生贄少女とヴァンパイア

秋ノ桜

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チーム合流

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sideリラ

「はぁ……はぁ……はぁ…」
「リラ……はぁ、はぁ……無事か??」


私とルディはかなり息が上がっていた。


「うん……なんとか…」


すごく疲れた。


もう一歩も動けない。


これが1日目なんて…。


「とりあえず、熊からは逃げられたからいい…。」


ルディの言う通り。


倒すまでには至らなかったけど、なんとか逃げてきた。


「武器とか持ってきたらよかったね…。」


そんなものそもそも持ってないけど。


「大丈夫だ、俺たちにはおやつがある。」


おやつはあるけどさ…


「おやつで熊は倒せないよ。」


残念なことに。


「だよねー……あー、疲れた。」


ルディは地面にゴロンと寝転がった。


「はぁ……アイツらは何してんのかなー。」


ルディの言うアイツらとはきっとダリアちゃんとラルフのことだ。


「心配?」


友達想いだよね、ルディは。


「心配っていうか……うーん…まぁ、心配かな。」


そうだよね、こんな危険な島だもん。


ダリアちゃんたちも何に追いかけられていることやら。


「でも、2人して追いかけられて必死こいて逃げてるの想像したらすっげー面白い。」



ルディは想像で笑ってる。


「追いかけられてた私たちが人のことは言えないよ?」


笑っちゃダメだけど、想像したら私も少しだけ笑ってしまった。


「ん?」


ラルフが真剣な表情で起き上がった。


「何?」


まさかまた熊!?


「しっ…」


ルディは私の隣に来て人差し指を唇に当てた。


何が聞こえみたい。


何が来るんだろう。


私の耳ではまだ聞こえない。


そもそもどうやってそんなに遠くまで聞こえるようになるの?


特殊な訓練とか??


「リラ、よーーーーく耳を澄まして聞いてみ?なんかダリアたちの声が聞こえる。」



ルディは取り残されている私を置いてはいかない。


分からなくて困っていたら絶対に教えてくれる。


私は言われた通り集中して耳を澄ましてみた。



……


……



……



……



「わぁあぁぁああ!!!!」
「ダリア!!!そっちはダメだ!!」



ダリアちゃんとラルフの声!!


私はすぐさまルディの方を見た。


「アイツらなんかに追っかけられてる!」


ルディはすぐさま立ち上がった。


「行こう!」


私もルディと同様立ち上がり駆け出した。



2人が危ないなら助けないと。


2人には怪我してほしくない。


「リラ!こっち!」


ルディは正確な場所が分かっているらしく、私を案内してくれる。


さすがは狼。


鼻と耳がよく機能してる。



ルディについて行くと段々と2人の声や足音が聞こえてきた。


「よし!もうすぐ合流できる!ん?ちょっと待った!!」



ルディはそう言って足を止めた。


「わぁあ!!」


私はそんなルディの背中にぶつかった。


「ルディ?どうしたの?」


ドタドタドタドタ!!!!


あれ?


なんか目の前の薮からすごい音がする。


「ルディ…?」


これ何の音?

音はもう近い。


むしろすぐ目の前!



「リラ、下がって。」


ルディは警戒している。


私もそれを見て緊張してきた。


その瞬間…


「もう!!何なのこの森!!」
「いいから逃げ…」
「「!!?」」


薮からいきなりダリアちゃんとラルフの登場だ。



2人は木や草が体中に付いている。


一体全体、何からそんなにも必死に逃げてきたんだろう。


「何ぼーっとしてる!!走れ!!」


ラルフが珍しく大きな声を出した。


「は!?」
「え!?」


私たちは針で突かれたように飛び跳ねて、言われた通り走った。


「な、何から逃げてるの!!?」



2人が血相を変えて逃げ出すなんてよっぽどだ。


「やだ!もう来てる!!あれだよ!あれ!」


ダリアちゃんは半泣き状態で後ろを指す。


どれだけ怖いものが来てるの?


私は勇気を振り絞って振り返った。


そこにいたのは……



「ワニ!!!??」



大きな口、鋭い歯、速い脚に巨大な体!!



「ぎゃぁああ!!なんでワニなんか連れて来るんだよ!!」


ルディもその正体を知って半泣きだった。



「や、やだ!!」



ワニは飛ぶようにして私たちに噛みつこうとしてくる。



これはどんなバカでも分かるよ。



捕まったら死ぬ!!



「はぁぁあ!?誰が好き好んで連れてきたと思ってんのよ!あんた馬鹿なんじゃないの!?」

「こんなワニに追っかけられてる方が馬鹿だろうが!」

「あんた本当いい度胸してるわね!!かかって来なさいよ!ワニの餌にしてやるから!!」

「今喧嘩してる場合じゃないだろ!!馬鹿ダリア!!」

「あんたが吹っかけて来たんじゃない!!!」


2人は走りながらでも大喧嘩。


ある意味器用だ。


「2人とも大馬鹿だ!とにかく今は口より足を動かせ!死ぬぞ!」


ラルフはワニに噛まれそうになりながら叫んだ。


「もう俺ワニ嫌い!!本当嫌い!!」


ルディはさっきの熊の時よりも大騒ぎだった。


「好きな奴なんていないわよ!」


「リラ!大丈夫か!さっきから黙ってるけど怪我してるのか??」


ラルフは必死に私に聞いて来た。


黙っている理由は一つ。


「死ぬほどくだらない喧嘩を聞いてるとちょっと安心するの!私のことは気にしないで!!」

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