生贄少女とヴァンパイア

秋ノ桜

文字の大きさ
上 下
170 / 471

動き

しおりを挟む
sideリラ

私たちがあの薬の事について話し合ってからすでに10日が経った。


泳がせていた例の男も変わった動きはしない。



ルディの決死の作戦が失敗に終わったと思いきや……


「え?」


私は自分の目を疑った。


固まっている私を見て、ルディが近づいてきた。


「どうした??」


私は焦って地図の赤い印を指す。


ルディもそれを見て驚いていた。


「え!動いてる!」


そう!その通り!!


「は、早く!クロウ先生に!!」
 

こんな肝心な時にクロウ先生がいない!


薬草買いに行くって言ってたっけ!


「薬草の店なら心当たりがあるから私行ってくる!ルディはダリアちゃんとラルフにこの事伝えて!」



私がそう言うと、ダリアちゃんが一瞬で私のところに現れた。


「話聞こえたよ!」


さすがはヴァンパイア!


「俺も聞こえてた。」


ラルフも私たちのところへ来た。


2人とも話が早くてほんとに助かるよ。


「リラちゃん、クロウ先生は私が呼んでくるよ。私なら一瞬で行けるから!」


合理的に考えたらそれが正解だよね。


「わかった!お願いします!」


ダリアちゃんはにっこりと笑って一瞬でお店の外へ出た。


「早く追いかけてこの街にいるうちに尾行しないと…。」


この地図は隣町までは書いてない。


隣町に一歩でも出られたら終わりだ。


地図で追えなくなってしまう。


「あぁ、そうだな。客が6人か……今料理出したばかりだからなかなか帰らないだろうしな…。」


お客さんを追い出すわけにも行かないしね…。


「うーん…どうしようかな………。あ!いいこと思いついた!」


ルディが何か閃いたらしく目を輝かせる。


私とラルフは嫌な予感がして目を見合わせた。


********************

sideダリア

クロウさんを薬草のお店から連れ帰ったはいいものの………。


「なんだ?これは。」


クロウさんですらこの状況を把握できていない。


もちろん私も。


「私の事は遊びだったのね!変態!!」←ルディの裏声

「へ、変態!!」←リラちゃん。


パッと見た感じだと、女装したルディと女神の様に可愛いリラちゃんがラルフを責め立てている感じ。


「チ、チガウンダーハナセバワカルヨー。」


ルディは死んだ魚の様な目をして私たちを見てきた。


なるほど、助けて欲しい訳だ。



「クロウさん…助けてほしいみたいですよ。」


「だろうな、一体どんな頭をしていたらこんな事になるんだ。逆に尊敬する。」


逆の尊敬とは一体……………



「はぁ…試作品だが試してみるか。ダリア、俺がこれを投げたら急いでリラを担いで外に出ろ。リラを担ぐ時ついでに狼2人にも外に出るように伝えてくれ。」


クロウさんはポケットから白い玉を出した。


何だろう。

「やるぞ、準備はいいな?」
「はい。」


外に出ろってまさか爆発でもするのかな?


さすがにそれはないよね。


クロウさんが少し強めにその玉を床に投げる。 

ボフッ!!!

みたいな変な音がして部屋中に煙が充満していく。


私はクロウさんに言われた通り、リラちゃんを担ぎ上げた。


「きゃあ!」
「2人とも外に!」


私が伝えたら2人とも急いで店を出た。


「何事!?」


ルディは外に出た瞬間うるさい。

「なんかクロウさんがやった。」


今はこの説明しかできない。


「なるほど、あの人は何でもありだからな。」  


そうそう、ラルフの言う通り。


「とりあえず降ろしてやったら?」


ラルフが担がれてポカンとしているリラちゃんを指す。


「リラちゃん降りたい?降りたくないよね?」
「え??え??」
「降ろせよ!ダリア!てか変われよ!!」
「はぁ!?冗談はその格好だけにしてよね!」
「お前ら近所迷惑だ。」


私達が騒いでいると…


「うるさいぞ。」


どこからかクロウさんが現れた。



「今の煙は睡眠薬だ。あれば便利かと思って作ってみたんだが思いのほか使えた。」


なるほどね、それでクロウさんはすぐ外に出ろって言ったんだね。


「じゃあお客さんはみんな寝ちゃってるんですか?」


リラちゃんを降ろしてあげたらニコッと微笑まれた。


天使?女神??


クラっときたわ。


「あぁ、寝ている。聞きたい事は山ほどあるが……。」


クロウさんは主にルディを見た。


「まぁ、それは後回しだ。」


私は今すぐ知りたいけどね。


後でこっそりラルフに聞こう。


「今はが最優先。少し離れたところから尾行して動向を探る。こんな大人数で動いたら目立つから二手に分かれる。」


クロウさんが言ったコレは地図のこと。


何よりも先に男を追うらしい。


「二手に分かれる組み合わせだが……」


絶対リラちゃんがいい!!


リラちゃんと組みたい!!!


「もう決めてあるから言われた通りに動いてくれ。」


クロウさん!クロウ様!!お願いします!!お願いします!!


リラちゃんをください!!!!
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

前世の因縁は断ち切ります~二度目の人生は幸せに~

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:97,030pt お気に入り:2,179

自由に語ろう!「みりおた」集まれ!

エッセイ・ノンフィクション / 連載中 24h.ポイント:355pt お気に入り:22

あなたならどう生きますか?両想いを確認した直後の「余命半年」宣告

現代文学 / 連載中 24h.ポイント:1,640pt お気に入り:37

処理中です...