39 / 46
第39話 勝利、祝勝会……そして
しおりを挟む
優勝チームの発表を聞き逃すまいと会場が静まり返る。数秒の静寂が熱気の流れを止める。
「えー、優勝チームは二年Aクラス……アニエスカ・グレゴリアス君のチームであーる」
鼓膜の震えを感じるほどの歓声が巻き起こり、私達四人は抱き合う。涙を流すシルビアとヴェロニカ。テレサに関してはドサクサに紛れて、ただ私に抱きつきたいだけだろうが。
結果は圧倒的だった。売上、利益、恒久的効果のあるプロモーション、どれをとっても他のチームとは桁違いの結果を叩き出した。悔しがる他のチームの学院生たちは運が悪かったのだ。相手が私達だったから。
、
ふとロメオが目に入る。どんな悔しい顔をしているのか気になって見つめてみると……なんだあの満足げな顔は、私達と同じ商品で惨敗してるのに。まったく意味がわからない。
ロメオと目が合ってしまった。彼は私と目が合うなり、ニヤッと口角を上げて笑いながら、サムズアップ。
「キモーっ! なんなのーーっ」
この日の夜は寿司ジョゼで祝勝会を開いた。奮発して高級食材をふんだんに仕入れてもらった。身内だけのこじんまりとした祝勝会。のはずだったのに。
「お父様! お母様! なぜここにいらっしゃるのですか?」
「優勝確実だとロベルトからの手紙で知ってな。お祝いに馳せ参じたのだよ」
「アニエスカ、おめでとう。貴女は本当に天才だわ」
チリン――
店のドアベルが鳴る。振り向くと思わぬ人たちの姿が視界に飛び込んでくる。
「アニーお嬢様だ! 優勝おめでとうです」
「おめでとうですー」
「ロザリアにナタリアまで! なんで……」
さらにもう二人。
「アニエスカお嬢様。やっぱりあなたは凄いわね」
「お嬢様! おめでとうございます」
「リタさんにアルベルトさんまで!」
シルビアたちに両親とリタたちを紹介する。
アニー・アンブレラの素材を作る生産者と企画販売をするメーカーの顔合わせは、なんかほっこりするものがある。
外貨を稼ぐために絹という特産品を作りたかった。そのためにヴァンドール領に来て学院に入学。経営術オリンピアのために集まった友人たち。その点と点が繋がって一つのか細い線となった。
やがてその線は太い綱となり、大きな利益になるのだろう。
私のやってきたことは間違いではなかったと、自分を誇らしく思えた瞬間だった。
チリン――
え? もう来る人なんて居ない居ないだろう。誰?
「アニエスカ! 優勝おめでとう!」
「き、君はロメオ殿! な、なぜここにいるんだい?」
父が狼狽える。そういえば、父とロメオが会うのは婚約破棄の時以来か。
「アニエスカ……まさか、またロメオ殿と婚約を……父……驚愕」
「ちがうわよ、コイツが勝手に付きまとってくるの」
ロメオは姿勢を正し、父の目の前で礼をする。
「お父様、先日は醜態をさらしてしまい、大変失礼しました。私ロメオは心を入れ替え、改めてアニエスカ嬢に求婚をしたいと思います!」
「「「えぇぇぇぇ」」」
「違う! 違う! 違う! 絶対ないから! ロメオ、アンタふざけないでよ!」
その後、皆が私を茶化す会になってしまった。
せっかくの祝勝会がロメオのせいで台無しになってしまったわ。まず、こんなクズ男。絶対に有り得ない。経営能力だって私の足元にも及ばないのに。
全く変な感じになってしまったが、私の心がロメオなんかに傾くことは無いだろう。
だって、私、お金以外に興味ないですからっ――
「えー、優勝チームは二年Aクラス……アニエスカ・グレゴリアス君のチームであーる」
鼓膜の震えを感じるほどの歓声が巻き起こり、私達四人は抱き合う。涙を流すシルビアとヴェロニカ。テレサに関してはドサクサに紛れて、ただ私に抱きつきたいだけだろうが。
