生贄少女とヴァンパイア

秋ノ桜

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数ヶ月前

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sideダリア


不気味な森でリラちゃんの血が抜かれる事件があってから早1ヵ月。

私たちは暇な日々を過ごしていた。

あれからルシアス様達から連絡は無い。


リラちゃんはどうなったんだろう。


逃げる時にルシアス様が大金を渡してくれたから生活に支障はないけど……


「暇なら手伝え。」

「そうだ!サボりは厳禁だ!」


いつまでこのまま3人生活?


2人は今、皿洗いをしてる。


いい加減、リラちゃんに会いたいよ。



「はいはーい。」


ライアス様とルシアス様、ちゃんとリラちゃんを守ってくれてるよね?



私は不安に塗れる毎日を過ごしていた。


だからってダラダラしてたら怒られるからちゃんと手伝いはしないとね。


椅子から立ち上がってラルフとルディの元へ行こうとしたら…


「っ!!」
「!!」
「!!」


嫌な気配を感じた。


私達は瞬時に部屋の真ん中に飛び退いて背中合わせで構える。


「知らない匂いがする。」

「ルディ…皿を持ってくるな、床が濡れるだろ。」

「あんた達静かに!」


家の外に敵がいる。



私もこの気配を知らない。


まさか追手?


嫌な沈黙が流れた。


私たちが警戒していると…


「戸締りくらいしっかりしたらどうだ?」

「うわぁっ!!!」
ガシャン!!!

「「!!!?」」



ルディは驚いて皿を吹っ飛ばし、私とラルフは部屋の隅に飛び退いた。

ルディも少し遅れて部屋の隅に飛び退く。


私たちが警戒していた敵は、私たちが背中合わせをした背後から現れた。



「ヴァンパイアと人狼とはいえまだ子供、俺がいなければお前らとっくに死んでいたぞ?」


私たちは男の言葉がわからずに目を見合わせる。


「その様子じゃずっと俺が近くにいたことは気付いていないらしいな。なんともおめでたい。」


ずっと近くにいた?


何それ…。


「出て行って、場合によっては殺すわよ。」



私はヴァンパイア。


人間を殺すなんて訳ない、3秒あれば殺せる。


「俺を殺す?それは面白い。是非やって見せてくれ。」


えらく顔のいい男だけど煽られたら腹が立つ。


流石に殺すのはまずいから気絶させよう。


「煽ったのはそっちだからね。」


私が飛びかかろうと走ったら…


「きゃああぁっ!!!」


頭の中が溶けるような感覚に陥る。


頭を両手で押さえて床にのたうち回っていた。


「ダリア!!」


ラルフはすぐに近くに来てくれる。


「っ!!痛い!!!頭痛いっ!!!」


バタバタと暴れる私をラルフは抑えてくれた。


「ダリアに何すんだよ!!この野郎!!」


ルディは珍しく怒っていて狼に姿を変えた。


「オッドアイの人狼か。これはまた珍しい。」


それでも男は怯まない。


何一つ怖がっていなかった。


「お手並み拝見だ、来い。」


ルディは鼻の上に皺を寄せ牙を剥き出しにして唸る。


本気で怒ってる時の顔だ。


稲妻のように響く唸り声と共にルディが走り出した。


ルディは何度も男に飛びかかるけど、一度も攻撃が当たらない。


「戯れあっている場合か?俺はそこのお友達にまだまだ苦痛を与えられるぞ?」


これ以上苦しむのは嫌だ。


私は恐怖でいっぱいになる。


「黙れ!!」


男の言葉にラルフが怒った。


ラルフも狼に姿を変えて男に飛びかかる。


私はあいも変わらずのたうち回っていた。


「いいや、黙らない。男なら守ってみせろ。」


2人の狼は私を守るために必死に戦ってくれている。


あんな簡単な挑発に乗ってこんなことになるなんて。


私はどこまでも馬鹿で弱い。


こんな事じゃ…いつまで経っても足手まといだ。


私が後悔に押しつぶされそうになった時、ルディとラルフが家の壁に叩きつけられた。


「やめて!!!2人を殺さないで!!」


私は痛みを抑えて必死に叫ぶ。


そんな必死な訴えも虚しく、男は呪文のような物を唱え始めた。


「やめて!!!」


涙が出るほどの必死の願いは聞き入れられる事はない。


2人の体に赤い光の蛇が巻きついた。


「殺さないで!!やめて!!」


私はもう無我夢中で叫んだ。



そんな私にも…


「うっ!」


いつの間にやら赤い蛇が巻きつく。


「っううっ!!」
   
「くそっ…!!」

「っ!!!」


2人は変身を無理矢理解除されていた。

絶対絶命、どうにかしようと考えを巡らせていると………








「はい、テスト終了。男は速やかに服を着ろ。」


いきなり空気が変わった。



私たちの体に巻きついていた蛇はスルスルと何事もなかったかのように離れていく。


「は??」


ルディはいつも以上にポカンとしていた。


「大丈夫だ、自己紹介から始めよう。それよりレディの前だ。早く服を着ろ。」
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