生贄少女とヴァンパイア

秋ノ桜

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血の虜

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sideライアス


「本当だ、本当に俺の名前を呼んだ。」


意識が戻ってルルドに状況を聞いて戻ってみれば、ルシアスがこんな事を言い出す。


ちょっと強く殴りすぎたかな?



「他は?何か変わったこととかない?」


名前を呼べるほどの知能があるなんて聞いたことない。


僕が調べたり読んだりしたものは全部ひどいものだった。

知能も理性もない、醜い化け物だって言うのに。


「言葉は分かってるみたいだ。」


名前を呼んだ次は言葉がわかってる?


「それが本当ならリラは逸材だね。」


知能も理性もあるって事?


「本当だ、嘘なんてつかない。」


リラを見たけど、口元を血塗れにして気持ちよさそうに眠ってる。


「どのみち、起きたらわかることだから待とうか。」


その時に僕の名前を呼んでくれたら嬉しいよ。















「ん~っ…」


数時間後、リラが起きた瞬間僕たちはすぐにベッドへ上がった。



「リラ、分かるか?俺だ、俺の名前呼んでみろ。」

「おはよう、リラ。」


リラはまだ寝ぼけていて、目をこすりながら僕たちを交互に見つめる。



「…………」


このぽやっとした感じだと喋れるようには見えない。


可愛いとは思うけど。


リラは寝ぼけながらベッドの上で立ち上がる。


「こら、そこで立つな、危ないだろ。」


ルシアスはそう言ってリラの手を引き座らせた。


怒られたリラは驚くことにムッとしているようにも見える。


本当に言葉がわかってるの?


少し試してみようか。


「リラ、怒られちゃったね。ルシアスは怖いから僕のところへおいで。」


リラはムッとした表情をなくして笑顔になる。


表情がよく出るようになってるね。


これはいい兆候なのかな。


リラは勢いよく僕に抱きついた。


僕の首元に顔をスリスリして甘えている。


「まだお腹空いてるの?」


僕が見たところ、今日はたくさんルシアスの血を飲んだんじゃないの?


リラに話しかけても、リラは僕に甘えるのをやめない。


「ねぇ、ルシアス。本当に喋ったの?聞き間違いじゃない?痛っ…。」


僕が喋るとリラは僕の首筋に噛み付いた。



「リラ、痛いよ。」


リラの小さい牙が僕の肌を突き破る。


まだまだお腹は空いているみたいだね。


「ちょうどいい、待つように言ってみろ。相当不機嫌な顔して待ってくれる。」


犬じゃないんだから。


でも少し気になる。


「リラ、待て。」


僕の言葉を聞いてリラの動きが止まった。


僕から牙を抜き物欲しそうな顔をして僕を見つめる。


「ルシアス、本当のことを言ってたんだね。僕はてっきり頭がおか、頭を強く打ったのかと思ってたよ。」


「おかしいって言おうとしたよな?ぶっ飛ばすぞ。」


僕らが話していてもリラは僕の首筋しか見てない。


「ついでに噛み方を教えてやってくれ。」


噛み方か…



「リラ、ゆっくり、優しく噛んでくれないかな?」


リラは僕の血に溺れていてまるで聞いてない。


「リラ、ちゃんと僕を見て?」


リラは名残惜しそうに僕の首筋から目を離した。


「できる?できるなら血を飲んでいいよ。」


リラはまた僕の首筋に視線を戻した。


そして…


「っ!!!」


相当な勢いで僕の首筋に食らいつく。


「リラ……痛いよ。」


僕が動かないように、リラは僕の腰に足を絡めた。


「リラ、そんなにしなくても僕は逃げないから。」


だからこの体勢はやめてほしい。


僕だって男だからね。


好きな子にこんな抱きつかれ方をされたらどうにかしてしまいたくなる。


いっそ、ルシアスの目の前でね。


「っ……リラ。」


リラは僕の髪の毛を掴んで僕に上を向かせる。


喋るなってことかな?


可愛い、そんなにも僕の血に溺れてくれるなんて。


そう思った矢先に、リラは僕の首筋から牙を抜く。


何をするかと思えば次はルシアスの元に擦り寄った。


ルシアスの首筋を噛もうとしているリラ。


それでもルシアスは簡単には噛ませてあげないらしい。


「リラ、待て。」


本当によく躾けているね。


ルシアスは楽しんでいるようにも見えた。


「痛くしたらあげない。」


あげない、の一言を聞いてリラの顔に焦りが出た。


本当によく言葉を理解してる。


「ほら、どうぞ。」


リラはルシアスの言葉を聞いてルシアスに飛びついた。


「待て。」


リラは悲しそうな顔をしている。


可哀想だけど、可愛い。


「優しく。わかったか?」


リラは頷いた。


この様子だと普通に喋れる日は近いかもしれないね。


「そろそろあげたら?意地悪するのもいいけど可哀想だよ。」


本人は空腹に喘いでいるのに。



「それとも僕があげようか?」



僕の言葉にリラが振り返った。


「僕なら好きなだけあげるよ?」


僕だけの血を求めればいいのに。


言葉通り、本当に好きなだけあげることができる。


喜んで差し出すよ。


「リラ、俺のはいらないのか?そんなことないよな?」


ルシアスはリラを後ろから抱きしめた。


そして自身の手首を噛んでリラの前に出す。


「ほら、お前の大好きな俺の血だ。」


リラはすぐさまルシアスの手首に噛み付いた。



「あいつの血は忘れろ。俺だけでいい。」



全く、そんなに美味しそうな顔をして。



妬けてくるよ。
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