生贄少女とヴァンパイア

秋ノ桜

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撹乱

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sideクロウ

「さてさて、遊んでやろう。」


王がニッと口角を上げた。


その瞬間、どこからともなく棘が生えて俺たちを攻撃する。



「っ!!!」


不意に来たこの攻撃は魔力ではない。


説明できない不思議な力だ。


「油断するな!どこからでも来る!」


ルシアスはそう言うと自身の手に虹色の炎を宿す。


ライアスも自身の手に白い炎を宿し、キジャとルルドは剣を抜いた。


どこからでも来るのなら、俺は背後を取られないようにしないといけない。


残念ながら、動体視力、反射神経、全てが俺が1番鈍い。


体力を削らない程度の薄い結界を張り応戦するしかなさそうだ。


俺も気合を入れ直した瞬間…



バキッ!!!


俺の結界に何か飛んできた。



「おいおい。」


魔力の塊だ。



飛ばしたのはおそらく相手方の魔法使い。


年はリラ達と同じくらいだろうか。



「いきなり顔面を狙うのはどうかと思うぞ、お坊ちゃん。」


冷たい表情をしている青年は変わった瞳の色をしていた。


緑色の瞳だ。


緑色の瞳にこの魔力…


「ビショップ家の末裔か。」


古い魔女の家系だ。


これはこれは珍しい。


数百年前に一族全員が火炙りにされたはずだが。


案外抜け穴は多いらしい。


「家系なんてどうでもいい。」


地雷だったらしい、表情が険しくなった。


冷静沈着と見えたが案外まだ子供だ。


突けば割れる風船と言ったところか。


何にしても俺の相手はこの青年で決まりだ。


「クロウ、サクッとやってこっちを手伝ってね。」


ライアスは俺にサラッと恐ろしいことを言って一瞬で通り過ぎてしまう。


そして王に攻撃を開始した。



本格的に始まったこの首取りゲーム。



負ければ俺たち全員が首だけになり、勝てば全てのことが変わる。


命をかけたポーカーのようなものだ。



まさか自分がこの舞台に立つとは思わなかった。



けどもう後には引けない。



せっかく上がった舞台だ。


楽しませてもらおうか。



*********************

 sideルディ


「ダリア!ラルフ!」


「わかった!」
「(了解)」



ラルフは狼に変わったから俺と無言のやり取りになるけど、ラルフとの掛け合いは慣れたもんだ。


リラの様子を見るけど、うまくやっている。


ちゃんと周りを見て逃げ回っているからすごい。



じゃあ俺もこっちに集中しないとね。


リラがめっちゃ頑張ってんだから。


「いつも通りに行くぞ!!」


ラルフとダリアが攻撃、俺が司令塔と攻撃。


「ラルフは俺と!!」

「ダリアは暴れ回れ!!」



俺とラルフが一定距離を保ちアルテを囲む。


ダリアは正面からアルテに挑んだ。


「女だからと言って手加減はしないぞ。」



アルテがなんか言ってる。


うちのビューティーゴリラ担当を舐めるなよ!!



「うるさいわ!!このタマなし!!!」



ダリアはそう叫んで強烈な蹴りをアルテに入れる。



バキッと明らかに骨が折れた音がした。


間髪入れずにラルフがアルテの足に噛み付く。


「っ!!!」


流石に痛いよね。



俺はガラ空きの頭に一撃入れることにしよう。



「俺らだって手加減はしない!!舐めんじゃねぇぞ!!」



バキッ!!!


俺の右ストレートが綺麗にアルテの頭に入った。



スッキリ爽快、なんて言ってられない。



「その程度か、ガキども。」



アルテは俺らの三連続の攻撃を食らってもまだ笑う余裕があるらしい。



上等!!



「退避!!」


ならやってやろうじゃん。


俺らをただのガキだと思うなよ。



俺らはチーム☆ゴーストだ。



お前が死んでも尚、その魂にかじりついてやる。



*******************

sideリラ


ヒュッ!!


右からくる!!


直感のようなものが働き、飛んできたものを避けることができた。



その飛んで来た物の正体はナイフ。


今は無惨にも壁に刺さっている。


この高そうな壁に穴を開けることは抵抗がないらしい。



ヒュッ!!

次は左!!


私は咄嗟にまた飛んできたものを避けた。


またナイフだ。


みんなナイフ好きだね。


「くそっ!!」



ナイフを投げている連中はイライラしている。


私の動きについて来られてない証拠だ。


撹乱は順調、この調子でもっと乱すのよ。


あの恐ろしいワニに追いかけられて鍛えられた私を舐めないでほしい。


どんなに上手いナイフ投げでも私を捉えることは出来ないよ。



「リラ!!!」


突然ルディに呼ばれた。



ルディが司令塔だ。


呼ばれたならすぐ行かないと。



「はい!!」



私は踵を返してルディの元へと帰る。


そして再び背中合わせになった。


「リラ、撹乱ご苦労様。次は4人で攻める。」



ルディの言葉が本当に嬉しかった。


必要とされたからだ。



「まかせて!!」


私は再び気合を入れ直した。
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