生贄少女とヴァンパイア

秋ノ桜

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殴り込み

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sideリラ

情報集めの本格的な行動をすると決めた1日目。


チーム☆ゴーストは誰1人欠けることなく元気。


それはいいとして、私たちは柄の悪い人たちがよく集まると噂の店の前に立っていた。


「よし、今からここが俺らの拠点だ。」


クロウ先生は頭を打ったのかな?


疲れてるのかな?


私たちは顔を見合わせた。


「クロウさん……あのー、差し支えなければ聞くけどさ、ここ人の家ってか店のような……。」


すごく控えめにルディがクロウ先生に聞いた。


「あぁ、人の家で人の店だけど俺らの拠点だ。何か問題でも?」


私たちはさらに顔を見合わせた。


「えっと……その、住んでる人はどうするのかなーって…。」


ルディはドン引きしながらクロウ先生に聞いた。


「出て行って貰えばいいだろう。金を積めば出て行くさ。」


その辺の悪党顔負けなセリフなんだけど…。


「もし出ていかなかったらどうするんです?」


ラルフはなんの躊躇いもなく聞いた。


「出て行ってもらうまでだ。金以外の方法でな。」


お金以外の方法ってまさか……


「力づく…とか?」


私が聞いたらみんな私を見た。


「そんな野蛮なことはしない。まぁ、見ているといい。俺が大人の駆け引きがなんたるかを見せてやる。ルディ、ラルフ一緒に来い。」


「え?あ、はい。」
「は、はい!」


ルディとラルフは戸惑いながらクロウ先生について行った。


「力づくに一票。」

ダリアちゃんはこっそり私に耳打ちした。

「私も一票。」


あのメンバーで行って話し合いで済むはずがない。

そもそも…


ドン!!!

クロウ先生がドアを蹴破った時点で話し合いなんてする気がない。


「下っ端に用はない!!!店主出せ!!!」


ルディとラルフがクロウ先生の大声に驚いている。


ここからがすごかった。



「何だ!お前ら!!」

「誰の店に乗り込んでやがる!!」

「喧しい!!殺されたくなければさっさと外へ出ろ!!」←クロウ


「え!?ちょっ!クロウさん!待って!ヤバいって!それはヤバいって!」←ルディ

「ルディ!やめろ!巻き込まれるぞ!」←ラルフ



私とダリアちゃんはありえない喧騒に顔を見合わせた。



「話し合いって何だっけ?」


私はたまらずダリアちゃんに聞いた。


「私も話し合いの概念がわからなくなってきたよ。」


ダリアちゃんの言う通り。


今はめちゃくちゃだからね。


「これだから男は…。」


ダリアちゃんがため息をついた。


「まだ私たちが話し合いに行った方が穏便に済んだかもね?」


殴り合いにはならないはず。


多分…。


「ね!私もそう思う!」


あ、よかった。


ダリアちゃんも同意見だ。


「クロウ先生はたまにぶっ飛んでるからびっくりするよ。」


昔からそうなんだよね。

たまにとっぴ押しもないことを言い出したりする。


「たまに?いつもじゃない?」


ダリアちゃんはそう言いながら笑った。


「ふふっ、確かに。」


凄まじい喧騒を眺めているけど、ダリアちゃんと一緒なら楽しいな。


「でもさ、こんなとこ乗っ取ってどうするんだろう?」


ダリアちゃんが抱く疑問はきっとみんなの疑問。


「5人でお店開くとか?」


それはそれで楽しそう。


「ダリアちゃんは何屋さんがやりたい?」


お店を開くと決まった訳じゃないのに私はダリアちゃんに聞いてみた。


「うーん、楽なのがいいなぁ。」


それはそうだけど…

「それじゃあお店潰れちゃうよ?」


ちゃんと稼がないと!


「そうだよねー。うーん、お花屋さんとか?」


ダリアちゃんがお花屋さんなんて絶対可愛い!!

「でも、ラルフとルディには合わないね。」


2人が花束とか作ってたら笑うかも。


「あはは!確かに!お花屋さんはダメだね!」


そうだよ、2人には可愛すぎる。

「逆にリラちゃんは何がしたい?」

そうだな……


ちゃんと稼げてみんなのイメージにピッタリのやつか…。


「うーん。……やっぱりバーとか?クロウ先生はバーテンダー似合いそうだし!」


ピシッといい服着たらきっと格好いい。


「あぁ!確かに!じゃあラルフをキッチンにして、ルディを用心棒にしよ!」


ラルフは料理上手みたいだしそれがいい。


「いいね!それで、私たちは何するの?」


私たちの名前が出なかったけど…。


「もちろんウエイター!それくらいしかやる事ないしね!」


ウエイターなら大丈夫!

カトレアでみっちり働いてたんだから!


「ダリアちゃんとまた働けるなんて幸せ!」

また一緒に働けるとは思ってなかったから本当に嬉しいよ。

「あはは!もうリラちゃんったら~!仮定の話でこんなに盛り上がれるなんて私たちやっぱり最強だね!」


リアルに考えてたけど仮定だった。


「もちろん!親友パワーだよ!」

私が親友のワードを出すとダリアちゃんの目が輝いた。


「もう!!好きー!!!」
「え!?わ!!」


ダリアちゃんは細い腕で私を持ち上げてクルクル回る。


「あはは!!落ちる~!!」


ダリアちゃんはやっぱりすごい。


ここ最近笑っていなかったから不思議な気分。


私の親友はやっぱり私を笑わせる天才だ。
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