社畜リーマンが乙女ゲームに異世界転生した件 ~嫁がいるので意地でも現実世界に帰ります~

琥珀あひる

文字の大きさ
88 / 156
第八章 学園懇親会

087 対立

しおりを挟む
 登校日第一週の平日最終日。王室付属サルンアフィア学園では、生徒会とノルト=クラウディス公爵令嬢の「共催」による、初めての『学園懇親会』が開催されることになった。闘技場で開会式が行われ、まず最近生徒会長に就任したティアハート・アークケネッシュが挨拶に立ち、『学園懇親会』の趣旨説明を行った。

「・・・・・今回初めて行われます『学園懇親会』は、生徒の皆さんがこの学園で新しい縦の繋がり、新しい横の繋がりを生み出す好機になればとの思いから初めて開催されることになりました」
「開催にあたりましては王都トラニアスの店主の皆様、各ギルドの皆様、そしてノルト=クラウディス公爵令嬢の御助力を得たことを申し添えておきたいと思います」

 会場からは拍手が起こった。アークケネッシュが生徒会長で良かった。トーリスだったら絶対にやらかして邪魔をするに決まっているからなぁ。そんな事を思っているとノルト=クラウディス公爵令嬢クリスティーナが挨拶に立った。

「・・・・・生徒の皆さんが身分や立場、学年や性別に囚われず、同じ学園、一つの学園に通っている機会を活かすため、交流できる機会が持つことができればと思いから、この『学園懇親会』が企画されました」

 会場からどよめきが起こる。まさか学園序列二位、宰相家でもある名門貴族の令嬢からそんな言葉が発せられるとは、思ってもなかったからだ。凛として立つクリスのその風格、オーラは遠巻きに見ている俺にも伝わってくる。

「この『学園懇親会』のに係る費用に関しましては、私とこの趣旨に賛同していただいた方とで出資しました基金から拠出しております。皆様、今日一日存分に交流下さいませ」

 挨拶が終わると大きな拍手に包まれた。言うべきことをハッキリ言うよな、クリスは。カネの出所を最初に明らかにすることで、話に尾ひれがつかないようにした。この辺り、やはりセンスがある。アークケネッシュが開会を宣言すると、闘技場の客席で席を温めていた生徒たちは、それぞれの目当ての場所に散っていった。

 闘技場を出ようとすると、レティとニアミスした。

「おう、レティ!」

 そう声をかけると、レティの反応がいつもと違う。いつもだったら前を向いてモノを言うのに、今日は俯きながら「ええ」と小声で返してくる。らしくない。どうしたんだ?

「どうしたんだ、レティ」

「いえ、この前の・・・・・」

 ああ、二人で飲んだ時の話か。あの時は勝手に当たるようなマネをして、レティには本当に申し訳ないことをしてしまった。

「ごめんな、レティ」

「いえ、そうじゃないの。何となく顔が合わせづらかったから・・・・・」

 いつもの溌剌としたレティじゃない。何処か頼りない感じがする。俺のせいだったら尚更申し訳ない。

「本当に申し訳ない事をしたな。レティ」

「グレンは正直でいいわね」

 そうか? そんなに正直でもないと思うが・・・・・

「もう話ができないかと思っちゃったわ」

「それはないよ。俺とレティの仲じゃないか」

「ありがとう、グレン」

 レティも少し元気が出てきたようだ。俺はレティに一つ、頼み事をした。

「もし良かったらアイリの事を頼む」

「グレンはどうするの」

「いや、ちょっとな」

 レティには学園懇親会を請け負ってるリサやウィルゴットとのやり取りがあるから、と事情を説明する。するとレティは「分かったわ」と快諾してくれたので、俺はまた三人で食事しようと約束して別れた。レティとアイリが組んでいる限り、あいつも簡単には手出しはできないだろう。

 俺は途中、アーサーを見つけると「一緒に行こうぜ」と引き込んでグラウンドへと繰り出した。昨日の屋台の偵察で見つけたもので、そのときに是非アーサーに食わせてやりたいと思ったものがあったからである。

「おい、なんだこれは?」

 アーサーがそれを見ると少し戸惑っていた。長い金串で刺した肉を炭火で焼いたもの。そうバーベキューである。エレノ世界で見なかったこれが、どうして屋台にあるのかは不思議だが、エレノ製作者が設定でこのタイミングで出るように入れ込んでいたのだろう。上質の肉を使った厚みのある牛串だ。

「おい、アーサー。肉だ。好きだろう。食べてみろ」

 客がいない状態だったので、俺は六本もらった。学園懇親会では、頼んだ品物の費用は一切かからない。現実世界じゃ感涙モノで長蛇の列のはず。俺は牛串を手に入れると、アーサーに向かってこう食べるのだ、と見せつけるようにかぶりつく。するとアーサーの方も意を決したのか、思いっきり牛串にかぶりついた。

