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第7話 初めてのコラボで妹が緊張するなんて珍しい!(中編)
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「みんなー! こんきらりー!」
私はいつもの挨拶をして頭のスイッチを切り替える。今日は長い一日になりそう。気合いを入れた挨拶で私達のコラボ配信が始まった。
「今日は予告した通り、私が初めてコラボする相手、なんと、雷桜つばきちゃんが来てまーす!」
「皆さま、こんつばー。今日は呼んでくれてサンキューな、きらりちゃん」
「と言っておりますが、つばきちゃんから誘ってきたんですけどねー」
「あははっ! まぁそうなんだけどね」
配信画面の視聴者数は開始した途端に、いつもよりぐんぐん増えていくのを私は確認する。やっぱりコラボ相手のつばきちゃんの視聴者さんも来ているみたい。
「えー、今日はですね。私の苦手なホラゲーをプレイしていきます」
「苦手なゲームをやるとはきらりちゃん頑張るねぇ~」
つばきちゃんがちょっと煽り気味に言ってくるけど、私も言い返してやる。
「だからやろうってそっちが言ったの忘れてないよ私」
「あれ、そうだったっけ?」
軽くつばきちゃんの事を流して、配信を進めなくちゃね。
「それはさて置き、ゲームを始めますね。みんな音は大丈夫かな」
今日プレイするゲーム、【missing ~死霊の館~】を起動させる。配信画面のチャット欄のメッセージには、音声が少し小さいと書かれたので、私は音声ミキサーを調整する。
「置かれた私も調整しますよっと」
「音声とBGM大丈夫かな。これで良い?」
チャットには『おk』とか、『大丈夫』と反応が返ってくる。どうやらこれで大丈夫みたい。私はパソコンの音量調整を終えて、問題がない事に安堵する。
「私の声も大丈夫みたいだね」
つばきちゃんの方の音声も問題ない事を確認して、私達はゲームをスタートした。ホラゲーは苦手だけど、足手まといにならないようにしないと。
「それじゃやっていきましょー!」
私は再度気合いを入れる。
「一発でクリアするよん」
オンライン協力型の脱出ホラーゲーム。タイトルは【missing ~死霊の館~】
プレイヤーが密室の屋敷に閉じ込められ、そこから脱出する事を目標としたFPSの作品。
脱出するには屋敷に隠された10枚のお札を全て回収しなければならない。そして時間が経てば悪霊が順番に増えて襲い掛かってくる。プレイヤーは悪霊から2回ダメージを負えばダウンし、そして操作不能になる。
しかしフレンドが互いに一度だけ助け起こして復活させる事ができ、一回だけ行動可能となる。それでも全員ダウンすればゲームオーバー。そして二人のプレイヤーが同時にダウンした時もゲームオーバーとなる。それが今回コラボでやるゲームの説明書に書かれていた内容よ。
説明書を見ながら話してた時、つばきちゃんから聞いた話だと難しいゲームらしいの。
出てくる悪霊のタイプは3種類で、特性がそれぞれ違ってくるらしいのよね。どんな特性かは当然記載されていないけど、とにかくプレイしてみて臨機応変に協力する事が大事なゲームっぽい。
私たち2人の操作するキャラクターは暗がりの屋敷の外に出てきた。すぐ目の前にはおどろおどろしい屋敷の扉が半開き状態で開いている。
「うわ~、いかにも何かいますよって感じだね……」
結構な臨場感に少し私の気持ちが後ろ向きになってしまう。
「そりゃ、ホラゲーだからね。さぁさぁ、中に入って行こ」
「つばきちゃん先に行ってほしいな。私は後ろから付いていくから」
「きらりちゃんビビり過ぎでしょ。まだ始まったばかりなのに」
私の動かすキャラはへっぴり腰で、つばきちゃんの後ろを付かず離れずの距離で進んでいく。扉の中に入ると中は薄暗く、壁には松明とロウソクが灯されている。そこで私達は初期装備として持っている懐中電灯を使って進むことにする。
これで前方はだいぶ明るくなり、私は少しビビっていたのが解ける。
Liveを見てくれている視聴者さんからは、『ビビりすぎだよー』とか、『これは音量注意必須』とか書かれている。私はかなりビビっていると思われているらしい。これはちょっと言っておかねばならない。まぁ、正直ビビッてるんですけどね。
「いやー、武者震いだから。これはそう武者震い。全然ビビってないし~」
「おー? なら先に二階に行って進んでよ」
つばきちゃんの発言で、視聴者さん達も行こう行こうと煽ってくる。
「うぅ…、まぁ、そこまで皆が言うなら。ここは私が行くしかないのね」
私は気持ちを奮い立たせ、薄暗い階段を上って行き二階に出たみたい。後ろからつばきちゃんのキャラも来てくれている。問題ないはずよ。まだ悪霊は出てきていないし。そのまま近くの和室に入り私は机を調べると、1枚目のお札を早速発見と。よしよし、いい感じ!
