生贄少女とヴァンパイア

秋ノ桜

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唐突な飢え

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sideクロウ



あの魔女を捕らえて1日経った。


珍しく、俺よりも早くルシアスが仕事に取り掛かっている。



まぁ……ただの口喧嘩をしているようにか見えないけどな。


「盛り上がっているところ悪いが、俺にも話をさせてくれないか?」



こんな罵り合いをしていた所で何も変わらないだろう。



「クロウ、ようやく来たか。」


ルシアスは俺を待ち焦がれていたらしい。



「この魔女は口が減らない。殴っていいか?」


ルシアスに許可を求められるとはな。


「殴ってもいいが、先に例の呪いの解き方を聞かないとな。」



ルシアスが本気で魔女を殴れば気絶しかねない。


そうなるとまた起きるのを待つ羽目になる。



そんな二度手間はごめんだ。


起きているうちにさっさと終わらせないとな。


「あぁ、そうだった。どこかの枯れ木を人間に戻してもらわないといけなかったな。」


絶対に忘れてたよな。


ライアスの命がかかっているって言うのに。



「ふっ…ふふ…」



魔女は急に笑い始めた。



「何笑ってんだ、笑いのツボ大丈夫か?」



かなり不気味な笑い方だ。


「あの、老ぼれめ…フッ…結局、私を頼らなければ呪いも解けん能無しか。」



この様子じゃなかなか簡単には呪いを解いてくれそうにない。


「で、解くのか解かないのか。解くなら今すぐ森にお散歩で、解かないなら俺とクロウが楽しく遊んでやるよ。」



ルシアスはもうやる気満々だ。


すでに準備運動を始めている。



「私に何の得がある?呪いは解かない。」


やっぱり断るか。


それなら仕方ない。


「どっちからいく?」


ルシアスが楽しそうに俺に聞いた。


その顔を見て1番は貰えないよな。



「お先にどうぞ。」



恨みを晴らすといい。


「じゃ、お言葉に甘えて。」



ルシアスはそれはそれは嬉しそうに魔女に近づいて行った。



******************

sideライアス


「っ…うっ……っ…!!」


ベッドでのたうち回っていたはずだけど、気が付けば床でのたうち回っていた。



「はぁ…っ…はぁ…っ…」


体が焼けるように熱い。


「っ…げほっ!!!」


ボタボタと血が口から流れて止まらない。


床を汚してしまった。



あぁ…体は熱いのに、寒い。


気持ち悪いはずなのに、お腹が空いてたまらない。


牙が鋭くなってきた。


そうか…僕はなんて浅ましい。


リラが…リラの血が欲しい。


温かくて、甘くて、僕を狂わせるあの血が……



「ライアス、大丈夫?大きな音がしたけど…。」



こんな時に本当に…


「大丈夫だから…開けないで…。部屋に戻って…」



今リラが近くにいたらきっとあの細い首に噛み付いて食い殺してしまう。



「でも…」
「本当…大丈夫だから。」


言葉とは裏腹に血の渇望だけが大きくなる。


これは、かなりよくないね。


心拍数が上がり、理性までそれと同時に削がれてしまう。



ここまで飢えることはなかなかないのに。


それだけ体が弱っているんだ。



体の回復にかなりの体力を使ってしまった。



「っ……」



血管が悲鳴を上げ始めた。



これは…本当にまずい……。
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