生贄少女とヴァンパイア

秋ノ桜

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ルディとルーカスの隠蔽

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sideダリア


「ゲホッ!ゲホッ!!」


口の中がじゃりじゃりする。



息をするのが苦しい。


気管が痛い。


「ゲホッ!ゲホッ!オェッ!!」


ゴキッ!!ゴキッ!!と体から音が鳴った。


どこかの骨が折れていたらしいけど、苦しすぎてその痛みは分からない。


「ゲホッゲホッゲホッ!!!」

「よしよし、よく頑張ったな。」



トントンと背中を叩いているのはルシアス様。



「ダリア!!大丈夫か!!」


その後に、裸のラルフが私を起き上がらせた。


「ラルフ…ゲホッゲホッ!!」


ラルフは裸のまま私に抱きついて来た。


「よかった…ほんとによかった…」


ギュゥゥウッて感じ。

痛い、治った背骨がまた折れそう。



「邪魔して悪いがお前は服を着ろ。俺は全員にこのことを知らせる。」



ルシアス様がシュッと一瞬で消えた。


「ゲホッ…ゲホッ…」


気管が痛い、血の味がする。



「ダリア、大丈夫か?誰に何をされた?どうしてこんなことに?」



ラルフは全裸で質問攻め。


「ラルフ…」


分かってる、後で全部話すから…



「とりあえず、服着よう?」



流石に目のやり場に困るよ。


いくら私が大怪我していて死にかけたからってね。



「あぁ…そうだな。…いや、先にルディに知らせないと。大変なことになる。」


大変なこと?

何それ?


「ゲホッ、大変なことって?」

「後で全部話す。」



******************

sideルディ


拷問をしている最中にラルフの遠吠えが聞こえた。


ダリアが見つかった合図だ。



「ルーカス、今日はここまで。ダリアが見つかった。」


今リラの体は気絶してる。


「わかった、とりあえず拷問の記憶を封印しておこう。ルシアスにいいように言われたら迷惑だ。」


さすが魔法使いの弟子、優秀すぎる。


「了解、一旦降ろすね。」


リラを縛っていたロープを解き、そっと床に下ろした。


完全に気絶してると思ってた、油断大敵って言葉を忘れてたよ。


リラを床に下ろした瞬間…


「ぐはっ!!!」



強烈な蹴りが俺の腹に入った。


さすがはヴァンパイア、蹴られたとこの骨が折れて内臓に刺さった。


吐血した血が床に飛び散る。


意識が飛びかけたけど何とか体勢を立て直しリラの頭を掴んで床に押さえつけた。


こんな蹴り方、リラは知らない。


戦闘を生き抜いて来た技だ、馬鹿でもわかる。



「ルーカス!!眠らせてくれ!」


俺がルーカスを呼ぶと、ルーカスはリラの頭に手を当てて呪文をぶつぶつと言い出す。



俺の腕の中で大暴れしていたリラは次第に大人しくなっていった。



体だけは本当に逞しい。


人間の頃とは大違いだ。



「寝たな。記憶を封印しておく。」



ルーカスはまた呪文をぶつぶつ唱え始めた。



これって側から見たらホラーだよな。



「これでよし。……で、その怪我は何て説明する?リラのこの怪我も。」



俺とリラはもうお互いボロボロ。



リラは拷問されたからだけど、俺はリラの大暴れを喰らったからだ。



「そうだなぁ……うーん。」



俺とルーカスは考えた。



考えて考えて考え抜いて、ある方法を思いついた。



*******************

sideルシアス

「いや~、参ったね~。」


ふざけた声が聞こえて来た。


俺はすぐさまその声の主の方へ急いだ。


「どうした。」


目の前に現れたら、ルディが驚いていた。


「よ、お疲れ。」


その能天気さに腹が立つ。

「お前….」


どうしてそんなに能天気なんだ?



「リラに何した?」



リラが気を失ってるのはどういう了見だ。



「そう怒るなって。これには深すぎる訳があるんだ。」


よく見ればルディもルーカスもボロボロだ。


「リラが鹿の鳴き声とダリアの声を間違えて崖に突っ込んで落ちた。俺らはそれを助けようとしてリラと同様に落ちた。」



怪我の程度から崖から落ちたのは本当だろう。



「な?深すぎるだろ?」


深すぎると言うか、我妻ながら…


「マヌケけすぎる。」



それはそれは呆れた。



鹿の声をダリアの声と間違える程動揺していたのか。



俺の不吉な予想は案外ハズレかもしれないな。



いや、でも確認するに越したことはない。



リラが目を覚ましたら、早速試すか。



あの、究極の質問を。
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