生意気な妹がVTuber活動をやってるなんて、冗談だと言ってほしい!

あすぴりん

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第42話 ゲームへの出演勧誘は当然に!

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 綾那さんが2人に説明をしていく。だいたいの内容はそれぞれの、VTuber自身の設定をテーマにしたテキストADVゲームだ。

 総勢8名のVTuberがヒロイン出演するので、すみれ達3人以外も結構有名なVTuberが出演する。まぁ今時人気があるVTuberをヒロインとしたゲームで話題になって、ファンが買ってくれるかもしれないなって予想で企画は通ったらしい。人気にあやかりたいのも分かるし、コアなファンは興味を持つのは自然だ。

 もし俺が何も知らない1人のファンに過ぎなかったら、買っていただろうなぁ。まぁ完成したら、関係なく買うんだけどな。

 綾那さんが大まかな説明を終えた時、竹中は興味津々で話を聞いていて、やる気満々に見えた。しかし、どうもすみれが眉間に皺を寄せて綾那さんに質問していた。

「あの、ゲームに出演するのは私も嬉しい話なんですけど……、何と言うか」
「もしかして依怙贔屓えこひいきみたいで申し訳ないって思っているかな? その文句言うなら彩夏に言ってね。そもそもの企画はあの子が言い出した訳だしね」

 当たり前の様に姉が妹へキラーパス。やはり姉の方が存在的には上なのか、扱いが上手い。

「お姉さま、それはその通りですが、酷いですの~」

 彩夏ちゃんはちょっと肩身が狭そうに、小さく口を挟む。

「え~とまぁそれもありますが、その事はラッキーだと思って受け入れます。でもそれ以上に私はプロの声優じゃないから、下手くそな演技だと買ってくれた人に申し訳ないと言うか……」

 俯き気味にすみれが床を見つめる。確かにそうだ。素人の演技なんて見たい人はあまりいないだろう。なにせ少し前に出たゲームで炎上した作品があったからだ。

 それは偉いプロデューサーが、ちょっと巷で人気のアイドルを、これ見よがしにメインヒロインとして抜擢した。そのアイドルは声優としては、ずぶのド素人でとても演技を見れた物じゃなく、プロと並んだゲームシーンを見た時、違和感が半端なかったのだ。

 そして案の定炎上事件があり、ソフトの評価は凄惨な結果しか残らず、クソゲー認定とされたのだ。

「何かお兄さんの話以上に真面目な子なのね、すみれさんは。もっと積極的かと思ったけど。それなら夏休みの間だけでも、ボイストレーニングを彩夏含めて3人で受けてみない?」

 元からその提案をする予定だったのか、自然な流れで綾那さんが3人に提案した。

ボイストレーニングですか……?」
「確かに私達の演技だと恥ずかしいレベルかも知れないしね、すみれ」
「元々受けてもらう予定ではあったし。それに3人とも夏休みは序盤でしょ? 良かったら我が社に元プロの声優さんの社員もいるから、受けてみてはどうかしら。シナリオ等を含め、実際に収録するのは秋くらいからだし、その時はみんな冬休みだと思うから」

 先々の事を既にスケジュールとして考えている様で、秋に収録する時にはみんなの演技はしっかりと形になっていると、綾那さんは考えているのだろう。

 俺個人の贔屓が入るかも知れないが、すみれと竹中は生放送で文章を読み上げるのが、意外と上手い。まぁあくまで贔屓目での評価なのだけど。

 それでも良い線は行っていて、多分綾那さんもリサーチした上で、長くボイトレ期間を取らなくても、商業レベルに行けると踏んだのだろう。

 彩夏ちゃんに関してはちょっと未知数で、俺には判断が付かないが、それはお姉さんに任せておけば大丈夫だよな、多分。まぁそれにVTuberって事でいつも自分の話し方で良い訳だから、変に新しいキャラを作る訳じゃない。基本的な発音や、もしかしたら歌の練習とかもあるかも知れんが。

「分かりました。私そのボイトレを受けさせてもらいます!」
「もちろん、私も一緒に頑張ります。すみれに彩夏ちゃんと一緒ってのは何だかやる気が出るしね!」
「わたくしは受けなくても良いですのよね、お姉様?」

 1人シレッと受けようとしない小生意気な意見が出たが、

「あらあら、彩夏は受けなくて良いのね。伝え忘れたけど、この話をみんなが受けた時点で、実は渉君がみんなのマネージャーとして色々サポートしてくれる事になったわ。彩夏は渉君のサポートは無しと言う事で」
「お姉さま、それは殺生ですの~!」

 彩夏ちゃんがしくしくと嘘泣きをしている。

 1人嘘泣きをする彩夏ちゃんは置いといて、先ほどのマネージャーの件を伝える。車で移動している時に大体やってもらいたい事を伝えられていたからだ。

「さっきみんなが収録している間に、綾那さんと会って話したんだけど、実際に収録する日からマネージャー業をする話で。スケジュール管理の補助や体調管理のサポートをやらせてもらう事になりました」

 その話を聞いて喜ぶ人物がいるのと、ちょっと複雑な表情をする人物もいた。喜んでいるのは竹中や彩夏ちゃんで、微妙な顔をしているのは、妹のすみれなのは容易に想像できる。

「えっ、何で兄貴がそんな事をする必要があるんですか……?」

 当然質問するのだが、

「あら、すみれさんはお兄さんと一緒に活動するのが嫌なのかしら?」

 気が付くと、俺も含め竹中や彩夏ちゃんもすみれの事を見つめている。

「え? い、嫌いって訳じゃなくて、その恥ずかしいって言うかっ……」

 自分から聞いておいて、逆に質問されて少し顔を赤面させている。身内に見られるって結構恥ずかしい気持ちは分かる。しかも姉や妹ではなく、兄ともなれば恥ずかしいかも知れないな。

「別に兄貴がマネージャーでも私全然問題ないですから! だからゲームのヒロインを本気でやりますから、私!」

 いきなり声高々と宣言してきた。

「お、おおー。すごいやる気だね、すみれ」
「そうね。やる気を出してくれて嬉しいわ私も。なら東京に戻ったら早速うちの会社に来てくれるかな。住所はさっき渡した名刺に書かれてるそこだから。とにかく詳細は上野さんから連絡が行く予定よ。じゃあ私はまだ用事があるから行くけど、みんなよろしくね、これから」
「お姉さま、それではまたですの~」

 綾那さんはそれだけ伝えると、腕時計を見るなりパタパタと手荷物をまとめて玄関を出て、自分の車に乗って去って行った。

 そしてこの日を境にすみれ達3人はゲームに出演するため、ボイトレ特訓を綾那さんの会社に行き、レッスンを受ける日々が始まった。

「皆さんご夕食の用意がもうすぐ出来ますよ。今日はハンバーグとなります」

 話がまとまったのを見計らい、上野さんが夕食の話をし出したので、俺達はみんなで支度の準備を始めた。

 そして翌日飛行機で東京に戻り、どたばたとした海の旅行から帰宅したのだった。
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