「つばきちゃん、1枚目のお札ゲットだよ」
「最初の1枚目だね。この調子でどんどん札を見つけよう。と言う事で一旦別々で行動してお札を探そうか」
「え? だめだめ、2人で行動しようよ」
しかしチャット欄も『別行動がいいよ』、『効率的にそうした方が良いよね』など書かれてくる。明らかに私の1人行動をみんな期待しているのね。よっぽど私がやられるのを期待しているとは。でもそうは行かないわ。そう簡単にやられてたまるもんですかっての!
という訳で私は渋々了承した。
「はぁ~。わかったよぉ」
「決まり。じゃあ私はこのまま二階を探索するから、きらりちゃんは一階の方をお願いね」
つばきちゃんが探索の指示をさくさく決めていく。
「ゲームオーバーしても知らないからね、もうっ」
「大丈夫だって。きらりちゃんがいなくても私がクリアしてあげるから」
初コラボでそんな恥ずかしい事になったら私普通に恥ずかしすぎるんですけど!
「それ動画だったら没になるやつだから、マジ勘弁」
私は一階へ降りるため階段を下って行く。するとすぐにつばきちゃんから報告が来た。
「お札2枚目見つけた。あと8枚だね」
「このまま何事もなく終わると良いけど」
「あははは。それホラーゲームとしてどうなのさ。でも逆にむしろやってみたいけど。散々音で出そう出そうってなって最後まで何もないとか笑えるじゃん」
確かに自分から終わってほしいって言ったけど。それホラーゲームじゃなくなってるけどね、つばきちゃん。
そんな感じで向こうは気楽な口調でプレイしているようで、全く怖がっている様子がないみたい。
だが私は油断してはならないと思う。まだ悪霊が出て来ていないのだから。一階の渡り廊下を慎重に進む。気が付くと足元にお札があった。このまますぐクリア出来るのではと、安易に思ってしまうくらいに楽に発見出来た。これはもしかしたら案外苦労せずにクリア出来たりするかも?
「こっちも3枚目見つけたよ。順調順調」
私が3枚目を見つけて上機嫌だったけど、ついに悪霊が出たらしい。
「いいねー。うわっ、なにあいつ。追っかけてきた。のっぺらぼうって奴?」
「悪霊出たの!? 絶対こっちには来ないでね!」
「あ、ごめん。今そっちに逃げてるかもー」
気付けば私の後ろにつばきちゃんのキャラが私に向かってくる。その背後からそこまで早くないが、確実にのっぺらぼうが追いかけて来ている。いやいや、何来てるの、つばきさん?
