の言いなりにならなくてもいいんだ、と。






 ああ、本当に私のハジメテがこんな自己中野郎とか恥ずべき過去ですね。消したい記憶です。
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