生贄少女とヴァンパイア

秋ノ桜

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仮定

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sideルディ

あの兄弟の喧嘩が始まってから数分。


「リラ、寝るの??ここで?」


リラはソファーに座っている俺に抱きついて眠っていた。


そんな時…


「ごめんね、みんな。お待たせ。」


先に帰ってきたのは兄貴の方。


落ち着いた声とは裏腹に頭は血だらけだ。


「「「……」」」


もう壮絶と言うか、何て声をかけたらいいのか。


本当にあいつら兄弟だよな?


仲悪すぎない?



「さて、説明だったかな?」


ニコニコとライアスは笑ってるけど痛くないのか?


痛覚バカになってる?


「あ……えっと、はい。………あの、ルシアス様は?」


ダリアが恐る恐るライアスに聞いた。


「あぁ、多分生きてるから大丈夫だよ。」


多分生きてる??


それすらも確かじゃないのか?


「リラ……」


リラは起きて寝ぼけながらライアスを見る。


まだ眠いらしく、目を擦ってる。


「リラの相手をしてくれてありがとう。」


は?


ライアスが目の前にいる。


動きが速くて見えなかった。


「後は僕が引き受けるよ。」


渡せってことね。


渡すのはすごく嫌だ。


けど、リラがライアスに手を伸ばしたから行かせるほかない。


「はい。」


俺が素直にリラを引き渡すとライアスはリラを優しく抱いて向かいのソファーに座った。


「リラ、今はダメ。後でね。」


リラはライアスの血に魅入られてる。


物欲しそうに見つめる顔は本当に可愛かった。


「っ~」


リラはもう、欲しくて欲しくてどうしようもないらしい。


不意にライアスの頭から血が伝い、リラの頬に落ちる。


リラはそれを指で拭い口に含んだ。


その時の顔ときたら忘れられない。


可愛くて、色気もだだ漏れ。


「リラ。待て、だよ。」


リラは一口血を味わっただけで半狂乱。


ライアスに牙を剥き出しにした。


ライアスはその様子を怖がらない、むしろ笑ってる。


「まったく、仕方のない子だね。」


ライアスはリラの頭を下げさせて頸をあらわにする。


ブツッ!!


何をするかと思い見ていたら…


ブツ!!!

ライアスはリラの頸に噛み付いた。



「は!!?なにやって!」


俺が立ち上がると、クロウさんが俺の腕を掴む。


「大丈夫。あれは躾の一環だ。」


躾??


「リラは動物じゃない。」


躾なんて、家畜にするものだろ。


「もちろん知ってるよ。躾と言えば度が過ぎているように聞こえるけど、動きを止めているだけだよ。ここは変異した者の急所らしいからね。」



頸を取れば動けなくなるなんてまるで猫だ。

やっぱり動物扱いかよ。


「どうしてそんなこと知ってる?」


俺と違ってラルフは冷静に聞いた。


「さっき調べたんだよ、城にある禁断の書を。事細かく書いてあったよ。」


もしかしてさっき話したいと言っていたのはこのことだったのか?


「僕が説明してもいいけど、それはに任せた方がいいかな。」


ライアスはクロウさんを先生と呼んだ。


「全く、恐ろしいな。俺の身元は基本誰にも分からないようになっているはずだが?どうやって調べた?」


「それはお互い知らない方がいいと思うよ。」


ライアスら含みのある言い方をする。


「それもそうか、余計な話をしている暇もないしな。とりあえず、今のリラの状況を説明する。そして今後の話もな。」


説明って言ったって、リラはもう戻らない。


希望はもうどこにもないよ。


「まず、リラが人間じゃなくなったことはラルフもルディも聞いたな?」


俺とラルフは頷いた。


「リラを人間に戻すのは残念ながら無理だ。何をやってもリラは人間には戻れない。…が、自我は取り戻せるかもしれない。」


俺たち3人は顔を見合わせた。


ラルフもダリアも喜びの感情を露わにしてる。


「どうやってやるんですか!!」


俺はすぐさま飛びついた。


「全部説明してやるからそう焦るんじゃない。」


きっと俺がこの中で1番喜んでいる。


「そもそも、どうしてリラがただ暴れるだけの怪物にならなかったか説明する。
説明すると言っても、これは俺の仮定だがリラが怪物化しなかったのは恐らくリラの血筋にある。」


リラの血筋、それってつまり…


「禁断の果実…」
「そうだ、ルディ。今日は冴えてるじゃないか。」


俺普段どんだけ馬鹿だって思われてるんだろう。


否定はしないけどさ。


「禁断の果実は多大なる力を与える果実。その力は謎に満ちているが、いろいろなことができるのは確かだ。
禁断の果実の正当な継承者だからこそ、今回のような奇跡が起こっている。
そして俺が思うに、リラはこのまま何もしなくても自我を取り戻す。」


何もしなくても??まさかの放置??


「何か魔法とか、変な儀式とかしなくていいんですか?」


ラルフが聞くとクロウさんは少し笑った。


「儀式か、面白そうだがリラはこのままで問題ない。今何も喋れないのは順応している最中だからだ。
そもそも、何もできなくて当たり前なんだよ。
人間からヴァンパイアに変異しているんだから。
全員、気長にリラを待ってやろう。
生まれ変わっている最中だ。」
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