「こっちに来ないでって言ったじゃん。つばきちゃんわざと来てるでしょ!」
「来ないでって言われたら、行きたくなるじゃーん」
チャットも『つばきちゃん有能』とか、『さすつば』とか書かれているが、いい迷惑よ、もうっ。
つばきちゃんは笑いながら私の方に向かって追いかけてくる。私達は一旦近くの和室に入り、押し入れの中に隠れる事にしようとしたが、中に隠れる事が可能なのが1人らしく、つばきちゃんが入ってしまう。
明らかに2人は入れると思ったが、1人しか無理みたい。仕様なのか1人しか入れないとか、ふざけてるわ。作者の悪意を私はひしひしと感じる。ムカついてつい、一旦水分を取る。うーん、お茶が美味しい。
「ごめん。きらりちゃんは別の方法で逃げてね。ここは私が責任を持って警備しとくから」
この人妙に名台詞っぽい事を言っているのが、私を置いて1人で逃げている事に変わりはないですからね。しかも説明書には一回使った避難場所は使えないと書かれていたはず。く~、ここは逃げなければ! まだダメージを負いたくないの。私はこの配信で皆に有能なところを見せてあげるんだからね。
「ちょっと何を警備するのか全く分かりませんけどー。私を1人にするとか鬼だー!」
「ほらほら逃げないとやられちゃうって。行った行った」
「くぅ……。何で私が」
私は全く押し入れから出てこないつばきちゃんに少し腹を立てながらも、急ぎ部屋を出て逃げる。すぐ近くにのっぺらぼうの悪霊が追いついて来ていた。
やばい、とにかく逃げなきゃやられちゃう。一度石垣の中庭を通る事にして悪霊を一旦まく事にした。ぐるりと一周してまた屋敷内に入り二階まで逃げると、もう追いかけてくる悪霊の姿はなかった。
ふぅ……。どうにかやられる事なく逃げおおせたわ。初っ端から私が足を引っ張られるとか、恥ずかしくてチャットなんか見れなくなるじゃないのよ。
チャットも、『よく逃げれたじゃん』、『きらりちゃん危機一髪だったね』と、褒めてくれる。
「大丈夫だった、きらりちゃん?」
呑気な様子で聞くつばきちゃんは押し入れから出て探索しているようだった。ゲーム画面右上のマップにつばきちゃんが動かすキャラの丸い点が動いている。しかしマップのには悪霊は映らないので、いつ出現するかまではわからないのよね。
「どうにかまいたけど、酷いよつばきちゃん。完全に私を囮にしてたでしょ」
「でもそのおかげで、4枚目のお札を庭で見つけたから」
「私が逃げてる間に見つけてたのかい!」
それでも私は逃げ切れた事、4枚目を取れた事実、まだダメージも受けないでいるのが素直に嬉しい。そのせいか少し油断していて、チャット欄には『来てる、来てる』とか『音がしてるよ』とか『逃げて!』と見て気付くのに完全に遅れていた。
不意にずりずりと音がしたと思う。気付いた時にはいきなり壁をすり抜けて、真横に巨大な目玉に手足が生えた悪霊が私を掴み攻撃してきていた。
「にゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「にゃあって急に猫?」
「出た出た! 目玉が目玉が!」
私はダメージを負ったが、攻撃し終えたら目玉は止まってままだったなので、その勢いでその場から逃げる。私の驚きとは裏腹に、チャット欄は皆嬉しそうに騒いで、『にゃぁぁぁぁぁぁ!』の連投が忙しく書かれていく。
「きらりちゃん無事?」
「無事じゃないよぉ。つばきちゃ~ん。一度やられちゃったんだから私もうピンチだよ」
やけに冷静なつばきちゃんの声を聞いて、「にゃぁ!」と騒いだ事に恥ずかしくなり、頬が赤く染まる。そして兄が絶対このシーンを切り抜くだろうと思うと少し悔しい気持ちも出て、余計に顔が火照ってしまう。
こんなつもりじゃなかったんだけどなぁ……。
私は目玉から完全に逃げ切り気持ちを落ち着かせる。このまま1人だとまた敵に捕まれそうになるのではと不安になる。ここは協力していくべきよ。私1人だけゲームオーバーになるのは恥ずかしすぎるでしょ!
そこで私は一緒に行動する事を提案することにした。
「ねぇ、つばきちゃん。そろそろ一緒に探索しない?」
「うーん、確かにそろそろ一緒に行動した方が良いかもね、よし合流しよう。じゃあそっちに行くよーん」
「じゃあ二階の段上がった所で待ってるよ」
私はつばきちゃんと合流するために階段の傍で待機することにする。周囲を見渡しても、のっぺらぼうも、目玉の悪霊も見た様子だといない。完全に今は安全ね。
待っている間に近くの柱がとても分かりやすく光っているのに気付いた。近寄るとお札が不意に出現してきた。どうやら時間と共に出てくる仕組みみたいね。ちょっと意味の分からない仕様だけど、気にしても仕方ないわね。
「良くわからないけど、柱からお札がいきなり出てきたよ。これで5枚目だね」
「やるじゃん。もうすぐそっちに着くから」
つばきちゃんが言うが早いか、もうすでに階段を上って来ていた。
「おまった~。雷桜つばきが来ましたよ~」
つばきちゃんがやけに声音が嬉しそうに言ってきた。しかしその後ろからのっぺらぼうと、目玉の悪霊の二体を引き連れて、呼んでもいない者達まで合流しようとして来るじゃないの!
