生贄少女とヴァンパイア

秋ノ桜

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埋葬

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sideライアス


「リラ、退いてろ。掘ってやるから。」

「自分でできます。」

「やったことないだろ?」

「ないですよ…誰だって、ん?ルシアス様あるんですか?」

「あぁ、死体埋めるのは割と得意だ。」

「聞かなかったことにします。」



ルシアスがリラのために穴を掘ってる。


リラのためなら僕がやってあげたかったけど、僕は僕でクロウに聞きたいことがあった。



「クロウ、さっきの教えてくれない?」


どうやってリラを連れ戻したのか。


「夢覚ましの魔法を使った。」


聞いたことがある魔法だった。


「催眠系の魔法を解く時に使うものだね。」


「あぁ、その通り。まさかとは思ったが念のため使ってみたら大当たりだ。」


ここまで優秀な魔法使いもそういない。

リラの味方で良かったと心底思う。


「そもそも、さっきリラの身に起きたことはなんだったの?」


とても普通ではなかった。


どうしようかと思ったよ。


「あれは、禁断の果実の血を持つ者同士に稀にある現象だ。死者の生前の記憶を受け継ぐ、あるいは見ることができる。理由はもちろん分かっていない。」



そんなことがあるなんて。


僕はまだまだ禁断の果実の知識が浅い。


それにしても分からないことがある。


「リラはもう禁断の果実じゃないのに、さっきクロウが言ったようなことができるの?」


「詳しいことは分からない。何せ世にも珍しい禁断の果実のことだ。例外なんて山ほどあるさ。」


そもそもリラがヴァンパイアに変異したのも例外だった。


リラは可能性に満ち溢れている。


だからかな、見ていて飽きないのは。


*********************

sideリラ


「リラ、その骸骨触った手で目とかかくなよ。肉は腐り落ちてなくなってるが菌の塊みたいなもんだ。」


ルシアスはそう言いながら要領よく穴を掘っていく。


ちなみにスコップはクロウ先生に魔法で出してもらった。



王子様なのに穴なんか掘って……それでも格好いい。


「粘膜に菌が入り込むと…って、何ニヤニヤしてんだ?」


どうやら私はニヤついていたみたい。


「別に。」


聞かないでください、くだらないことだから。


「おかしな奴だな。」


ルシアスはそう言いながらさらに深く穴を掘った。


今のうちにさっきのことを話しておいた方がいいかな。


ルシアスはあえて聞いてこないから、私が言わないとルシアスだってモヤモヤしたままだ。


「ルシアス…掘りながらでいいので聞いてください。」
「あぁ。」



少し変な事ではあるけど、さっきのことを。



「さっき…この人の記憶を見ていました。どうしてそれができたのかは分かりませんけど、おそらくそれはこの人が禁断の果実だったからだと思います。」


「え、ソイツ、じゃなかった、そちらさんは禁断の果実なのか?」


ルシアスもこれには驚いたらしく手が止まった。


「はい。この人、禁断の果実です。名前はサシャ。」


とても綺麗な人でしたよ。



「サシャ…ね。それで?サシャの死因は?」


死因…か。


「監禁された上に毎日血を抜かれて最後は衰弱死です。そんな酷いことをした女の名前はタランテラ・ガルシア。」


「またあのイカれた女か。」


そうです、私たちが追っている最大の敵。


「禁断の果実の血が欲しかったらしく、サシャの母親にさらに産ませると言っていました。」


ルシアスはため息をついた。


「最低な女だな。」


本当にその通り。


「素顔を見ました。」
「は!!?」


ルシアスがスコップを投げ捨てて穴から出てきた。


「どんな顔だった!?」


ルシアスが私の肩をガシッと掴む。


「ルシアス!痛いです!」


そんなに必死に掴まなくても…


「あぁ、悪い。で?顔は?」


ルシアスの手の力が緩くなった。


「顔は残念ながら物凄く綺麗で、夕焼けのような赤い髪の毛でした。」


一度見れば忘れないくらい、印象に残る容姿だったのは確か。


「赤い髪?珍しいな。」


赤い髪って珍しいの?


確かに見かけないけど。


「土だらけの手でリラに触らないでくれる?」


いきなりライアスが現れた。

後ろから私を抱きしめるように引き寄せるから、私の心臓はもちろん爆発寸前。


「お前が触るな、離せ。」

「リラ、なんの話をしていたの?」

「人の話を聞け。」



この兄弟はいついかなる時も本当に仲が悪い。



「この人がタランテラ・ガルシアに殺されたって話をしてたの。……驚かないの?」


私が言ったことに驚くかと思ったけど、ライアスは動揺ひとつ見せない。


「さっきクロウからそれなりに話は聞いたんだよ。禁断の果実には不思議な現象が稀に起きるって。今回はその稀な現象だったみたいだよ。」


クロウ先生が言うなら間違いない。


「そうなんだ…。それでね、私…タランテラ・ガルシアの顔を見たの。」



流石にこれは驚いたみたい。


ライアスの目が少しだけ見開いた。


「それはすごいね。…でも可哀想に、そんな醜い女を見せられて。」


ライアスは容赦ないな。



「残念ながら綺麗だったよ。」


自分が惨めになるくらい、あの女は美しかった。


「嘘つかないで。リラ以上に綺麗で美しいものは存在しない。」


「ちょ…っと//////もう…///////」
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