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王の部屋
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sideリラ
王の部屋に招待された私。
広い、ただただ広い。
ルシアスの屋敷のリビングくらいある。
「さて、哀れな人質よ。何が知りたくてここまで来た?」
素直に言えば教えてくれるのかな?
ここにきてダンマリはさすがになしだよね。
「タランテラ・ガルシアについて教えてください。」
私は素直に教えて欲しいことを言った。
「いつ聞いても不快な名だ。二度と口にするな。」
一体何があったらそんなに嫌いになるの??
元恋人なんでしょう??
「じゃあ……彼女のことを教えてください。後日ルシアス達を呼んでくださると言う事ですが、私と同じことを聞くはずです。」
先に知っておいてもいいでしょう。
どうせ人質になるならそれくらい許されるはず。
「狡猾で残忍、それ以外言いようのない女だ。聞きたいことはそれだけか?」
なんともアバウトな。
「性格はもう知っています。知りたいのはタラ、彼女の正体です。どうして不死身なのか、どこの生まれなのか、そう言ったことが聞きたいんです。」
「まだそれすら知らんのか。情報集めが下手すぎるのも考えものだな?」
さすがルシアスの父親。
口が滑っても言わないけど。
「元はただの魔女、今では不死身の化け物だ。」
化け物、あなたがそれを言うんだね。
「これは彼女とは関係のない質問になります。」
憎しみに呑まれないように、冷静に。
「なんだ?」
例えこの男が、私の両親の仇でも。
「私の村を焼いた感想はどうですか?」
王から笑みが消えた。
「それを知ってお前はどうする?」
心配だ。私の瞳から憎しみが溢れていないだろうか。
「どうもしません。両親も村も戻ってきませんから。ただ、心の中にしまうだけです。」
憎み、恨み、怒り、全てをドロドロに溶かして受け入れるしかない。
どんなに受け入れ難いことでも。
だってもう、私の大切な人は死んでしまっているのだから。
それに、ルシアスの妻である今は目の前のこと男が義理の父だ。
「それはいい心がけだ。感想はそうだなぁ…お前も焼いてみたらどうだ?言い難いほど楽しいぞ。」
反吐が出そうな答えだった。
死ねばいいのに、そう思うほど。
やっぱり無理だ、許すことはできない。
義理の父なんてどうだっていい、私の両親を殺した男だ。
この男は私を怒らせて動揺させようとしている。
どうしてそんなことをするのか冷静に考えてみた。
答えは一つしかない。
私を殺す理由を探しているんだ。
私が暴れて王の体に一つでも傷をつければきっと私を殺す。
理由もなく私を殺せばルシアスとライアスが本気で首を取りに来ることを知っているからこうして私を挑発するんだ。
なんて狡猾で卑怯な男だろう。
ルシアスに似ているのは顔だけ。
中身はまるで違う。
「機会があれば是非。」
私はライアスの真似をするように作り笑いを浮かべる。
ここは冷静に。
ただの人質で終わる気はない。
もちろん死ぬ気だってない。
ライアスがあの作り笑いを極めた理由や、ルシアスがここに帰りたがらないのがよくわかる。
ここは一つの判断ミスが命を奪う恐ろしい場所だ。
迂闊に感情を出せば殺される。
だから私は必死に耐えた。
どんなに両親のことを言われても、どんなに馬鹿にされた笑みを浮かべられてもひたすらに耐えた。
そして、心の奥底では殺意が沸々と煮詰められる。
ルシアスにもライアスにもこれは言うつもりはない。
私はここで静かに誓った。
絶対に目の前にいる男をこの手で殺すと。
*******************
sideルディ
俺たちが手を挙げると床の模様がゆっくりと消えて行く。
まさか知らぬ内に人質にされていたとは。
そんなことよりリラは大丈夫なのか…?
リラがめちゃくちゃ頑張っていたから俺たちチーム☆ゴーストは誰一人口を挟まなかったけど、俺は実は心配でたまらない。
ダリアもラルフも冷静を装っているけど、俺と同じでいつもの落ち着きはない。
俺は落ち着きがないのがさらになくなってるからもう悲惨。
そわそわしてて、子供みたいだ。
だってそうなるよね。
リラが連れて行かれちゃったんだよ?
落ち着けるわけない。
「クロウさん、外に出てていいですか?ここは窮屈です。」
耐えかねたラルフがクロウさんに声をかける。
「あぁ、いいぞ。俺たちもすぐに行く。」
許可が出た途端、ダリアが俺とラルフの腕をガッチリ掴んだ。
外に出るのは一瞬だった。
気が付けば城壁の外にいる。
俺たちは城壁を背にして座り込んだ。
外の空気が心地いい。
あの場がどれだけ嫌な空間だったか思い知らされた。
「リラちゃん…」
ダリアは少し落ち込んでいるようにも見えた。
「大丈夫だ、リラなら切り抜けられる。」
これは本当に心から思っていることだけど、同じ分だけ心配もある。
「そうだよね…リラちゃん強いもん。」
ダリアは自分に言い聞かせているようだった。
座り込んでいる俺たちに影が差しかかった。
音もなく現れたソイツに俺たちは目を見開くばかり。
「にげ」
逃げろ!!!