道理で私の周りにいないわけじゃん!
「来ちゃったって、お前達まで呼んでないわー!」
私はいつもの挨拶をして頭のスイッチを切り替える。今日は長い一日になりそう。気合いを入れた挨拶で私達のコラボ配信が始まった。
「今日は予告した通り、私が初めてコラボする相手、なんと、雷桜つばきちゃんが来てまーす!」
「皆さま、こんつばー。今日は呼んでくれてサンキューな、きらりちゃん」
「と言っておりますが、つばきちゃんから誘ってきたんですけどねー」
「あははっ! まぁそうなんだけどね」
配信画面の視聴者数は開始した途端に、いつもよりぐんぐん増えていくのを私は確認する。やっぱりコラボ相手のつばきちゃんの視聴者さんも来ているみたい。
「えー、今日はですね。私の苦手なホラゲーをプレイしていきます」
「苦手なゲームをやるとはきらりちゃん頑張るねぇ~」
つばきちゃんがちょっと煽り気味に言ってくるけど、私も言い返してやる。
「だからやろうってそっちが言ったの忘れてないよ私」
「あれ、そうだったっけ?」
軽くつばきちゃんの事を流して、配信を進めなくちゃね。
「それはさて置き、ゲームを始めますね。みんな音は大丈夫かな」
今日プレイするゲーム、【missing ~死霊の館~】を起動させる。配信画面のチャット欄のメッセージには、音声が少し小さいと書かれたので、私は音声ミキサーを調整する。
「置かれた私も調整しますよっと」
「音声とBGM大丈夫かな。これで良い?」
チャットには『おk』とか、『大丈夫』と反応が返ってくる。どうやらこれで大丈夫みたい。私はパソコンの音量調整を終えて、問題がない事に安堵する。
「私の声も大丈夫みたいだね」
つばきちゃんの方の音声も問題ない事を確認して、私達はゲームをスタートした。ホラゲーは苦手だけど、足手まといにならないようにしないと。
「それじゃやっていきましょー!」
私は再度気合いを入れる。
「一発でクリアするよん」
オンライン協力型の脱出ホラーゲーム。タイトルは【missing ~死霊の館~】
プレイヤーが密室の屋敷に閉じ込められ、そこから脱出する事を目標としたFPSの作品。
脱出するには屋敷に隠された10枚のお札を全て回収しなければならない。そして時間が経てば悪霊が順番に増えて襲い掛かってくる。プレイヤーは悪霊から2回ダメージを負えばダウンし、そして操作不能になる。
しかしフレンドが互いに一度だけ助け起こして復活させる事ができ、一回だけ行動可能となる。それでも全員ダウンすればゲームオーバー。そして二人のプレイヤーが同時にダウンした時もゲームオーバーとなる。それが今回コラボでやるゲームの説明書に書かれていた内容よ。
説明書を見ながら話してた時、つばきちゃんから聞いた話だと難しいゲームらしいの。
出てくる悪霊のタイプは3種類で、特性がそれぞれ違ってくるらしいのよね。どんな特性かは当然記載されていないけど、とにかくプレイしてみて臨機応変に協力する事が大事なゲームっぽい。
私たち2人の操作するキャラクターは暗がりの屋敷の外に出てきた。すぐ目の前にはおどろおどろしい屋敷の扉が半開き状態で開いている。
「うわ~、いかにも何かいますよって感じだね……」
結構な臨場感に少し私の気持ちが後ろ向きになってしまう。
「そりゃ、ホラゲーだからね。さぁさぁ、中に入って行こ」
「つばきちゃん先に行ってほしいな。私は後ろから付いていくから」
「きらりちゃんビビり過ぎでしょ。まだ始まったばかりなのに」
私の動かすキャラはへっぴり腰で、つばきちゃんの後ろを付かず離れずの距離で進んでいく。扉の中に入ると中は薄暗く、壁には松明とロウソクが灯されている。そこで私達は初期装備として持っている懐中電灯を使って進むことにする。
これで前方はだいぶ明るくなり、私は少しビビっていたのが解ける。
Liveを見てくれている視聴者さんからは、『ビビりすぎだよー』とか、『これは音量注意必須』とか書かれている。私はかなりビビっていると思われているらしい。これはちょっと言っておかねばならない。まぁ、正直ビビッてるんですけどね。
「いやー、武者震いだから。これはそう武者震い。全然ビビってないし~」
「おー? なら先に二階に行って進んでよ」
つばきちゃんの発言で、視聴者さん達も行こう行こうと煽ってくる。
「うぅ…、まぁ、そこまで皆が言うなら。ここは私が行くしかないのね」
私は気持ちを奮い立たせ、薄暗い階段を上って行き二階に出たみたい。後ろからつばきちゃんのキャラも来てくれている。問題ないはずよ。まだ悪霊は出てきていないし。そのまま近くの和室に入り私は机を調べると、1枚目のお札を早速発見と。よしよし、いい感じ!
