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癒し
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sideリラ
仕事が終わって裏口を開けたら既にルシアス様が待っていた。
「お待たせしました!」
「あぁ。」
ん?
ちょっと、いやかなりご機嫌斜め?
「ルシアス様、何かありました?」
いつもの100倍仏頂面だ。
「何もねぇよ。」
何かあったんだ。
言葉と表情のバランスが悪すぎる。
「それより」
「!!!」
少し離れていたところにいたルシアス様がいきなり目の前に現れて私を抱き上げた。
「帰るぞ。」
いつもの100倍ぶっきらぼうだ。
本当に何があったの?
そんなにお茶会楽しくなかったの??
・
・
・
ルシアス様は家についても仏頂面。
何をするでもなく、私を抱いたままソファーに座っていた。
「ルシアス様。」
きっと疲れたんだろうな。
そもそもお茶会に興味ないって言ってたし。
忘れてしまうほど興味のないところで作り笑いして話を合わせて、ルシアス様にそんなことができるのかも疑問。
頑張ったんだろうな。
そんな時はこれに限る。
私はルシアス様の頭を撫でた。
ナイトを撫でる時と同じように。
「……………」
ルシアス様は文句を言わずに撫でられ続けてる。
いじけている子供みたいで可愛い。
私が少し楽しくなってきた頃にルシアス様が私の手を止めた。
「…………嫌なことがあった。」
いつも弱音なんか吐かないルシアス様が一言私に呟いた。
どんなに強い人でも嫌なことはある。
「じゃあ今日はもうお風呂に入ってさっさと寝て忘れちゃいましょう。」
あなたが眠るまで私が頭を撫でているから。
*****************
sideルシアス
暗い部屋のベッドの中で小さな手が俺の頭を何度も撫でる。
その手は暖かい。
癒される。
「ルシアス様、眠らないんですか?」
この手を、声を、視線でさえも誰にも渡したくない。
「あぁ、まだ眠りたくない。」
今日は疲れた、少しくらい好きなものを眺めていてもいいだろう。
「ちゃんと寝ないと疲れがとれませんよ?」
抱き寄せても嫌がらないだろうか。
「リラ。嫌なら言え。」
俺がリラを抱き寄せると、リラの心臓が跳ねる。
その音は少し経てば落ち着いて、リラはクスクス笑いながら俺の胸に顔をぐりぐり押し付けてきた。
「ゆっくり寝ましょう。明日までまだまだたくさん時間がありますから。」
・
・
・
朝になると、リラは俺の腕の中からいなくなっていた。
リラがいない、その状況が一瞬でも異常だと感じる俺はもっと異常だ。
下の階から音が聞こえる。
何かを切る音と焼く音だ。
いなくなったわけじゃない。
朝飯を作っているんだ。
しっかり眠っていた。
リラを抱き寄せて眠るといつもよく眠れる。
暖かくて小さくていい匂いがするし、ほんとに何より抱き心地がいい。
「………起きるか。」
早く、会いたい。
*******************
sideリラ
「早いな。」
ルシアス様が起きてきた。
昨日はよく眠れたかな?
「おはようございます!」
「おはよう。」
ルシアス様の顔色もいいし、仏頂面ではなくなってる。
これならきっと大丈夫だ。
「もう少しで出来ますから待っててください!」
一緒に朝ごはんを食べたい。
・
・
・
「うまい。」
せっかくゆっくりした朝なんだからもっとゆっくり食べたらいいのに。
テーブルの上のパンと私の作ったスクランブルエッグがみるみるうちに消えて行く。
「そんなに急いでどうしたんですか?…っ!!まさか!またお茶会に遅刻しそうなんですか!?」
昨日散々バタバタして懲りたはずなのに!!
「別に急いでねぇよ。」
本当に本当!?
「急いでるように見えます。」
喉に詰まらせないか心配なほど。
「急いでない、腹が減ってんだよ。」
なるほど……。
朝から食欲旺盛で何よりです。
「まだありますから、食べれるなら食べてください。」
少し多めに作って正解だった。
「本当か!?」
こんな時だけ子供のような反応をするから、ルシアス様は本当に憎めない。
「本当です。あ…!そうだ、ルシアス様!」
私は肝心なことを忘れていた。
「ん?」
ちゃんと言っておかないとルシアス様も驚くだろうから。
「明日、ダリアちゃんと遊んできます!晩ご飯も食べて帰るので私の分はいりません!」
明日はダリアちゃんとお休みが被った貴重な日。
朝からいろいろ語り尽くす大切な日なんです。
私がそう言うとルシアス様が固まった。
え?何?まさか、パンを喉に詰まらせた?
「み、水を早く飲んでください!!」
「水?喉渇いてねぇよ。遊ぶのはダリアだけか?」
あ、あれ??
パンが詰まったわけじゃないみたい。
「はい!ダリアちゃんだけです!」
ダメなのかな?
「明日か……わかった。送り迎えは俺がする。」
送り迎え…??
「いいですよ、そんな!朝早いし、ルシアス様はお仕事じゃないですか!」
そんなこと頼めない。
「今更だろ、明日何時にどこだ?」
…いいのかな、お言葉に甘えても。
「明日、朝の7時にカトレアです。」
「7時!?お前ら騎士団かよ。」
そうなりますよね。
「いろいろ語り尽くそうと思って。」
そんなに早起きしても足りなさそうな感じですけど…
「わかった、送ってやる。」
普通の男の人なら文句言うはずなのにルシアス様は言わない。
心が広い証拠だ。
「よろしくお願いします。」
仕事が終わって裏口を開けたら既にルシアス様が待っていた。
「お待たせしました!」
「あぁ。」
ん?
