あなたの犬になりたい

ゆずみそ

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わーんわん(私、ノーマルでしてよ)

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「そんな事、私がしたいですわーっっ!!」

 自分がするのは良いですが、ケント様がしちゃダメです。

「ど、どうしたらいいんですの。私、今だって鍛えている筈なのに、全然筋肉が付きませんのに……」

「あの女は系統が違うので諦めた方がいいと思いますよ」

 侍女が冷たいです。今日のような少し汗ばむ陽気にピッタリですね。

 確かに私にはあの大人の色気は出せそうにありません。

「目指すなら、あの犬じゃないですか」

 ほら! 頼りになる侍女なんですよ。でも少し不安になります。

「私、勝てるかしら」

「お嬢様なら獣臭く無いし、断然有利ですよ」

 鼻をほじりながらでも、私を持ち上げてくれるのですね!

 全身モフモフのワンちゃんに勝てるかどうかは分かりませんが、私は負けません! 努力あるのみです!!

「ところで、どうしたら勝てると思います?」

「んー。髪は既にフワフワですよね」

「逆にあちこちを手応えのある感じにしてみるとか?」

 ギャーやめてください~っ!! という悲鳴にも似た声があちこちから上がったのですが、なんだか部屋の外からも聞こえたような……。
 皆さん私を心配してくださったのかしら。

「却下です」

 シーラは落ち着いているので、きっと良い判断をしてくれているはずです。違う案を考えます。

「じゃあ……」

 頭も首も捻ってみるのですが、なんの案も浮びません。一体どうしたら良いというのでしょう。
 ウエストも捻ったらイケるでしょうか……あ、いい案かも。ついでに痩せれそう「あ。衣裳ですよ!」

 まあ、シーラ。閃いた時に手を打つ人って実在したのですね。カンドーです! でも衣裳?

「犬みたいにフワフワの毛の服を用意しましょう! 絶対似合いますよ!!」

「今暑いわよね??」

「じゃ胸と尻だけ覆いましょう。いいえ! 手袋と靴もモコモコさせましょうよ」

「えっと、聞こえなかったのかしら?? 今、暑いわよね」

 興奮しだした侍女は、私の両腕を掴んで振り回し、ついでとばかりに胸の脇肉を揉みしだいて、漸く開放されました。

 本能に忠実だからこそ、私にとっての最善の答えも嗅ぎ分けてくれると信じていますわ。

 少し頭がフラフラしますが大丈夫。ケント様を前にした時と、非常に類似した状態なので慣れています。

「じゃあ早速服を用意してきますね!!」

「用意しても着ないわよ?」

「耳も付けたらどうですか?」

「着ません」

「尻尾と首輪付きでどうですか」

 あら、背徳的。寒い時期なら良いかもしれませんね。
 製作だけは許可しましょう。
 
 私の返事に周囲がワッと沸きたちました。そんなにモコモコは高い評価を受けるものですの?
 それにしてもお仕事中でも、手を休めて私の動向に気を配ってくれるなんて、愛されている事を実感してしまいます。

「今は着ないので、他に案はありますか?」

 はい、と別の侍女が手を上げました。

「ツルツルはどうですか」

 ハゲろという意味ですか?

「ツルツルした手触りの良い薄手の服で全身を包むのです」

「まあ」

「お嬢様はきめ細やかなお肌をされていますが、上質の薄い絹と柔らかなお肉の組み合わせは、きっと最強です!」

 想像してみます。

 お肉と組み合わせるというのだから、頭部は除外して良いのかしら。つまり柔らかい部分の素肌に薄手の絹を纏う――きっとスケスケね。そして触ってもらうのが前提――
 うん、それは夜着ね!

「それでいきましょう」

 だって結婚した女性の夜の正装でしょう? 男性の心を掴むに違いないわ。
 
 待っていてくださいねケント様。最高の包装を考えますからね! 侍女が!

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