生贄少女とヴァンパイア

秋ノ桜

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満腹

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sideダリア


「「ルシアス!!」」「ルシアス様!」


私たちがリラちゃんを止めようと進むと、ルシアス様は片手で来るなと私たちに合図を送る。



「今止めた方が厄介な事になる。可愛い怪物は腹一杯にさせて寝かせちまうのが一番だろ?」



「かなりの大食らいみたいだけど大丈夫?」


ライアス様の言う通り、リラちゃんの吸血量は半端じゃない。

相当飲んでる。



「あぁ、初めはこんなもんだろ。とりあえず、怖がらせたり興奮させたらもう手が付けられないから今は全員このまま待機だ。」


ルシアス様の冷静な言動とは裏腹に、部屋には血を啜る音が響き渡る。


いくらヴァンパイアは回復が早いとは言え、血を吸われ続けるのも限度がある。


それに……

ブチッ!!
「い゛っ……て…」


リラちゃんは容赦なく噛み付いてるからかなり痛そう。



「教える事はたくさんありそうだね。」


教える事?

ライアス様は不思議な事を言う。


「知性はなくなるはずでは?」


もう二度と会えないよ、優しくて暖かい私の大好きなリラちゃんには。


「きっと取り戻せる。……というか、必ず取り戻すよ。僕が一生をかけてもね。」


ルシアス様もそうだけど、ライアス様も相当愛が重い。



リラちゃんは本当にヴァンパイアを虜にする天才だね。


**********************

sideルシアス


「んっ……んくっ….ん……」


そんなにいいか?俺の血は。


他人に飲ませたことなんてなかったのにな。


呆気なく初めてを持っていかれた。


「そんなに焦らなくても俺は逃げない、ゆっくり飲め。」
「っぁ!!!」

そろそろまずいな。


リラの毒が回ってきた。


なんて甘い毒だ。

目の前がクラクラする。


「リラ。」

ライアスがリラに声をかけてもリラは一切反応しない。



「俺の方が好きだってさ。」



当たり前だよな?


俺と結婚してんだから。



「それはどうかな?」


ライアスはいきなり自分の首を引っ掻いて血を出す。


新しい血の匂いにリラが反応した。


俺から牙を抜き…


「………………。」


フラフラと立ち上がると次はライアスに飛びついた。


ブチッ!!
「っ!!!」


相当酷い噛み方だ。


その辺の野良犬より乱暴だ。


「あぁ…本当に、リラは可愛いね。」
「んっ…んく…んっ…」


リラはライアスの腰に足を絡めて血を貪る。


旦那の目の前でよくやるな、全く。


「リラ。」


さっきまであんなに俺の血に夢中だったくせにガン無視か?

ライアスがリラを抱きしめたまま椅子に座った。


「噛み方、今度ちゃんと教えてあげないとね。」


それは俺の役目だろうが。


「あぁ、俺がやるから何も心配するな。ヴァンパイアのことは全部俺が教える。」


俺の妻だからな。



*******************

sideリラ



「ん~っ」

なんかお腹いっぱい……


眠いなぁ………



真っ赤で暖かくて美味しいからもっともっと飲んでいたいけど……


「リラ、もう寝る?」


ライアスの声、優しくてすごく眠くなる。


寝ちゃえ…。



「ん…」


ライアスの首を噛みながら眠る。


あぁ、本当に幸せ。


ずっとこうならいいのになぁ……。



*******************

sideライアス

「リラ?」

もしかしなくても寝てるよね。


「赤ん坊か?噛みながら寝るなんて。」


魔法使いは呆れている。


「まぁ、そんな感じだよ。…じゃあ、僕はこの辺で。」


リラを抱き直して立ち上がると…


「リラは置いて行け。」


ルシアスが意味のわからない事を言う。


「どうして?」


僕のものなのに。


「俺の女だ。」


仲直りもできなかったのに?


あんなに悲しませていたのに?


「だから?僕は僕の物にするって決めたから関係ないよ。」


「頭がおかしいのか、お前は。」


ルシアスが立ち上がり僕の元へ来た。


「返せよ。」


僕がリラを?


「死んでも渡さない。」


睨み合う中、僕らの間に魔法使いが立った。


「お前ら王族だろ、女の取り合いなんてみっともない真似はよせ。状況も状況だ、日替わりで面倒を見ればいいだろ。」


日替わりで?


「僕の家なら地下室も鎖もある。拘束具が1つもない家には置いておけないと思うけど?」


リラが暴れ出しても止めるものがないこの家には置けないでしょう?


「俺が拘束具だ、安心しろ。」


ルシアスがリラの頭を撫でた。


「それに、リラは俺の妻だ。夫である俺が面倒を見るのが筋だろう?」



全く…こうなる前に離婚させておくべきだった。


*******************

sideダリア

「………じゃあ、日替わりってことでいいな。」


クロウさん、全然そんな話してなかったよ?

大丈夫?


「3日交代でいいだろ、映えある1回目のお預かりは旦那からだ、もうそれでいいだろ。ダリア帰るぞ。」


あぁ、なるほど。


クロウさん、痴話喧嘩が面倒くさいんだね。


「は…はい!」


クロウさんが足早にライアス様の屋敷を出る。


「えっと………とりあえず、また今度来ます。」


大喧嘩にならなきゃいいけど。


「あぁ、そうしてくれ。も喜ぶ。」

「僕の屋敷にいるから、暇な時はいつでもおいで。」



ダメだ、この2人。



絶対喧嘩する。


「は……はい、また、来ます。」


これは早々に逃げた方がいい。


巻き込まれたら死ぬ!
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