あなたの犬になりたい

ゆずみそ

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わーんわんわん

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 私、今とってもヤバいです。
 ハッキリ言って汗だくです。

 侍女達が総力を結集した『夜着ドレス』……いえ、言い繕うのはやめましょう。ズバリ夜着を着てケント様の屋敷へやって来ました。「来ちゃった」作戦です。
 
 スケスケなので上に薄手のコートを着ているのですが、長袖は暑いですわ!
 これならモコモコでも良かったかもしれません。

 ロッド伯爵家の使用人情報によると、日中この時間ならケント様以外、ご家族の方は外出しているとか。

 この情報って、本来漏らしてはいけないと思うのですが、懇意にしている公爵家ですものね! 権力バンザイ!

 ちなみに我が家はそれ程お金が有りません。清廉な当主が多く、困っている人がいると助けたくてムズムズしちゃう習性を持っているのです。

 ケント様のお家も、実は台所事情が逼迫されているそうです。投資詐欺に遭われたそうで。彼が働きに出ているのもその為でしょう。

 私達が婚約していないのも、それが原因です。
 ロッド家を助ける程の持参金が用意出来ないのです、いくらムズムズしても! 

 お父様が同じ詐欺に引っ掛かり、おっきなムズムズをしちゃったからですわー!!
 
 ですからお父様が稼いで来るまで、私はなんとしてでも、ケント様を繋ぎ止めてみせますわ!

 シーラに汗を拭いて貰いつつ、門を潜ります。
 ん? 犬の鳴き声?

 大きな茶色い毛の塊が、私に突進してきました。ドンっと飛び掛かられ、そのまま倒れてしまいます。
「シーラ!」
「シーラ様!」

「大丈夫か!!」

 ケント様が駆けつけくれました。後ろから赤毛の美女が小走りで来る姿が見えます。ああぁ――。

 手のひらと足から血が出ています。何時もよりも丈が短かったので、結構広く擦りむいてしまいました。汗をかいていたので、土もついています。地べたに座り込んだ状態の私に、腰を振って中々離れないワンちゃん。

 なんだか無性に泣きたいですわー!!

 ケント様が何とかワンちゃんを引き剥がしてくださいました。

「怪我してるじゃかいか! おい、コレ頼む」

 赤毛さんにワンちゃんを預けるのは良いですが、『おい、コレ』なんて夫婦みたいじゃないですか。

 い~~やあぁぁぁぁあっ!!

 ケント様の首に腕を回すと、そのまま抱っこしてくれました。お姫様というよりは赤ちゃん状態です。
 
 お仕置きに、汗のペタペタと臭いをお見舞いしてやりますわ!!

 私の自暴自棄な行為にもまったく怯まず、そのまま使用人達に指示を出しながら、足早に移動します。

 移動している最中に、抱いている私のコート内の異変に気付いたようで、手がわさわさ動いています。顔は必死なのに本能に忠実なケント様、愛してます! 真剣なお顔も素敵……あ、鼻血ブーが来ました。

「マギー?!」

 流石の私も気が遠くなりますわ……。

 

 

 
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