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本当のいじめ
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私が追いつくと榊原くんは柚葉さんに声をかけてるところだった。
「1つ、聞きたいことが」
「なに?さっきのお友達の所に戻らなくていいの?」
「なんで、いつもそんな態度なの?」
「はぁ?」
「俺は、紫音さんに無理やりやらされてるのを知ってる。
本当は、柚葉さんが優しい人だって事を俺は知ってる」
私は2人の邪魔をしないように電信柱の影に隠れながら話を聞く。
「優しい?私が?なんの根拠で」
「だって、俺が転校してきた時、1人浮いてた俺にちょっかいかけてくれたから…」
「はっ、それの何が優しいのよ。
優しいと言えばさっきの柊さん、だっけ?
あの人の方が優しいでしょ」
「うん、あの人は親以外でこんな俺に寄り添って、優しくしてくれた人。
感謝してもしきれない」
「だったら、私よりあの人と喋んなよ。
あんたをいじめてた私なんかより」
「ううん、柚葉さんはいじめてたんじゃない。
いじめをさせられてた、違いますか」
2人の会話しか聞こえない私には何が起こってるのか分からない。
ただ榊原くんが柚葉さんに何かを伝えようとしていて、柚葉さんは榊原くんから離れようとしている事は分かる。
「なんでそう思う訳?
あんたに初めてちょっかいかけたからってそんな」
「俺、聞いたんです。
柚葉さんが紫音さんにもう辞めたいって言ってるの」
「っ!…
いつなの?」
「中学3年になった時、俺は教室に忘れ物を取りに戻った時、
柚葉さんが紫音さんに『もう榊原をいじめんのは辞めにしよって。
最後の1年、榊原には普通の学生生活を送って欲しい』って。
そしたら紫音さんは柚葉さんに怒鳴った声で前にいじめられてた柚葉さんの幼なじみを虐めるのに戻すって。
そして柚葉さん、あなたもいじめの対象にすると」
「知ってて、いじめられてたって事?」
「うん、その幼なじみは人と話すのが苦手な人で、そこに紫音さんは面白がっていじめの対象にした。
噂ですが聞きました。
その幼なじみへのいじめを辞める変わりに、紫音さんのグループに入って言うことを聞く。そういう条件で」
「なんで?」
「はい?」
「なんでそこまで知ってて何も言わなかったの!!」
突然、柚葉さんが叫ぶように言った。
その声は数回こだまするほど。
「俺なんかが何を言ってもどうもならないと思ったから。
学校に言ったってどうせ話し合いの場を持ちかける。
そんなのは意味がないって思ったから。
そうじゃないといじめなんて存在しない」
「じゃあ、あんたは私を、あいつを庇うために私の、あいつのいじめを受け続けたってこと?」
「そう、なりますね」
「ははっ、そっか、全部知ったうえで…」
『パン』
と叩く音が響き渡る。
私はこっそり見る柚葉さんが榊原くんの頬に平手打ちをしていた。
「それを言って感謝されるとでも思った?
私がありがとうと言うとでも?
私はあんたに酷いことを!」
「違う、柚葉さんは優しかった。
教科書を隠されたこともあった。
本当のいじめなら切り裂いたり破ったり、どこかで捨てることもできた。
上靴を隠された事もあった、でもそれは分かりやすいとこにあった、本当のいじめなら分かりにくいところに隠す。
他にも色々。
やろうと思えばできる。
本当にしたいのならそうする。そうしなかった時点で柚葉さんは優しいことが分かる。
さっきだって紫音さんには言わないって、
もうあんな目に合わせないようにしたってことじゃ」
「私は、いじめが嫌いなだけ、それをする側も、強制する側も、見て見ぬふりする側も…
別にあんたのためにやった訳じゃないから…」
「うん、わかってる」
「あと、ごめんね。ずっとずっと辛い思いさせて。
中学の卒業式に謝りたかったけど中々喋れなかったし
高校に上がったら謝ろうとしたけど、もうどこかに行ったって噂聞いて…」
「大丈夫、本当にいじめにあってたのは柚葉さんでしょ?」
「でも、これは私個人の気持ちの問題だから…
てかさっきから思ってたんだけど、
バレてるからね?柊さん」
見られる前に隠れたのにどうして?
そう思いながら電信柱の影から出る。
「髪の毛ちらちら見えてたから…」
「そう、ですか」
「まぁ紫音が今どこで何をしてるか私にも分かんないんだどね」
「高校一緒なんじゃあ」
「そうなんだけど、途中で退学なってさ、
それから音沙汰なし。
私にもあいつも榊原にも、もうなんもしてこないと思う」
「退学!?なんでですか?」
「あら、柊さんも興味ある感じ?」
「あいや、すみませんつい」
思わず声が出てしまった。
「理由としては高校でも相変わらずのいじめをやらせててさ、
いじめをやらせてた人がなんとまぁ教育委員会のお偉いさんの子供だった訳。
それでいじめがバレて速退学、それから数ヶ月は連絡取れてたんだけど急に連絡取れなくなって、家に行っても空き家になってるし。どこで何やってんのか…会いたくもないけど」
「まぁ、悪いことをしてたら自分に帰ってきますよね」
「よぉし!これからご飯食べ行こ!
