生贄少女とヴァンパイア

秋ノ桜

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別行動

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sideリラ


あんな事があってもお店はすぐに開けることにした。


ルディは落ち込んでいるんじゃないかと思ったけど全然その逆で、むしろ楽しめたとか何とか言ってた。


それが本心ならいいけど…。


「えっと……」 


考え事は後にしないと。


私は今お使い中。


最近足りなくなる調味料や材料が多いから今日ちゃんと確認しておかないとね。


「これは買ったから後は……」


ドン!!
「っ!!!」


誰かにぶつかった。


私はよろけて後ろに転びそうになる。


そんなよろけた私の手をグッと引き寄せた。


「大丈夫?」


その優しい声に心臓をくすぐられた。


「………はい。」


ライアスだ……。


今のライアスに私の記憶はない。


怒らせていなければいいけど……。


「ごめんね、僕が前を見ていなかったから。…怪我はない?人間のお嬢さん。」
  

ライアスは私の頬に優しく触れて顔を近づけた。


さすがは王子様だ。

  
全てが様になる。


「…は….はい!…ぶつかってしまってごめんなさい…!」


て言うか……


ライアスって常日頃から女にこんなことをしてるの!?


これを無意識できっとやってるから罪作りな男だ。


「可愛いね。」


…………???


「はい?」


私はまさかの言葉に何もわからなくなった。



「心臓が踊って、顔も真っ赤になって…可愛いなぁ、って思ったんだ。いきなりおかしなことを言ってごめんね?」

  
これはもう、女をたらし込む天才に違いない。



「嬉しい…ですよ。ありがとうございます…。」


それよりここを離れないと。


目立つとまずい。


周りの人がライアスに気付き始めた。


「あ…あの…、その、失礼します。」


私がライアスの隣をすり抜けようとしたら…


「/////」


ライアスが私の前に手を出して止めた。


それどころか…


「っ!!!」


私を簡単に抱き上げて…


「ここなら、誰にも邪魔されずにお話しできるね?」


近くの路地に引き込んだ。


ただ引き込まれたならよかったけど、私は今ライアスと壁に挟まれていて逃げれない状態にあった。


「一目惚れした。」


とんでもない一言だった。


私はもうなんて言っていいかわからない。


「僕と結婚してよ。」


しかもお付き合いを飛ばして結婚!?


ルシアス様もそうだったけど、王族ってみんなそうなの!?


「私、もう結婚していて…。」


王族はやっぱり怖い。


庶民と感覚が違う。


「じゃあ、別れて僕のものになって?」


女を口説く才能もあるし、間男の才能まで完璧だ……。


ライアス……あなたが恐ろしいよ。


「ご、ごめんなさい…えっと、あなたが悪いとかじゃないんです…!私は結婚してるし、だからごめんなさい!だからって自信を無くさないでください!あなたは格好いいし優しいし、紳士だし、間男の才能もあるし…とにかく魅力がたくさんあるんです!!……ほ、他の人を見つけてください!!!」


焦った時ほど口がよく回る。


息継ぎする暇がなくて私は息が上がっていた。


「ふふっ……はははっ…」 


あ、あれ??


「君は…ふふっ…本当に面白いね。間男の才能ね…。」


ライアス、笑ってる……。


って!珍しい笑顔に見惚れている場合じゃない!!


「し、失礼しま………」


夢だろうか。


「////////」


久しぶりの感触だ。


少し前までこの唇の虜だった。


「…僕は間男だから、油断しちゃいけないよ。」


心臓が破裂する。


「ほら、買い物をしていたんでしょう?逃がしてあげるから行っておいで。」


ライアスがパッと腕を退けて私を解放する。



「はい…買い物……してきます。」


私は何が起こったのかわからず、フラフラと路地から出て人混みに紛れた。


*******************

sideライアス

「間男…ね。」
「おい。」


バキッ!!!

「っ…痛いよ。」


いきなり現れて殴るなんて。


「あ?」

ルシアスが僕の胸ぐらを掴んでまた拳を振り上げた。



「そんなに怒ること?」


僕が笑うと…


バキッ!!


もう1発殴られた。



「あぁ、俺の妻だからな。」


その言葉に僕も殴り返したくなるよ。


「へぇ。だから?」


ルシアスの額に筋が入った。


「だからって何だ?俺の妻に手を出すな。」


リラを外へ出すからそうなるんだよ。


閉じ込めてしまえばいいのに。


「それよりお前、いつ記憶が戻ったんだ?」


ルシアスは僕を怪訝そうに見た。


「本当つい最近。結構頑張ったんだよ?」


僕が自身の頸を触って笑って見せたらルシアスはもっと怪訝そうな顔をした。


「お前狂ってんのか?」


狂ってる…か。


そうだね。


ある意味狂ってるよ。


「さぁ、どうだろう?」


可愛いあの子にね。


「それより、ルシアスこそいつ記憶が戻ったの?」


僕より後かな?


「昨日の夜、ベッドの上で。」


へぇ?


そのベッドの上とやらには他に誰がいたんだろう。


腹が立つね、全く。


「そんなに悔しがるなよ、妻を可愛がっていただけだ。」



ここで殴りかかってやりたいけど、そんな大人気ないことはできないからね。


「それはよかったね。それで、これからどうする?」


僕が話題を変えたらルシアスは真面目な顔をした。


「そうだな…あの魔法使いはリラ達を悪いようにはしないはずだ。とりあえず俺らは記憶のない間抜けのフリをしておいて、動きを合わせよう。」


それなら……


「リラとは別行動ってことだね。」


前みたいに、頻繁に一緒にいられないのは寂しいね。


「あぁ、そうだ。例の組織のことも調べつつ、俺らは当たり障りのない動きをするぞ。」


癪に触るけど、この意見は賛成だね。


「わかった、何か分かれば報告するよ。」


「あぁ、俺もそうする。」
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