ちょっと、いやかなりご機嫌斜め?
「ルシアス様、何かありました?」
いつもの100倍仏頂面だ。
「何もねぇよ。」
何かあったんだ。
言葉と表情のバランスが悪すぎる。
「それより」
「!!!」
少し離れていたところにいたルシアス様がいきなり目の前に現れて私を抱き上げた。
「帰るぞ。」
いつもの100倍ぶっきらぼうだ。
本当に何があったの?
そんなにお茶会楽しくなかったの??
・
・
・
ルシアス様は家についても仏頂面。
何をするでもなく、私を抱いたままソファーに座っていた。
「ルシアス様。」
きっと疲れたんだろうな。
そもそもお茶会に興味ないって言ってたし。
忘れてしまうほど興味のないところで作り笑いして話を合わせて、ルシアス様にそんなことができるのかも疑問。
頑張ったんだろうな。
そんな時はこれに限る。
私はルシアス様の頭を撫でた。
ナイトを撫でる時と同じように。
「……………」
ルシアス様は文句を言わずに撫でられ続けてる。
いじけている子供みたいで可愛い。
私が少し楽しくなってきた頃にルシアス様が私の手を止めた。
「…………嫌なことがあった。」
いつも弱音なんか吐かないルシアス様が一言私に呟いた。
どんなに強い人でも嫌なことはある。
「じゃあ今日はもうお風呂に入ってさっさと寝て忘れちゃいましょう。」
あなたが眠るまで私が頭を撫でているから。
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sideルシアス
暗い部屋のベッドの中で小さな手が俺の頭を何度も撫でる。
その手は暖かい。
癒される。
「ルシアス様、眠らないんですか?」
この手を、声を、視線でさえも誰にも渡したくない。
「あぁ、まだ眠りたくない。」
今日は疲れた、少しくらい好きなものを眺めていてもいいだろう。
「ちゃんと寝ないと疲れがとれませんよ?」
抱き寄せても嫌がらないだろうか。
「リラ。嫌なら言え。」
俺がリラを抱き寄せると、リラの心臓が跳ねる。
その音は少し経てば落ち着いて、リラはクスクス笑いながら俺の胸に顔をぐりぐり押し付けてきた。
「ゆっくり寝ましょう。明日までまだまだたくさん時間がありますから。」
・
・
・
朝になると、リラは俺の腕の中からいなくなっていた。
リラがいない、その状況が一瞬でも異常だと感じる俺はもっと異常だ。
下の階から音が聞こえる。
何かを切る音と焼く音だ。
いなくなったわけじゃない。
朝飯を作っているんだ。
しっかり眠っていた。
リラを抱き寄せて眠るといつもよく眠れる。
暖かくて小さくていい匂いがするし、ほんとに何より抱き心地がいい。
「………起きるか。」
早く、会いたい。
*******************
sideリラ
「早いな。」
ルシアス様が起きてきた。
昨日はよく眠れたかな?
「おはようございます!」
「おはよう。」
ルシアス様の顔色もいいし、仏頂面ではなくなってる。
これならきっと大丈夫だ。
「もう少しで出来ますから待っててください!」
一緒に朝ごはんを食べたい。
・
・
・
「うまい。」
せっかくゆっくりした朝なんだからもっとゆっくり食べたらいいのに。
テーブルの上のパンと私の作ったスクランブルエッグがみるみるうちに消えて行く。
「そんなに急いでどうしたんですか?…っ!!まさか!またお茶会に遅刻しそうなんですか!?」
昨日散々バタバタして懲りたはずなのに!!
「別に急いでねぇよ。」
本当に本当!?
「急いでるように見えます。」
喉に詰まらせないか心配なほど。
「急いでない、腹が減ってんだよ。」
なるほど……。
朝から食欲旺盛で何よりです。
「まだありますから、食べれるなら食べてください。」
少し多めに作って正解だった。
「本当か!?」
こんな時だけ子供のような反応をするから、ルシアス様は本当に憎めない。
「本当です。あ…!そうだ、ルシアス様!」
私は肝心なことを忘れていた。
「ん?」
ちゃんと言っておかないとルシアス様も驚くだろうから。
「明日、ダリアちゃんと遊んできます!晩ご飯も食べて帰るので私の分はいりません!」
明日はダリアちゃんとお休みが被った貴重な日。
朝からいろいろ語り尽くす大切な日なんです。
私がそう言うとルシアス様が固まった。
え?何?まさか、パンを喉に詰まらせた?
「み、水を早く飲んでください!!」
「水?喉渇いてねぇよ。遊ぶのはダリアだけか?」
あ、あれ??
パンが詰まったわけじゃないみたい。
「はい!ダリアちゃんだけです!」
ダメなのかな?
「明日か……わかった。送り迎えは俺がする。」
送り迎え…??
「いいですよ、そんな!朝早いし、ルシアス様はお仕事じゃないですか!」
そんなこと頼めない。
「今更だろ、明日何時にどこだ?」
…いいのかな、お言葉に甘えても。
「明日、朝の7時にカトレアです。」
「7時!?お前ら騎士団かよ。」
そうなりますよね。
「いろいろ語り尽くそうと思って。」
そんなに早起きしても足りなさそうな感じですけど…
「わかった、送ってやる。」
普通の男の人なら文句言うはずなのにルシアス様は言わない。
心が広い証拠だ。
「よろしくお願いします。」
応援ありがとうございます!
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