「つばきちゃん、1枚目のお札ゲットだよ」
「最初の1枚目だね。この調子でどんどん札を見つけよう。と言う事で一旦別々で行動してお札を探そうか」
「え? だめだめ、2人で行動しようよ」
しかしチャット欄も『別行動がいいよ』、『効率的にそうした方が良いよね』など書かれてくる。明らかに私の1人行動をみんな期待しているのね。よっぽど私がやられるのを期待しているとは。でもそうは行かないわ。そう簡単にやられてたまるもんですかっての!
という訳で私は渋々了承した。
「はぁ~。わかったよぉ」
「決まり。じゃあ私はこのまま二階を探索するから、きらりちゃんは一階の方をお願いね」
つばきちゃんが探索の指示をさくさく決めていく。
「ゲームオーバーしても知らないからね、もうっ」
「大丈夫だって。きらりちゃんがいなくても私がクリアしてあげるから」
初コラボでそんな恥ずかしい事になったら私普通に恥ずかしすぎるんですけど!
「それ動画だったら没になるやつだから、マジ勘弁」
私は一階へ降りるため階段を下って行く。するとすぐにつばきちゃんから報告が来た。
「お札2枚目見つけた。あと8枚だね」
「このまま何事もなく終わると良いけど」
「あははは。それホラーゲームとしてどうなのさ。でも逆にむしろやってみたいけど。散々音で出そう出そうってなって最後まで何もないとか笑えるじゃん」
確かに自分から終わってほしいって言ったけど。それホラーゲームじゃなくなってるけどね、つばきちゃん。
そんな感じで向こうは気楽な口調でプレイしているようで、全く怖がっている様子がないみたい。
だが私は油断してはならないと思う。まだ悪霊が出て来ていないのだから。一階の渡り廊下を慎重に進む。気が付くと足元にお札があった。このまますぐクリア出来るのではと、安易に思ってしまうくらいに楽に発見出来た。これはもしかしたら案外苦労せずにクリア出来たりするかも?
「こっちも3枚目見つけたよ。順調順調」
私が3枚目を見つけて上機嫌だったけど、ついに悪霊が出たらしい。
「いいねー。うわっ、なにあいつ。追っかけてきた。のっぺらぼうって奴?」
「悪霊出たの!? 絶対こっちには来ないでね!」
「あ、ごめん。今そっちに逃げてるかもー」
気付けば私の後ろにつばきちゃんのキャラが私に向かってくる。その背後からそこまで早くないが、確実にのっぺらぼうが追いかけて来ている。いやいや、何来てるの、つばきさん?
