断罪(?)転生聖女はやさぐれる

ゆずみそ

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至福

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「のー、ふぉんっともぬーもん、もーののーむ! ものもいのんのー! もんぬののぶののののい!」※訳(もー、ほんっとマリーさん、料理上手! このパイ最高! こんなの食べた事ない!)

 エッタは意図せず飯をたかる事に成功した。
 何を言っているのかは分からないが褒められているのは分かったマリーは、スープをテーブルに置きながら機嫌よく応える。

「あら、ありがと。まだお代わりあるからね」

 フォーク片手に、モグモグしながら必死に頷く。彼女は食い溜めするつもりだ。

「お前少しは遠慮したらどうだ?」

 ラダと呼ばれた男が、頬杖をついてジト目で見てくる。勿論無視だ。

「いいってことよ。子供は遠慮なんてしなくていい。おっきくなるのが仕事だからな」

 髭を生やして頭はツヤの良いズングリとした二人目のおっさんは、どうやらこの金物屋の店主らしい。料理が出るまでの時間を使った簡単な自己紹介によると、ボルという名で、なんとマリーの亭主だった。ラダの友人で、今日はボル達と、『晴れの日』を祝っていたそうだ。『晴れの日』とは『晴れた日』というだけで、何か特別な事があった訳ではない。今日が雨なら『雨の日』を祝っていた。ただの飲み会だ。
 時折マリーを交えながらも男二人のむさ苦しい宴会を余所に、エッタは人生初となる至福の時間を味わっていた。







「はあ、ゴチソウサマでした! お腹いっぱい!」

 心ゆくまで食事を堪能した彼女の前にはピカピカのお皿が残っていた。

「スゲー綺麗な皿だな。洗わなくてもいいんじゃねえか?」
「舐めたんでなけりゃな」

 エッタだっていつもは舐めたりしない。ただ、本当に美味しく誘惑に勝てなかったのだ。

「これだけおいしそうに食べてもらえて、私も嬉しいよ」

 空いた食器を下げながら、マリーは機嫌よく言った。

「マリーの料理は旨いだろう? オレの自慢の嫁だ」
「ああ、お前には過ぎた嫁だよ」
「一人もんには毒だったか。素直にウラヤマシイって言っていいんだぞ」
「素直な俺は、恨めしさを素直にお前にぶつけよう。ハゲろ」
「コレはハゲじゃねえ!! 剃ってるんだ!」
「テッペン以外はな! わりいわりい。影響の少ねえ呪いにしようっていう、俺の優しさだったんだよ」
「どこに優しさあった!?」

 赤ら顔で言い合うすっかり酒の回った二人は放っておいて、エッタは気になった事を聞いてみる事にした。

「マリーさん、とっても美味しかったです! どうやったらこんな味になるんですか?」
「どうやったらって言ってもねえ……普通の料理だと思うんだけど。エッタは普段どんなのを食べてるんだい?」
「んーと、大体は森でとれる物です。兎とか鹿とか果物とかキノコとかなんかの葉っぱとか」
「なんかの葉っぱはともかく、結構いいものを食べてるようだけど……」
「それを必死で分捕ってきたハチミツとか、果物置いといたら出来てる酢で食べるんです」

 マリーは目尻に涙を堪え、そっとエッタの頭を撫でた。

「今日は泊まっておいき! 明日の朝食は卵料理だからね」

 いつの間にかこちらを見ていたボルはうんうんと優しく頷き、ラダは変な顔で彼女を見ている。エッタは首を傾げた。

「違いは調味料だろうね。十年くらい前から砂糖や塩が手に入りやすくなったからね。それまではこの辺もアンタとそう変わりない味付けだったんじゃないかな?」

「十年くらい前?」
「そうさ。ほら光柱が立ったじゃないか」

 エッタの心臓が嫌な音を立てた。

「聖女様が見つからなかっただろ? それでここに捜索拠点が置かれたんだけど、まあアンタは小さくてよく分からなかったかもしれないね。それで捜索隊が出入りするようになって、こんな辺境でも物が手に入りやすくなったのさ」

「おう、ここにいるラダがその隊長様だ!」

 一瞬、目の前が暗くなった気がした。



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