結果は圧倒的だった。売上、利益、恒久的効果のあるプロモーション、どれをとっても他のチームとは桁違いの結果を叩き出した。悔しがる他のチームの学院生たちは運が悪かったのだ。相手が私達だったから。
、
ふとロメオが目に入る。どんな悔しい顔をしているのか気になって見つめてみると……なんだあの満足げな顔は、私達と同じ商品で惨敗してるのに。まったく意味がわからない。
ロメオと目が合ってしまった。彼は私と目が合うなり、ニヤッと口角を上げて笑いながら、サムズアップ。
「キモーっ! なんなのーーっ」
この日の夜は寿司ジョゼで祝勝会を開いた。奮発して高級食材をふんだんに仕入れてもらった。身内だけのこじんまりとした祝勝会。のはずだったのに。
「お父様! お母様! なぜここにいらっしゃるのですか?」
「優勝確実だとロベルトからの手紙で知ってな。お祝いに馳せ参じたのだよ」
「アニエスカ、おめでとう。貴女は本当に天才だわ」
チリン――
店のドアベルが鳴る。振り向くと思わぬ人たちの姿が視界に飛び込んでくる。
「アニーお嬢様だ! 優勝おめでとうです」
「おめでとうですー」
「ロザリアにナタリアまで! なんで……」
さらにもう二人。
「アニエスカお嬢様。やっぱりあなたは凄いわね」
「お嬢様! おめでとうございます」
「リタさんにアルベルトさんまで!」
シルビアたちに両親とリタたちを紹介する。
アニー・アンブレラの素材を作る生産者と企画販売をするメーカーの顔合わせは、なんかほっこりするものがある。
外貨を稼ぐために絹という特産品を作りたかった。そのためにヴァンドール領に来て学院に入学。経営術オリンピアのために集まった友人たち。その点と点が繋がって一つのか細い線となった。
やがてその線は太い綱となり、大きな利益になるのだろう。
私のやってきたことは間違いではなかったと、自分を誇らしく思えた瞬間だった。
チリン――
え? もう来る人なんて居ない居ないだろう。誰?
「アニエスカ! 優勝おめでとう!」
「き、君はロメオ殿! な、なぜここにいるんだい?」
父が狼狽える。そういえば、父とロメオが会うのは婚約破棄の時以来か。
「アニエスカ……まさか、またロメオ殿と婚約を……父……驚愕」
「ちがうわよ、コイツが勝手に付きまとってくるの」
ロメオは姿勢を正し、父の目の前で礼をする。
「お父様、先日は醜態をさらしてしまい、大変失礼しました。私ロメオは心を入れ替え、改めてアニエスカ嬢に求婚をしたいと思います!」
「「「えぇぇぇぇ」」」
「違う! 違う! 違う! 絶対ないから! ロメオ、アンタふざけないでよ!」
その後、皆が私を茶化す会になってしまった。
せっかくの祝勝会がロメオのせいで台無しになってしまったわ。まず、こんなクズ男。絶対に有り得ない。経営能力だって私の足元にも及ばないのに。
全く変な感じになってしまったが、私の心がロメオなんかに傾くことは無いだろう。
だって、私、お金以外に興味ないですからっ――
518
あなたにおすすめの小説
「君は悪役令嬢だ」と離婚されたけど、追放先で伝説の力をゲット!最強の女王になって国を建てたら、後悔した元夫が求婚してきました
黒崎隼人
ファンタジー
「君は悪役令嬢だ」――冷酷な皇太子だった夫から一方的に離婚を告げられ、すべての地位と財産を奪われたアリシア。悪役の汚名を着せられ、魔物がはびこる辺境の地へ追放された彼女が見つけたのは、古代文明の遺跡と自らが「失われた王家の末裔」であるという衝撃の真実だった。
古代魔法の力に覚醒し、心優しき領民たちと共に荒れ地を切り拓くアリシア。
一方、彼女を陥れた偽りの聖女の陰謀に気づき始めた元夫は、後悔と焦燥に駆られていく。
追放された令嬢が運命に抗い、最強の女王へと成り上がる。
愛と裏切り、そして再生の痛快逆転ファンタジー、ここに開幕!
