生贄少女とヴァンパイア

秋ノ桜

文字の大きさ
上 下
371 / 471

夜空と約束

しおりを挟む
sideルディ


星を見ながら、リラは可愛い笑顔で俺に酷いことを言った。




「ねぇ、ルディ。
もしも私が私でなくなった時は…その時は私をちゃんと殺してね。」



リラにこんな酷いこと言われたのは初めてだ。


「も~、リラちゃ~ん、ダメよ、そんなこと言っちゃ。お母さん許しませんよ。」


リラの真剣な頼み事を茶化した。



そんな頼み事聞けないし、俺は向き合えないよ。



「でもルディしかできないんだよ?」


どうして俺だけ?



「もしかして俺はルーカスよりも、どイカレサイコだと思われてる??」



それはそれで心外だな。



「思ってないよ、この点はルディが1番頼りになるから話してるんだよ。」



嫌な信用だ。


俺がリラを殺す?


絶対無理だよ。



「なんで?まぁ理由くらいは聞いてあげるよ。」


リラにはリラの考えがある。


それを尊重できなきゃダメだ。


「まず、ラルフが私を殺したらダリアちゃんが笑えなくなっちゃうでしょ?

かと言ってダリアちゃんは絶対にできないだろうし、ルーカスは普通にピュアだし、残ったのはルディだけじゃない?」



なるほど、なるほど、消去法か。



「却下です。」



そもそも俺だってできないよ。



「却下かー。」


リラは可愛く笑うけど、俺は上手く笑えないよ。



「もしも、おかしくなった姿を見られたくないなら俺が隠すよ。一緒にみんなから逃げればいいじゃん。」



殺すことはできないけど、一緒に逃げるくらいはできる。



「で、俺がちゃんと看取る。」


そうかそうか。


俺が手を下さなくても、リラはこのままだと死んじゃうんだよな…。



それは身を切られるよりもつらい。


「じゃあそうしようか、よろしくね、ルディ。」


リラは死ぬのが怖くないんだろうか。


なんだろう、この感じ。


なんだか殺伐としている気がする。



「うん……。」



死を目前にしたリラに、死ぬのは怖い?と聞くことなんてできない。


俺は頭良くないけど、それくらいのことは分かる。



「リラ、大丈夫。どんなのになってもリラはリラだ。ま、何にもないのが1番だけどさ!」




俺が暗くなったらダメだ。



だけど、リラが死ぬかもしれないこの状況に泣き出しそうでもある。



ちゃんと笑えてるかな?



「そうだね……本当に、何も起きなければいいのに。」


「大丈夫。俺らはポンコツだけど、大人達はそうじゃない。絶対に助かるよ。」



俺の何の根拠もない励ましに、リラは元気よく頷いた。



*********************
 
sideリラ


次の日、それは突然だった。


「ねぇ、原点に帰ってみるのはどうだろう。」


ダリアちゃんがこんなことを言い出す。


「「「「?????」」」」


ルディ、ラルフ、ルーカス、私は何のことを言っているか分からずぽかんとした。



「もう!みんな鈍すぎ!!あの魔女の生まれ故郷に行ってみるの!何か分かるかもしれないでしょ?」



ダリアちゃんは斬新な考えを私たちに言うといきなり立ち上がった。


「うん!そうよ!!そうに決まってる!!」


そして物凄く燃えていらっしゃる。


「そうと決まればあの女の生まれ故郷を探そう!どうせ暇だし!!」


最後のセリフバシッと決まってたよ。


「そうだね、どうせ暇だし行ってみようか。」

 
私もその意見に賛同した。


「全く、止めてもどうせ行くんだろ?」


ラルフは困ったように笑ってダリアちゃんに聞いた。


「うん!もちろん!それに、何かまずい事があったらルディに全部なすりつければいいし!」

「おい!!」


ダリアちゃんのとんでもない意見にすかさずルディが突っ込んだ。


「気に入った。」


だけど、ラルフはその意見を気に入ってしまい…


「賛成。」


ルーカスも賛同した。


「お、お前ら!!薄情者!!ロクな死に方しないからな!!」


「それはあんただけよ!もし何かあって死んでもその辺に置いて帰るからね!」


「気に入った。」

「賛成。」


だんだんルディが可哀想になってきた。


だから私くらいは味方でいないと。


「ルディ!大丈夫!お墓は立ててあげる!」


大きなお墓は無理だけど、それなりのはきっと作れるから!!


「リラ……」



ルディは感激したらしく、私を見つめた。



「ちょっと!ルディ!あんたちゃんとお礼言いなさいよ!あんたみたいなポンコツにお墓立ててくれるのリラちゃんくらいだからね!!」


「喧しい!!!そもそも俺は死ぬつもりはねぇよ!!」


「は!?馬鹿じゃないの!?私が殺すから関係ないわよ!!」


「お前最近ますますヤバいな!!」



この楽しい話し合いは何時間か続いた。
しおりを挟む

処理中です...