今回は私の奢りだから」
そう言って柚葉さんは両手で私と榊原くんの首に手を回して歩き出した。
「ちょっとっ、急にですか!?」
「苦しい」
「言っても食べ放題のところだけどね~!」
『話を聞いて欲しい!』
と私と榊原くんの声は柚葉さんには聞こえないのだった…
「1つ、聞きたいことが」
「なに?さっきのお友達の所に戻らなくていいの?」
「なんで、いつもそんな態度なの?」
「はぁ?」
「俺は、紫音さんに無理やりやらされてるのを知ってる。
本当は、柚葉さんが優しい人だって事を俺は知ってる」
私は2人の邪魔をしないように電信柱の影に隠れながら話を聞く。
「優しい?私が?なんの根拠で」
「だって、俺が転校してきた時、1人浮いてた俺にちょっかいかけてくれたから…」
「はっ、それの何が優しいのよ。
優しいと言えばさっきの柊さん、だっけ?
あの人の方が優しいでしょ」
「うん、あの人は親以外でこんな俺に寄り添って、優しくしてくれた人。
感謝してもしきれない」
「だったら、私よりあの人と喋んなよ。
あんたをいじめてた私なんかより」
「ううん、柚葉さんはいじめてたんじゃない。
いじめをさせられてた、違いますか」
2人の会話しか聞こえない私には何が起こってるのか分からない。
ただ榊原くんが柚葉さんに何かを伝えようとしていて、柚葉さんは榊原くんから離れようとしている事は分かる。
「なんでそう思う訳?
あんたに初めてちょっかいかけたからってそんな」
「俺、聞いたんです。
柚葉さんが紫音さんにもう辞めたいって言ってるの」
「っ!…
いつなの?」
「中学3年になった時、俺は教室に忘れ物を取りに戻った時、
柚葉さんが紫音さんに『もう榊原をいじめんのは辞めにしよって。
最後の1年、榊原には普通の学生生活を送って欲しい』って。
そしたら紫音さんは柚葉さんに怒鳴った声で前にいじめられてた柚葉さんの幼なじみを虐めるのに戻すって。
そして柚葉さん、あなたもいじめの対象にすると」
「知ってて、いじめられてたって事?」
「うん、その幼なじみは人と話すのが苦手な人で、そこに紫音さんは面白がっていじめの対象にした。
噂ですが聞きました。
その幼なじみへのいじめを辞める変わりに、紫音さんのグループに入って言うことを聞く。そういう条件で」
「なんで?」
「はい?」
「なんでそこまで知ってて何も言わなかったの!!」
突然、柚葉さんが叫ぶように言った。
その声は数回こだまするほど。
「俺なんかが何を言ってもどうもならないと思ったから。
学校に言ったってどうせ話し合いの場を持ちかける。
そんなのは意味がないって思ったから。
そうじゃないといじめなんて存在しない」
「じゃあ、あんたは私を、あいつを庇うために私の、あいつのいじめを受け続けたってこと?」
「そう、なりますね」
「ははっ、そっか、全部知ったうえで…」
『パン』
と叩く音が響き渡る。
私はこっそり見る柚葉さんが榊原くんの頬に平手打ちをしていた。
「それを言って感謝されるとでも思った?
私がありがとうと言うとでも?
私はあんたに酷いことを!」
「違う、柚葉さんは優しかった。
教科書を隠されたこともあった。
本当のいじめなら切り裂いたり破ったり、どこかで捨てることもできた。
上靴を隠された事もあった、でもそれは分かりやすいとこにあった、本当のいじめなら分かりにくいところに隠す。
他にも色々。
やろうと思えばできる。
本当にしたいのならそうする。そうしなかった時点で柚葉さんは優しいことが分かる。
さっきだって紫音さんには言わないって、
もうあんな目に合わせないようにしたってことじゃ」
「私は、いじめが嫌いなだけ、それをする側も、強制する側も、見て見ぬふりする側も…
別にあんたのためにやった訳じゃないから…」
「うん、わかってる」
「あと、ごめんね。ずっとずっと辛い思いさせて。
中学の卒業式に謝りたかったけど中々喋れなかったし
高校に上がったら謝ろうとしたけど、もうどこかに行ったって噂聞いて…」
「大丈夫、本当にいじめにあってたのは柚葉さんでしょ?」
「でも、これは私個人の気持ちの問題だから…
てかさっきから思ってたんだけど、
バレてるからね?柊さん」
見られる前に隠れたのにどうして?
そう思いながら電信柱の影から出る。
「髪の毛ちらちら見えてたから…」
「そう、ですか」
「まぁ紫音が今どこで何をしてるか私にも分かんないんだどね」
「高校一緒なんじゃあ」
「そうなんだけど、途中で退学なってさ、
それから音沙汰なし。
私にもあいつも榊原にも、もうなんもしてこないと思う」
「退学!?なんでですか?」
「あら、柊さんも興味ある感じ?」
「あいや、すみませんつい」
思わず声が出てしまった。
「理由としては高校でも相変わらずのいじめをやらせててさ、
いじめをやらせてた人がなんとまぁ教育委員会のお偉いさんの子供だった訳。
それでいじめがバレて速退学、それから数ヶ月は連絡取れてたんだけど急に連絡取れなくなって、家に行っても空き家になってるし。どこで何やってんのか…会いたくもないけど」
「まぁ、悪いことをしてたら自分に帰ってきますよね」
「よぉし!これからご飯食べ行こ!
今回は私の奢りだから」
そう言って柚葉さんは両手で私と榊原くんの首に手を回して歩き出した。
「ちょっとっ、急にですか!?」
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「言っても食べ放題のところだけどね~!」
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