「こっちに来ないでって言ったじゃん。つばきちゃんわざと来てるでしょ!」
「来ないでって言われたら、行きたくなるじゃーん」
チャットも『つばきちゃん有能』とか、『さすつば』とか書かれているが、いい迷惑よ、もうっ。
つばきちゃんは笑いながら私の方に向かって追いかけてくる。私達は一旦近くの和室に入り、押し入れの中に隠れる事にしようとしたが、中に隠れる事が可能なのが1人らしく、つばきちゃんが入ってしまう。
明らかに2人は入れると思ったが、1人しか無理みたい。仕様なのか1人しか入れないとか、ふざけてるわ。作者の悪意を私はひしひしと感じる。ムカついてつい、一旦水分を取る。うーん、お茶が美味しい。
「ごめん。きらりちゃんは別の方法で逃げてね。ここは私が責任を持って警備しとくから」
この人妙に名台詞っぽい事を言っているのが、私を置いて1人で逃げている事に変わりはないですからね。しかも説明書には一回使った避難場所は使えないと書かれていたはず。く~、ここは逃げなければ! まだダメージを負いたくないの。私はこの配信で皆に有能なところを見せてあげるんだからね。
「ちょっと何を警備するのか全く分かりませんけどー。私を1人にするとか鬼だー!」
「ほらほら逃げないとやられちゃうって。行った行った」
「くぅ……。何で私が」
私は全く押し入れから出てこないつばきちゃんに少し腹を立てながらも、急ぎ部屋を出て逃げる。すぐ近くにのっぺらぼうの悪霊が追いついて来ていた。
やばい、とにかく逃げなきゃやられちゃう。一度石垣の中庭を通る事にして悪霊を一旦まく事にした。ぐるりと一周してまた屋敷内に入り二階まで逃げると、もう追いかけてくる悪霊の姿はなかった。
ふぅ……。どうにかやられる事なく逃げおおせたわ。初っ端から私が足を引っ張られるとか、恥ずかしくてチャットなんか見れなくなるじゃないのよ。
チャットも、『よく逃げれたじゃん』、『きらりちゃん危機一髪だったね』と、褒めてくれる。
「大丈夫だった、きらりちゃん?」
呑気な様子で聞くつばきちゃんは押し入れから出て探索しているようだった。ゲーム画面右上のマップにつばきちゃんが動かすキャラの丸い点が動いている。しかしマップのには悪霊は映らないので、いつ出現するかまではわからないのよね。
「どうにかまいたけど、酷いよつばきちゃん。完全に私を囮にしてたでしょ」
「でもそのおかげで、4枚目のお札を庭で見つけたから」
「私が逃げてる間に見つけてたのかい!」
それでも私は逃げ切れた事、4枚目を取れた事実、まだダメージも受けないでいるのが素直に嬉しい。そのせいか少し油断していて、チャット欄には『来てる、来てる』とか『音がしてるよ』とか『逃げて!』と見て気付くのに完全に遅れていた。
不意にずりずりと音がしたと思う。気付いた時にはいきなり壁をすり抜けて、真横に巨大な目玉に手足が生えた悪霊が私を掴み攻撃してきていた。
「にゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「にゃあって急に猫?」
「出た出た! 目玉が目玉が!」
私はダメージを負ったが、攻撃し終えたら目玉は止まってままだったなので、その勢いでその場から逃げる。私の驚きとは裏腹に、チャット欄は皆嬉しそうに騒いで、『にゃぁぁぁぁぁぁ!』の連投が忙しく書かれていく。
「きらりちゃん無事?」
「無事じゃないよぉ。つばきちゃ~ん。一度やられちゃったんだから私もうピンチだよ」
やけに冷静なつばきちゃんの声を聞いて、「にゃぁ!」と騒いだ事に恥ずかしくなり、頬が赤く染まる。そして兄が絶対このシーンを切り抜くだろうと思うと少し悔しい気持ちも出て、余計に顔が火照ってしまう。
こんなつもりじゃなかったんだけどなぁ……。
私は目玉から完全に逃げ切り気持ちを落ち着かせる。このまま1人だとまた敵に捕まれそうになるのではと不安になる。ここは協力していくべきよ。私1人だけゲームオーバーになるのは恥ずかしすぎるでしょ!
そこで私は一緒に行動する事を提案することにした。
「ねぇ、つばきちゃん。そろそろ一緒に探索しない?」
「うーん、確かにそろそろ一緒に行動した方が良いかもね、よし合流しよう。じゃあそっちに行くよーん」
「じゃあ二階の段上がった所で待ってるよ」
私はつばきちゃんと合流するために階段の傍で待機することにする。周囲を見渡しても、のっぺらぼうも、目玉の悪霊も見た様子だといない。完全に今は安全ね。
待っている間に近くの柱がとても分かりやすく光っているのに気付いた。近寄るとお札が不意に出現してきた。どうやら時間と共に出てくる仕組みみたいね。ちょっと意味の分からない仕様だけど、気にしても仕方ないわね。
「良くわからないけど、柱からお札がいきなり出てきたよ。これで5枚目だね」
「やるじゃん。もうすぐそっちに着くから」
つばきちゃんが言うが早いか、もうすでに階段を上って来ていた。
「おまった~。雷桜つばきが来ましたよ~」
つばきちゃんがやけに声音が嬉しそうに言ってきた。しかしその後ろからのっぺらぼうと、目玉の悪霊の二体を引き連れて、呼んでもいない者達まで合流しようとして来るじゃないの!
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