断罪(?)転生聖女はやさぐれる

ゆずみそ

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はじめての街

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 結論から言うと、何も出来なかった。

「では次は、この枝の形を変えてみましょう」

「へぐはぁっ」

「じゃあこの石を薄くーーーー」

「ほぶっっ」

「4時の方向にウサギだ。ヤれ」

「ほいきた」

 いや、狩りは出来た。

 離れた大木の陰という安全地帯からロミアが出す指示に従い、色々と試した。食糧となる獣は狩れても、あとは自身と周囲を傷つけるだけだった。

「あれは精神にきたっけな……」

 エッタは治癒術の熟達に貢献した出来事を思い出し、思わず遠い目をした。
 その間も高度を変えずに飛び続けている。

 孤児院を出たばかりのせいか、何故か良い思い出は浮かばなかったが、目の前の木々が拓けてきた。そろそろ街が近付いてきたようだ。

 ストンと地面に降り立ったつもりが、泥に足を取られてバランスを崩す。
 ワタワタと腕を振り回して何とか持ち堪えるが、靴の中も泥に塗れてしまった。

「あああ。やっちゃった……」

 鞄の中から布を取り出す。木に寄りかかりなから右の靴を脱いで手に持ち、甲の部分をリズミカルにノックする。

 コ、コーン、コ、コ、コン

 すると靴の汚れが綺麗になくなった。古いのは変わらないが。
 この靴には符呪が施されているのだ。
 足を拭いて履き直し、左側も同様に行う。

「よし」

 一歩進んで『グチョ』という音と共にまた泥に嵌る。絶望の表情をしたのは一瞬で、気を取り直し、大股に元気良く歩き出した。
 その足元は僅かに浮いていた。

 正しく地に足がついていない状態で暫く進むと街道に出た。石畳でぬかるんでいないのがありがたい。よく見れば周囲も殆ど乾いているようだ。
 どうやら森との間に天気の境目があったらしい。

 心置きなく地面に降り立ち、適当に周囲の草を根ごと摘む。丸めて耳に押し当て、ギュッと力を込め手を離す。
 するとそこには先程までは存在しなかった、小さな草色のピアスがあった。自身では確認出来ないが、瞳は金の揺らぐ緑から焦げ茶に変わっているはずだ。

 鏡を見る事が出来たなら、不思議と人を惹きつける雰囲気を持った少女から、平凡な貧乏人に変化したのが認められたはずだ。貧乏人が平凡かどうかは不明だが。
 
 乾いた靴の泥汚れを手で払い、街道を歩きだす。半刻程歩くと街並みが見えてきた。

 主に狩を担当していたエッタは、街に出た事がない。不安と期待を抱えながら足早に進む。

 建物がいっぱいある!

 近づいてきた景色は、これまで見たことがない物だった。
 門や塀は無く、孤児院よりは小さくとも遥かに丈夫そうな民家。時折見える大きな建物は商店だろうか。そして奥に見える勇壮な建造物は多分城。

「人がいる……!」

 街に入ると、雑多な臭いが鼻をつく。年代も服装も様々な行き交う人々、売り買いする声、用途が謎の商品。興味を引かれるものばかりだ。

 しかしフラフラと見物している暇はない。
 飛んで来たとはいえ、既に日が傾きかけている。

 先ずは今晩の宿を探す必要があった。

 ここでエッタは大事な事を思い出す。

 先立つものがない――。
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