生贄少女とヴァンパイア

秋ノ桜

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恐怖の森

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sideルルド

手出しは無用、との事だったがいくらルシアス様でもそれは厳しいんじゃないのか?


王専属の部隊だぞ?

暗殺、侵略、護衛、なんでも完璧な連中。


その辺の騎士とはレベルが違う。


俺の心配をよそにルシアス様がシャドウの方に進んだ。


ルシアス様は少し楽しそうだ。


物怖じ一つしてない。


ルシアス様がニッと笑ったら、シャドウのメンバーはダリアとラルフを地面に落とした。


その衝撃で目覚める2人。


ダリアは頭を抑えていて、ラルフは状況を瞬時に察知してダリアを抱きこちら側へきた。


「あの…一体何が?」


ダリアはおずおずと俺に聞いた。


バキッ!!ゴキッ!ボリッ!!


「とんでもないことが起きた。」

今はそれしか言うことがない。


本当にとんでもない。


俺が心配していた事なんて1つも起きないからだ。


シャドウのメンバーになれるのは本当に一握りの逸材だ、それをルシアス様はいとも簡単に倒してしまう。


一体ルシアス様はどれほどの実力をあの身に隠しているんだろうか。


*******************

sideルシアス様

「まぁ、こんなもんか。」


1人残らず片付けて近くにあった木に吊るす。


「俺のお願いはもちろん聞いてくれるよな?」


これ以上はお互いデメリットしかない。


俺は疲れるし相手は大怪我をする。


そんな事は互いに望んでないだろう。


「そのご命令は聞きかねます。」

痛いことをされたいらしい。


「さすが王専属だな、その辺の奴より骨がある。でもとんでもないアホだ。じゃ、がんばれよ。」


*******************

sideダリア


は本当にルシアス様だろうか。


「ひっ!ぐはっ…!!ギャァァァァアア!!!」

私の中の優しいルシアス様の印象が崩れ去っていく。


もともと恐ろしい方だとは知っていた。

けど、ここまでとは。

「おいおい、まだ1㎝しか剥いでないだろ?そんなに喚くな。」

ルシアス様はさらに慣れた手つきで吊るした男の生皮を剥いで行った。


「ギャァァァァアア!!!」

見るに耐えない…


「ダリア、もう見るな。」

ラルフはそう言って私に背を向けさせた。


それでも皮を剥がす音や悲鳴が聞こえる。


「ごめんね、昔から乱暴なんだよ。」

ライアス様が私に声をかけた。


昔からってなんだろう。

まさか子供の頃から皮剥を?


「それはさておきリラとルディはどこに行ったか分かる?」


私はライアス様の問いにラルフと目を見合わせた。

私は全く知らない。


「気絶してたから知らねぇよ。けどアイツのことだ今頃逃げ切ってる。足は本当に速いからな。」


ルディは確かに足が速い。

でも私の記憶が正しかったらルディもあの時一緒に吹っ飛んでなかったっけ…??


「それならいいんだけど……」


ライアス様は不安そうだった。

そりゃそうだよね。

ライアス様は少し前までリラちゃんと一緒に暮らしていたくらいだし。

私だって心配だ。


「おい、分かったぞ。」

ルシアス様の声がしたから振り返ったら…

「っ!」


手をハンカチで拭きながらこっちへくるルシアス様。


その後ろは、木に吊るされた男が両足ともに生皮を剥がれていた。


見るんじゃなかった!!

そう思い元の向きに戻って深呼吸する。


大丈夫、あの人はきっとヴァンパイアだからすぐ治る。

多分ね……


「彼はなんて?」


ライアス様はまるで何もなかったかのように接する。


慣れているから私みたいにならないんだ。


ライアス様も本当に恐ろしい。


「ルディとリラは数キロ先の森に逃げたらしい。」

「は!?」


ラルフが珍しく大声を上げた。


「何だ、急に吠えるな。」

本当、ルシアス様の言う通り。

横で大声を出すから私の耳はキーンとしてる。


「いや、そんなのありえない。アイツは確かに馬鹿だか、本当に馬鹿だがあそこに逃げるわけがない。」


何をそんなに焦っているんだろう。

まさかめっちゃ危険な森とか?


「お前忘れたのか?8歳の時の…」


「8歳」「森」「危険」

はっ!!!!!!!



私の中でこのワードが閃きを与える。


閃いたあとは徐々に血の気が引いて行った。


「なんだ?あの森は何かまずいのか?」


ルシアス様は不思議そうにしていた。



「マズいです、それもかなり…。」


私は嫌な思い出に吐き気がした。


「アイツも相当キツい目に遭ってる。まさかあそこに逃げる事はないだろ。いくら馬鹿でも。」


「でもルディだよ?もしリラちゃんを背負って必死に逃げていて気づかなかったら…?」


十分あり得る話だよね?



「2人とも、僕らにも分かるように説明してくれる?」


私とラルフは顔を見合わせた。



「あそこは俺ら人狼ですら踏み込むことのない地だ。踏み込んだら最後、逆さ吊りにされて三日三晩血を抜かれる。」


私も思い出したくない記憶だ。


あの時は本当に怖かった。

本来感じることの少ない「死」を感じた所でもある。


「それ本当か?」

ルシアス様はその事を聞くとかなり焦り始めた。


「本当です。私やラルフたちは治癒能力があるから何度も再生したけど、もしリラちゃんが同じような事をされたらきっと2時間持ちません。」


体験した自分がよく分かってる。

あんなの、人間のリラちゃんには耐えられない。


「2時間以内に俺が見つける。」


ルシアス様はそれだけ言い残して、物怖じせず例の森へ走って行った。
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