生贄少女とヴァンパイア

秋ノ桜

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知らなかったこと

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sideルシアス


「ようやく終わった。」

死体は全部で18人、死にかけ8人まだ生きてるのが3人、逃げたのが1人。


30人のグループで人身売買を回していたのか。


逃げた奴が1番情報を持ってそうだ。


死んだとされていた男が生きていた、さらには禁断の果実か……。


何か大きなものが俺の知り得ないところで動いている。


しかし……


「はぁ…。」

まさか生き残りがいたとは。


12年前のあの火事で全てが灰になった訳じゃなかったのか。


アイツが、ライアスがリラを側に置く理由は1つしかない。


時が来ればアイツはリラを殺すつもりだ。


だから自分のものだと言い張ったのか。


側に置き、懐柔し、最後は殺すために。


こんなのまるで、家畜だ。


怒りが腹の底から湧いてくる。



!!!!


この嫌な気配は……


************************

sideリラ


ライアス様を抱きしめていたら…


「っ!!」


いきなりライアス様に突き飛ばされた。


「っ……た…。」


ライアス様は軽く押したつもりかもしれないけど、結構飛んだな…。


一体何?


体を起こしライアス様の方を見たらとんでもないことになってる。



「ルシアス様!!」



どこからか現れたルシアス様がライアス様の胸ぐらを掴んでいた。


「お前、アイツが何か知ってるのか?」


ルシアス様の怒った顔はさっき見たけど、こんなものじゃなかった。



今はまるで鬼の形相だ。


「例えばとか?」


禁断の果実…


さっきからよく聞く言葉だ。


あれはさっきの男の妄想じゃないの?


バキッ!!!
「っ!!!」


「え!!?」


ルシアス様がいきなりライアス様の顔を殴る。


私はすぐに駆け寄った。


「ライアス様!!」


ライアス様の頬から血が出てる…


「リラ、離れていて。危ないから。」


ライアス様はルシアス様を睨み付けた。


私が睨まれたわけじゃないのに、体が固まるくらい恐ろしい殺気だ。


「気安く呼ぶな、愛の欠片もなしに最後は殺すくせに。リラはもうお前には絶対渡さない。」


2人ともすごく怒ってる。

そして、その怒った顔がよく似ている気がする。

私こんな時に何を思ってるの?


「僕から奪えるとでも?」


ライアス様の言葉にルシアス様が口角を上げた。


「あぁ、簡単なことだ。リラ、離れてろ。」


明らかにヤバい。


「…ルシアス様。」


この2人の怒りを鎮めるなんて私にはできないかもしれない。

それでも遠くで黙って見ているよりマシな気がする。


「…ルシアス様。」


禁断の果実が何かは知らないけど、私の結末なら知ってる。


「私は愛されていなくても、殺されてもいいんです。だからそんなに怒らないでください。」



私の全てを救い出したのはライアス様。


そんなライアス様の望みがどんなものであれ、私は受け入れると決めたんだから。


「私はこの運命を受け入れています、だからもう怒らないでください。」



私の言葉を聞いて、ルシアス様の鬼の形相は治ったけど…




「だったらその運命とやらに、俺の存在を1つ加えろ。必ずお前の運命を彩ってやる。俺が何色にでも染めてやるよ。」



ルシアス様はそう言うと不敵に笑った。



この笑顔をよく知ってる。



この笑みを見せるときは、いつもルシアス様の思い通りになる時だ。


「笑わせるね、ルシアス。本当に…くだらない。」


ライアス様の声が後ろから聞こえたと思えば、私の体は宙に浮いていた。


ルシアス様が私を放り投げたからだ。



私は地面に落ちると思っていたけど…



「っ!!」
「おっと!」


誰かが私を受け止めてくれた。

それはキジャさんだった。


「お疲れ様。」
「お…お疲れ様、です。」


どうして放り投げられたのか、理由はすぐに分かった。


「こんなもの、滅多に見られるものじゃない。よく見ておくといい。」


キジャさんの言葉通り、これは本当に見たことがない。



私とキジャさんの目の前には虹色の炎と白い炎が入り混じって美しい景色を生み出している。



白い炎を出しているのはライアス様。


あの大きな手から不思議なほど炎を出してる。


だけどもっと不思議なのはルシアス様の炎だ。



虹色の炎なんて初めて見た。



「綺麗……。」


それは私が今まで見たどんなものよりも美しいものだった。


見惚れている私とは違い、ライアス様とルシアス様は大喧嘩してる。



「あの…。止めてくださいって言ったら止めてくれますか?」


ちなみに私は嫌だ。


すでに失敗してるし、あの中に入ったら多分死ぬ。



「それは遠回しに死ねって言ってる?」



やっぱりキジャさんも嫌だよね。



「じゃあ今の言葉はなかった事で。」



きっと収集がつかなさそうだからルシアス様は私を投げたんだと思う。 


「大丈夫、半分は血の繋がった兄弟なんだから。兄弟喧嘩に他人が口を挟むものじゃない。」



そうそう、兄弟喧嘩に首を突っ込んだって……



「え!?兄弟!?」


こんなに心底驚いたのはいつぶりだろう。


「知らなかった?」


知らなかったですよ!?


あぁ…だから顔が似てたんだ……。


「ライアス様は皇后と王の長男で、ルシアス様は公妾と王の長男。2人とも長男ではあるけど、ライアス様の方が1つ年上だから兄がライアス様で弟がルシアス様になる。」



ライアス様とルシアス様が兄弟だってこともびっくりなのに…



「それならあの2人はまさか……この国の王子様ですか…??」



まさか…そんな……



「今更か?」


今まで何も知らなかった自分を殴りたい。



ちょっと待って……


「ど、どうしよう……私、王子様とは知らずに無礼なことばかり……」


ライアス様にもルシアス様にもとんでもないことをしでかしている…


「キジャさん…私をこのまま逃してください。」


真実を知った今、もう逃げるしかない。



「遠回しに死ねって言ってる?」


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