「どうだ?」

「・・・・・。うめえじゃねえか!」

「だろ」

 俺らのやり取りを見ていたからだろうか。牛串の屋台には次々と人が集まり、気がつけば行列ができていた。みんな興味があったのだろうが、様子見をしていたのだろう。俺はアーサーと共に残りの牛串を堪能した。

(懐かしいなぁ)

 ビンゴゲームといい、この牛串といい、現実世界で見たものがこのエレノ世界で見られるというのは本当に不思議な気分だ。ここと向こうが繋がっているとの思いを強くさせる。俺にとってはあっちとこっちの垣根を取っ払われているような感覚だ。

「中庭にも屋台が出ているらしいな」

 アーサーがそこも行こうというので、中庭に向かって歩いていると、ケバケバしい化粧をした、金髪の女子生徒がいた。

(コルレッツだな、あれ)

 よく見ると、その斜め前には群青の髪の毛が見える。あれは正嫡殿下アルフレッドだ。左右には従者フリックとエディスの後ろ姿も見えた。コルレッツは後背から正嫡殿下の一行に近づこうとしていた。

「おいっ!」

 アーサーが軽く頭を縦に振り、肘で俺を小突いた。俺が誘った意図をアーサーは最初から分かっていたようだ。

「行こうぜ」

「ああ」

 俺はアーサーに先導される形でコルレッツの斜め後ろから早歩きで迫った。そして正嫡殿下の一行が進む方角を変えたので、同じくコルレッツも向きを変える。そのタイミングで俺たちは追いつき、コルレッツの前面に躍り出て、その目の前に立ち塞がった。

「なっ!」

 足を止めたコルレッツは、俺たちのいきなりの登場に驚いたようだ。俺もアーサーも言葉を発さない。俺はポケットに手を突っ込み、上から目線で厚化粧の女を見下ろした。

「なによ! 邪魔じゃない!」

 耳障りな甲高い声を発するコルレッツに俺は言葉を発した。

「何を慌てているんだ。ジャック・・・・・コルレッツ」

 すると一瞬でコルレッツの顔色が変わった。厚化粧をしていても狼狽している様がよく分かる。

「な、なんで・・・・・」

「どうしたんだ、ジャック・・・・・コルレッツ」

 俺は迫るように尋ねた。アーサーは黙って俺たちのやり取りを見ている。周辺には幾人かの生徒が異変に気づき、俺たちの方を見ている。しかしそんなものは今は無視だ。

「どうしてジャック・・・・・コルレッツが、ジャンヌ・・・・・コルレッツに化けたんだろうなぁ」

 俺が更に迫ると、今度は性悪そうな顔で俺は睨みつけてきた。

「な、なによ! 何いってんの! 頭おかしいんじゃない!」

「頭がおかしいのはお前の方だ! モブ外の分際で、逆ハーレムなんか目指してんじゃねえよ!」

 コルレッツが硬直した。図星だったようである。やはりそうだ。コイツは俺と同じ現実世界から来た人間。しかもリアルエレノで逆ハーレムを実現しようと考えている、本当にタチの悪い、イカれた奴だ。

「な、なに言ってんのよ。意味分かんない!」

「正嫡殿下、剣豪騎士、正嫡従者」

「あ・・・・・・・」

「それとも天才魔道士、悪役令息、魔術教師か?」

 横のアーサーはポカーンとしている。もう俺が何を言ってるのかサッパリだろう。だが別に構わない。今、重要なのは目の前にいるコルレッツを締め上げることだ。

「・・・・・だから何。アンタには関係ないでしょ。もう放っといてよ!」

 逃げようとするコルレッツの進路を予想し、俺の身でその道を塞いでやった。

「な!」

 コルレッツがたじろいでる。

「おい、商人風情が何してんだよ!」

 そのとき俺の背後からトーンの高い男の声がした。誰だと思って振り向くと、なんと攻略対象者だった。

「リ、ンゼイ・・・・・」

 俺に声をかけてきたのは悪役令息リンゼイだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…

美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。 ※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。 ※イラストはAI生成です

男が少ない世界に転生して

美鈴
ファンタジー
※よりよいものにする為に改稿する事にしました!どうかお付き合い下さいますと幸いです! 旧稿版も一応残しておきますがあのままいくと当初のプロットよりも大幅におかしくなりましたのですいませんが宜しくお願いします! 交通事故に合い意識がどんどん遠くなっていく1人の男性。次に意識が戻った時は病院?前世の一部の記憶はあるが自分に関する事は全て忘れた男が転生したのは男女比が異なる世界。彼はどの様にこの世界で生きていくのだろうか?それはまだ誰も知らないお話。

男:女=1:10000の世界に来た記憶が無いけど生きる俺

マオセン
ファンタジー
突然公園で目覚めた青年「優心」は身辺状況の記憶をすべて忘れていた。分かるのは自分の名前と剣道の経験、常識くらいだった。 その公園を通りすがった「七瀬 椿」に話しかけてからこの物語は幕を開ける。 彼は何も記憶が無い状態で男女比が圧倒的な世界を生き抜けることができるのか。 そして....彼の身体は大丈夫なのか!?

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

処理中です...