生贄少女とヴァンパイア

秋ノ桜

文字の大きさ
上 下
239 / 471

苦労先生

しおりを挟む
sideリラ


「何やってんだ。」

私がライアスの王子様の振る舞いに悶えていたら、ルシアスが半裸で部屋から出てきた。


「おい、今すぐ降ろせ。触るな、ぶっ飛ばすぞ。」


ルシアスは王子様らしからぬ発言をした。


「リラが怖がってるよ?可哀想に。」


え??私怖がってないのに!


「ライアス、怖くないよ?それに私はちゃんと歩けるから降ろしてくれないかな?」


私を挟んで喧嘩なんかされたら私が死ぬ!

「そんなこと言われたら悲しいなぁ。」


ライアスは本当にしょんぼりしてる。


「あ、あの!ごめんね?」


だからしょんぼりしないで!


「猿芝居に騙されるな、全く。それからそのシャツは俺が着るから、部屋から新しい服取って来い。」


ルシアスはライアスから私を奪って床に下ろす。


これはチャンスだと踏んだ私はすぐにその場を後にした。











準備にはそんなに時間はかからなかった。


だから2人は何事もなく世間話でもしているんだと思っていたけど…


「あれ?」


2人はこの屋敷のどこにもいない。



この数分で2人ともどこへ行ったんだろう。



まさかあの2人が仲良く散歩を?


地獄が凍ってもそれはない。



じゃあどこへ行ったんだろう。



殴り合いの喧嘩してたりしてね。


想像がついて少し笑えた。


「ふっ…まさかね。」
ガシャーン!!!!!



目の前にガラスが飛び散り、黒い大きな塊が部屋の中へ転がってきだ。



「いっ…てぇ…!!!お前!!やっていいことと悪いことがあんだろ!!!!絶対殺す!!!絶対に…」



私の目の前に転がってきたのはルシアスだった。


割れた窓の外を見るとライアスがひらひらと手を振ってる。


私とバッチリ目が合って固まったルシアス。


「大丈夫ですか???」


私が離れたこの数分で何が……



「大丈夫か!?」



え!?私が聞かれるの!?



「は…はい」「怪我は?ガラスとか刺さってないか?」



ルシアスの怒りは心配によって打ち消されたらしい。



「私は大丈夫ですけど、ルシアスは…」



あっ……。



「あ?」



まずい!!!

様が地雷か!なんて面倒なの!!



「あははは、仲良くしてくださいね~。たった1人の兄弟なんだからー。」


ルシアス様のご機嫌が斜めどころかひん曲がったのがよく分かる。


どこから逃げよう。


ドア?

いやいやだめよ、ドアはルシアスの後ろにあるからすぐに捕まる。



窓から飛ぶ?


いやいやだめよ、私人間だよ?こんなとこから飛んだら怪我じゃ済まない。


ん?


いやいや違うよ、私は人間じゃない。


人間やめてヴァンパイアになったんだ。


ここは2階、ヴァンパイアなら簡単に飛べる高さだ。


よし、行ってみよう。


いや、でも怖い。


もし怪我したら?

着地失敗して足をグキッとやったら?


「何をしかめ面してんだ?」


ここで怖気付くなんてダメ!


私はヴァンパイアなんだから!



「私ならできる!!!」
「は?何をって!おい!!やめろ!!早まるな!!!」



私はルシアスの静止を振り切って窓から飛び降りた。


2階とは言っても結構高い。


落ちているこの一瞬で着地の仕方がわからなくなる。


浮遊間に弄ばれている私は完全にバランスを崩した。


そんな私をしっかりと受け止めてくれた人がいる。


「っ!!!」


ライアスだ。


「背中から落ちるなんて間が抜けてて可愛いね。」


ライアスに間抜けと言われてしまった。


「できると思ったんだけど.……」


そうか、私は背中から落ちてたのね。


「練習したらできるよ、僕と頑張ろうね。」


ドン!!!
「っ!!」


大きな音に振り返ると、ルシアスが綺麗に着地していた。


「おぉ…」


全然怖がってない、すごい……


「おぉ…、じゃねぇだろうが!このお転婆!!」


ルシアスは私の左頬を引っ張る。


「いきなり飛び降りるな、心臓に悪いだろうが。」
「ごめんなひゃい。」


頬が痛い。


「そんなに怒ったら可哀想だよ、それに痛がってるから離してあげたら?」


「お前が離したら離してやるよ。」

「じゃあその手を切り落とそうか?」

「お前如きができるのか?そんなこと。」

「ふふ、簡単だよ。」


*******************

sideダリア

「全く、遅いと思ってきてみればやっぱりこれだな。」


クロウさんは目の前の光景を見て呆れたようにため息をつく。


「リラめっちゃ可愛い顔してね!?あの困り顔可愛い!」


ルディはリラちゃんが困った顔でライアス様とルシアス様を交互に見るのが可愛いらしい。


確かに可愛い、ルディとはこの点気が合うんだよね。


「可哀想だけど、可愛いからもうちょっと見てようかな。」


私は心の中の悪魔に負けた。


「助けて差し上げろ。てことで、クロウさん。出番ですよ。派手にかましちゃってください。」


ラルフはすぐ連れないことを言う。



「はぁ……どうしてこう問題児ばかりなんだ。」




クロウさんはトボトボ歩きながら、例の3人に近付いた。
しおりを挟む

処理中です...