生贄少女とヴァンパイア

秋ノ桜

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おやつ

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sideリラ


「これだから心の狭い男は。」

「はっ、リラに呪いをかけた奴がよく言う。」

「勝手に結婚する方がどうかと思うよ。」

「呪いの方がどうかと思うわ。」


白熱する兄弟喧嘩。


それを止めに来た勇者が1人。



パーン!!!


大きな音が響いて、私たち3人はその音の方を見る。


よく見るとクロウ先生が空に銃口を向けていた。


「いやいやいや!!」
「ちょっと!ちょっと!!」



慌てて走ってきたのはルディとダリアちゃん。


「何やってんですか!!クロウさん!!」

「弾入ってる!?まさかは入ってる!?」


2人は大騒ぎして、クロウ先生を止めた。



「入ってるわけないだろう、空砲だ。」


そうだよね、よかった。



「全く、止めろとかやめろとかお前達は忙しいな。」



クロウ先生は前からこんな感じだから私は驚かないけど、いきなり空砲を打ち上げたら普通の人はこう反応するよね。



「人の家で何やってくれてんだ、うちは銃禁止だ。さっさとしまえ。」


ルシアスとライアスは喧嘩をやめた。


紛れもなく、クロウ先生のおかげだ。


「だから実弾じゃない。それよりお前達、喧嘩をする暇があるならさっさと集合しないか。」


ごもっともです、クロウ先生。


「あぁ。悪いな、ほんの少し意見の食い違いが合ってな。」


ん?ほんの少し??


私はルシアスの言葉に疑問を持つ。


「そう、本当にちょっとした、大したことない事なんだけどね。」


次はライアスの言葉に疑問を抱く。


ちょっとした?たいしたことない??


この人たち嘘をついてる。


嘘はいけない。



「ならさっさと集合しろ。キジャとルルドはもう準備万端だ。」



あの2人はいかなる時も準備万端だとは思うけどね。



「気合が違うな、さすがだ。」



ルシアスですら行くのを嫌がっていたところだからね。

気合いくらい入るよ。



「リラちゃん、おやつ持ってきたからチーム☆ゴーストで分けよう!」


え!?おやつ!?


「分ける分ける!!」


私はおやつに釣られてライアスの腕の中から飛び出した。



「リラ、待って。」


ピリッと体にあの刺激が走る。


動きを強制される例のアレだ。


「な…なに?」


やっぱりいきなり飛び降りたのはいけなかったかな。


「慌てすぎて転んだらいけないよ。気をつけてね。」


なんだ、そんなことか。


「うん!大丈夫!ライアス、ありがとう。」


心配してくれたライアスにお礼を言って、私はダリアちゃんとルディと、ラルフのいるところへ走った。


*******************

sideルシアス

「おやつ?遠足じゃないんだぞ。」


クロウ、お前は一体アイツらに何を教えてたんだ?


「怖いとこならおやつで気を紛らわせるって聞かないんだ。」


俺たち3人はリラたちを見た。


「おやつ食べる暇もないって教えてあげた?」


「聞くと思うか?」


ダリアとリラとルディは子供のようにはしゃいでおやつを選んでいる。


ラルフは1人だけこっちを見て死んだ魚のような目をしていた。


「ラルフは苦労人だね。心中お察しいたします、くらい言ってあげる?」


ライアスはその様子を見て面白がっていた。


「お前が言うと煽りにしか聞こえねぇよ。」


俺ならキレる。


「それはルシアスの性格が曲がりに曲がっているからじゃない?」

「何回も言うが、ぶっ飛ばされたいならはっきりそう言え。」

「収拾がつかなくなるだろうが。全く、いい大人がこれじゃ先が思いやられるな。」


俺らが睨み合っているとクロウがまた懐から銃を出した。


「あぁ、わかった。それはやめてくれ。」


リラも怖がるだろう。


「じゃあさっさと集合場所に行くぞ。」


集合場所か。


もう騎士の2人以外揃ってるじゃねぇか。


キジャとルルドを呼んだ方が早い気もするが、遅刻してる分際でそれはなしだな。



「はいはい。お前らー、もう行くぞ。」



俺がリラ達に召集をかけると、リラとダリアとルディは大量のおやつを懐に急いで詰め込んでいた。


「はーい!」「ちょっと!ルディ!押さないで!」 
「押してねぇよ!!」「お前らうるさい。」



全く本当に先が思いやられるな。



「あの元気が何分続くことやら……」



********************

sideリラ


おやつとかいろいろ用意してようやく集合場所に着いた。



のはいいけど…………



「え??」



私はキジャさんとルルドさんの荷物を見て驚きを隠せない。



だって、戦争にでも行くのかってくらいの武器の量だ。



「申し訳ございません、ライアス様。時間がなかったのでこれしか用意できませんでした。」


これしか!?


ルルドさん大丈夫!?


「大丈夫、最低限のものは揃ってるから。ありがとう。」

「とんでもありません。」


私は本当に不安になってきた。


「団長ー、一応こっちもあるんで好きなの持っていってください。」


「1日でよくこんなに集めたな。」


「俺優秀なんで。」



私とダリアちゃんとルディは顔を見合わせた。



「何でみんなおやつ持ってきてないの?」


ダリアちゃんは心底気になるらしい。


「な、腹減っても死ぬって知らねぇんじゃないか?」


ルディも本気で心配をしてる。


「多分それくらいは知ってるよ!みんな大人だもん!」


あんまり大きな声で言うと怒られるよ!


「はぁ……俺はこれから行くとこより、自分の胃が持つかどうか心配だ。」


ラルフは心配性だね。

いや、苦労性??



「腹減ってんのか?俺のおやつ分けてやろうか?」


ルディはすかさずラルフに提案した。


「違う、俺の胃の話はストレスの話だ。」


そしてラルフはルディのことを瞬時に否定する。


こんな凸凹だけど親友同士で何年も一緒にいるからすごい。



何があってもこの2人は大丈夫そうだね。



私もみんなの足を引っ張らないようにしないと!
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