伯爵令嬢の秘密の知識
シマセイ
ファンタジー
16歳の女子高生 佐藤美咲は、神のミスで交通事故に巻き込まれて死んでしまう。異世界のグランディア王国ルナリス伯爵家のミアとして転生し、前世の記憶と知識チートを授かる。魔法と魔道具を秘密裏に研究しつつ、科学と魔法を融合させた夢を追い、小さな一歩を踏み出す。
毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。
克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。
どうやらお前、死んだらしいぞ? ~変わり者令嬢は父親に報復する~
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「ビクティー・シークランドは、どうやら死んでしまったらしいぞ?」
「はぁ? 殿下、アンタついに頭沸いた?」
私は思わずそう言った。
だって仕方がないじゃない、普通にビックリしたんだから。
***
私、ビクティー・シークランドは少し変わった令嬢だ。
お世辞にも淑女然としているとは言えず、男が好む政治事に興味を持ってる。
だから父からも煙たがられているのは自覚があった。
しかしある日、殺されそうになった事で彼女は決める。
「必ず仕返ししてやろう」って。
そんな令嬢の人望と理性に支えられた大勝負をご覧あれ。
婚約破棄? 私、この国の守護神ですが。
國樹田 樹
恋愛
王宮の舞踏会場にて婚約破棄を宣言された公爵令嬢・メリザンド=デラクロワ。
声高に断罪を叫ぶ王太子を前に、彼女は余裕の笑みを湛えていた。
愚かな男―――否、愚かな人間に、女神は鉄槌を下す。
古の盟約に縛られた一人の『女性』を巡る、悲恋と未来のお話。
よくある感じのざまぁ物語です。
ふんわり設定。ゆるーくお読みください。
悪役令嬢、休職致します
碧井 汐桜香
ファンタジー
そのキツい目つきと高飛車な言動から悪役令嬢として中傷されるサーシャ・ツンドール公爵令嬢。王太子殿下の婚約者候補として、他の婚約者候補の妨害をするように父に言われて、実行しているのも一因だろう。
しかし、ある日突然身体が動かなくなり、母のいる領地で療養することに。
作中、主人公が精神を病む描写があります。ご注意ください。
作品内に登場する医療行為や病気、治療などは創作です。作者は医療従事者ではありません。実際の症状や治療に関する判断は、必ず医師など専門家にご相談ください。
役立たずと追放された辺境令嬢、前世の民俗学知識で忘れられた神々を祀り上げたら、いつの間にか『神託の巫女』と呼ばれ救国の英雄になっていました
☆ほしい
ファンタジー
貧しい辺境伯の三女として生まれたリゼット。魔力も持たず、華やかさもない彼女は、王都の社交界で「出来損ない」と嘲笑われ、挙句の果てには食い扶持減らしのために辺境のさらに奥地、忘れられた土地へと追いやられてしまう。
しかし、彼女には秘密があった。前世は、地方の伝承や風習を研究する地味な民俗学者だったのだ。
誰も見向きもしない古びた祠、意味不明とされる奇妙な祭り、ガラクタ扱いの古文書。それらが、失われた古代の技術や強力な神々の加護を得るための重要な儀式であることを、リゼットの知識は見抜いてしまう。
「この石ころ、古代の神様への捧げものだったんだ。あっちの変な踊りは、雨乞いの儀式の簡略化された形……!」
ただ、前世の知識欲と少しでもマシな食生活への渇望から、忘れられた神々を祀り、古の儀式を復活させていくだけだったのに。寂れた土地はみるみる豊かになり、枯れた泉からは水が湧き、なぜかリゼットの言葉は神託として扱われるようになってしまった。
本人は美味しい干し肉と温かいスープが手に入れば満足なのに、周囲の勘違いは加速していく。
貧乏奨学生の子爵令嬢は、特許で稼ぐ夢を見る 〜レイシアは、今日も我が道つき進む!~
みちのあかり
ファンタジー
同じゼミに通う王子から、ありえないプロポーズを受ける貧乏奨学生のレイシア。
何でこんなことに? レイシアは今までの生き方を振り返り始めた。
第一部(領地でスローライフ)
5歳の誕生日。お父様とお母様にお祝いされ、教会で祝福を受ける。教会で孤児と一緒に勉強をはじめるレイシアは、その才能が開花し非常に優秀に育っていく。お母様が里帰り出産。生まれてくる弟のために、料理やメイド仕事を覚えようと必死に頑張るレイシア。
お母様も戻り、家族で幸せな生活を送るレイシア。
しかし、未曽有の災害が起こり、領地は借金を負うことに。
貧乏でも明るく生きるレイシアの、ハートフルコメディ。
第二部(学園無双)
貧乏なため、奨学生として貴族が通う学園に入学したレイシア。
貴族としての進学は奨学生では無理? 平民に落ちても生きていけるコースを選ぶ。
だが、様々な思惑により貴族のコースも受けなければいけないレイシア。お金持ちの貴族の女子には嫌われ相手にされない。
そんなことは気にもせず、お金儲け、特許取得を目指すレイシア。
ところが、いきなり王子からプロポーズを受け・・・
学園無双の痛快コメディ
カクヨムで240万PV頂いています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる