生贄少女とヴァンパイア

秋ノ桜

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王様の部屋

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sideライアス


昨日は本当に気が狂いそうだった。


リラが他の男に可愛がられている声なんて死んでも聞きたくなかったのに。


「ライアス…戻ろうよ、ルシアスが本気で怒ったら怖いよ?」


リラはルシアスが怒ると怖いと言っているけど…



「大丈夫僕も負けてないと思うよ?」


ルシアスが怖い?


まさか。


キレたら僕の方が手がつけられない。


まだその姿をリラに見せていないだけだ。


「で、でも、ライアスが殴られるかも…」


「殴り返すから平気だよ。」


僕の隙のない答えを聞いてリラはもっと慌てふためく。


「だ、だめだよ!!喧嘩したらお城が壊れるよ?」

「僕がまた建てるよ。僕がここの主人なんだから。」


リラは僕が王になったことを忘れていたらしくパッと目を輝かせた。


「あぁ!そうだ!ライアスはもう王様だったね!おめでとう、ライアス!」


慌てていたと思えばこの無垢な笑顔。

恐ろしい子だね。


「ライアス様の方がいいかな?やっぱり王様って1番偉い人だし。」


僕はリラに様ってつけられるの大嫌いなんだよね。



「ライアス様、なんて呼んだら……」


僕が勿体ぶるとリラは僕の腕の中で僕を見つめる。


「よ、呼んだら?」


可愛くて可愛くて仕方がない。


愛おしい。



「首を刎ねてやる。」



僕がそう言うとリラが腕の中でカタカタ震え始めた。


「それは嫌だ…。」


少し怖がらせすぎたね。

僕は一応リラの創造者になる。

リラは本能で僕を恐れるようにできているからこんなことを言われたら怖いに決まってる。



「嫌だ?じゃあ何か他の罰を考えておくよ。」

「痛くないのがいい!」


痛いこと嫌いだもんね、リラは。


「そう?じゃあ何にしようかな。」


そもそも罰なんて与えないよ。



…多分ね。


*********************

sideリラ

私は誓った、死んでもライアスに様なんてつけない。


首が飛ぶ。


「着いたよ。」


ライアスは隣の部屋と言ったけど、長い廊下を挟んだ隣の部屋だった。


そして……


「ここは……。」



王様の部屋だ。


前に一度だけ入ったことがある。


あの時はライアスのお父さんとここにいたっけ。


「あれ?家具変わってる?」


一瞬しか見てないからよく覚えてはいないけど。


「よく気づいたね。あの男が使っていた家具は全部燃やしたよ。」


ライアスは本当に容赦ない。


「ベッドは秒で燃やしたよ。自分の寝床を他人と共有したくない。」


ライアスはそう言って私を新しいベッドの上に乗せた。


「え!?あ、あの!私ダメだよね!?ごめんね!」


何で共有したくないって言ってるのに私をベッドに乗せたの!?


ライアス、天然ボケ??


「リラはいいよ、リラだけならね。」


私だけ?


「僕の大切な子は特別。」


ライアスは膝をつき私の頬を撫でる。


ライアスって本当に背が高いから、膝立ちになってもベッドに座っている私と背丈が大差ない。


「いつでも僕の部屋に来ていいよ、歓迎する。」


本当にこの人は人たらし。


そんなことを言われて嫌な気分になる人はいない。


「だめだよ、私が入り浸っていたらライアスが結婚できなくなるよ?」


もう王様になったんだから、異国のお姫様とかと結婚するんじゃないの?

それか、この国のご令嬢とか。


「リラ以外と結婚する気はないよ。」


何か言ってる。


「王様なんだからお妃様を迎えないと。」


後継だって必要だし、結婚は絶対にしないと。


「リラがなってよ。」


ライアスが私の腕にキスをした。


ルシアスの痕跡が消えていくかのようにあざが治っていく。


「僕の妃に。」


ライアスが私の腰に手を回しギュッと抱きついてきた。


「さすがの僕も昨日のは堪えたよ。…好きな子の喘ぎ声が他の部屋から聞こえてくるなんて耐えられない。」


ライアスは本当に落ち込んでいるように思えた。


「リラならわかってるくれるよね?」


たしかに、ルシアスの部屋から違う女の人の声が聞こえたら私は耐えられない。


嫉妬で狂っておかしくなる。



「うん…よく分かるよ。」


本当によく分かる。


つい昨日まで嫉妬に狂っていたんだから。



「だけど…ごめんね、ライアス。」


私がライアスの頭を優しく撫でると、ライアスは私をもっと強く抱きしめた。


「今日はここにいてよ。…僕を愛してなんて言わないから。」


私の前でだけ見せるこの弱気なところ。


本当に堪えているみたい。


「疲れたんだ。いろいろと。」


珍しいね、疲れているなんて。


きっと私が逃げている間に本当にいろいろあったんだね。


「いいよ、ここにいるからゆっくり休んで。」


愛せはしないけど、側にいる事くらいは出来るから。
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