そう言うはずだった俺の言葉はその人物に気絶させられたことによってかき消される。
どうして俺らを狙ったのかは知らない。
暗闇の中に落ちるのは一瞬だった。
王の部屋に招待された私。
広い、ただただ広い。
ルシアスの屋敷のリビングくらいある。
「さて、哀れな人質よ。何が知りたくてここまで来た?」
素直に言えば教えてくれるのかな?
ここにきてダンマリはさすがになしだよね。
「タランテラ・ガルシアについて教えてください。」
私は素直に教えて欲しいことを言った。
「いつ聞いても不快な名だ。二度と口にするな。」
一体何があったらそんなに嫌いになるの??
元恋人なんでしょう??
「じゃあ……彼女のことを教えてください。後日ルシアス達を呼んでくださると言う事ですが、私と同じことを聞くはずです。」
先に知っておいてもいいでしょう。
どうせ人質になるならそれくらい許されるはず。
「狡猾で残忍、それ以外言いようのない女だ。聞きたいことはそれだけか?」
なんともアバウトな。
「性格はもう知っています。知りたいのはタラ、彼女の正体です。どうして不死身なのか、どこの生まれなのか、そう言ったことが聞きたいんです。」
「まだそれすら知らんのか。情報集めが下手すぎるのも考えものだな?」
さすがルシアスの父親。
口が滑っても言わないけど。
「元はただの魔女、今では不死身の化け物だ。」
化け物、あなたがそれを言うんだね。
「これは彼女とは関係のない質問になります。」
憎しみに呑まれないように、冷静に。
「なんだ?」
例えこの男が、私の両親の仇でも。
「私の村を焼いた感想はどうですか?」
王から笑みが消えた。
「それを知ってお前はどうする?」
心配だ。私の瞳から憎しみが溢れていないだろうか。
「どうもしません。両親も村も戻ってきませんから。ただ、心の中にしまうだけです。」
憎み、恨み、怒り、全てをドロドロに溶かして受け入れるしかない。
どんなに受け入れ難いことでも。
だってもう、私の大切な人は死んでしまっているのだから。
それに、ルシアスの妻である今は目の前のこと男が義理の父だ。
「それはいい心がけだ。感想はそうだなぁ…お前も焼いてみたらどうだ?言い難いほど楽しいぞ。」
反吐が出そうな答えだった。
死ねばいいのに、そう思うほど。
やっぱり無理だ、許すことはできない。
義理の父なんてどうだっていい、私の両親を殺した男だ。
この男は私を怒らせて動揺させようとしている。
どうしてそんなことをするのか冷静に考えてみた。
答えは一つしかない。
私を殺す理由を探しているんだ。
私が暴れて王の体に一つでも傷をつければきっと私を殺す。
理由もなく私を殺せばルシアスとライアスが本気で首を取りに来ることを知っているからこうして私を挑発するんだ。
なんて狡猾で卑怯な男だろう。
ルシアスに似ているのは顔だけ。
中身はまるで違う。
「機会があれば是非。」
私はライアスの真似をするように作り笑いを浮かべる。
ここは冷静に。
ただの人質で終わる気はない。
もちろん死ぬ気だってない。
ライアスがあの作り笑いを極めた理由や、ルシアスがここに帰りたがらないのがよくわかる。
ここは一つの判断ミスが命を奪う恐ろしい場所だ。
迂闊に感情を出せば殺される。
だから私は必死に耐えた。
どんなに両親のことを言われても、どんなに馬鹿にされた笑みを浮かべられてもひたすらに耐えた。
そして、心の奥底では殺意が沸々と煮詰められる。
ルシアスにもライアスにもこれは言うつもりはない。
私はここで静かに誓った。
絶対に目の前にいる男をこの手で殺すと。
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sideルディ
俺たちが手を挙げると床の模様がゆっくりと消えて行く。
まさか知らぬ内に人質にされていたとは。
そんなことよりリラは大丈夫なのか…?
リラがめちゃくちゃ頑張っていたから俺たちチーム☆ゴーストは誰一人口を挟まなかったけど、俺は実は心配でたまらない。
ダリアもラルフも冷静を装っているけど、俺と同じでいつもの落ち着きはない。
俺は落ち着きがないのがさらになくなってるからもう悲惨。
そわそわしてて、子供みたいだ。
だってそうなるよね。
リラが連れて行かれちゃったんだよ?
落ち着けるわけない。
「クロウさん、外に出てていいですか?ここは窮屈です。」
耐えかねたラルフがクロウさんに声をかける。
「あぁ、いいぞ。俺たちもすぐに行く。」
許可が出た途端、ダリアが俺とラルフの腕をガッチリ掴んだ。
外に出るのは一瞬だった。
気が付けば城壁の外にいる。
俺たちは城壁を背にして座り込んだ。
外の空気が心地いい。
あの場がどれだけ嫌な空間だったか思い知らされた。
「リラちゃん…」
ダリアは少し落ち込んでいるようにも見えた。
「大丈夫だ、リラなら切り抜けられる。」
これは本当に心から思っていることだけど、同じ分だけ心配もある。
「そうだよね…リラちゃん強いもん。」
ダリアは自分に言い聞かせているようだった。
座り込んでいる俺たちに影が差しかかった。
音もなく現れたソイツに俺たちは目を見開くばかり。
「にげ」
逃げろ!!!
そう言うはずだった俺の言葉はその人物に気絶させられたことによってかき消される。
どうして俺らを狙ったのかは知らない。
暗闇の中に落ちるのは一瞬だった。
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