16 / 30
16 コードネームはリン
しおりを挟むマルセリーノは変装を始めた。
と言っても人形用のサングラスを掛けただけである。それを見て彩香が喜ぶ。
「ぺぺちゃん、おもしろーい」
「そ、そうかなぁ。面白いかなぁ」
「あやかも、それ、ほしい」
「これか? あかんわ、あやちゃんには小さすぎるわ。今度のお誕生日の時に買って来るから、今日は我慢してーな。ほな、行ってくるし」
「わかった、あやか、おるすばんしてるよ。いってらっしゃい」
ぺぺは変装している姿で、タッタリアに会いにいく。
道中、若しも見つかったら大変なことになる。
しかもサングラスを掛けたペンギンであるのだから尚更である。
ぺペンギンは、その辺のところを分かっていない。
アホである。
タッタリアの経営している私立保育園に着くまで人には見つからなかったのは幸いであった。
一度、見つかり掛けたが電光石火の速さで、近くの電信柱の影に隠れた。
そこへ通りかかった野良犬におしっこを掛けられた。
動いてはいけない。
決して見つかってはいけないのだ。
おしっこを掛けられたくらいでは動じない。
気配を消し続けねばならぬのだ。
マルセリーノは電柱の影で、ただ立ち尽くすしか方法はなかった。
今は、タッタリアの経営する保育園でシャワーを浴びている。
「然し、あの野良公、今度見つけたら、ただでは済まさへんからな」
などと独り言を呟きながらシャワールームから出てきた。
「おう、タッタリア教授。例のもの用意できてる?」
「はい、ただ、その前に、やはりお身体の調子が悪いのでは?」
「何んでなん? 僕、元気やで」
「いえ、こちらに来られた時に、少々アンモニアの匂いがいたしましたので、肝障害でもあるのではないかと。統括教授? お酒は続けられているのですか?」
「アホか、幼児の前で酔っ払われへんやろ! 今、僕は、禁酒状態や」
「そうですか、では、あのアンモニアの匂いは一体?」
「うっ」
(犬に小便、ひっ掛けられたって、そんなん、よう言わんわ)
「それよりタッタリア、例のもん見せてくれへんか」
「はい、このケースの中です」
「よっしゃ、これで作戦決行準備完了やな。ずばり彩香救出作戦、名付けて」
「名付けて?」
「・・・・・・・・・。」
「名付けて?」
「何んか、ええ名前ない?」
ここが関西の劇場であれば、登場人物全員が転ける場面である。
「では、アメリカン・アットホーム・ドラマ作戦、と言うのは如何でしょうか? 略してA.A.D.作戦」
「長かったら略したらええ、ゆうもんちゃうやろ。それに、それ、何んか嘘っぽい幸せな家庭、みたいなイメージない?」
「では、ドッグ・ウリン・スプリンクラー作戦、は如何でしょうか?」
「ドッグ? プリン、やなくてウリン? それ日本語で、おしっこ? ていうことはズバリ。犬・おしっこ・浴びせる作戦! わーい、凄いわねー! って、アホか!」
「・・・・・・・・・。」
「お前、僕が野良犬におしっこかけられたん最初から想像して分かってたやろ! しかも、今回の作戦とは全然関係ないネーミングやん。そら、作戦遂行途中でそういう障害があったことは事実やけど、せやから言うて作戦の名前にする必要が何処にあるの? 却下や!」
「統括教授」
「何んや?」
「作戦名で悩んでいる場合では無いのでしょうか?」
「うっ、それも、そうや、なぁ」
「早速ではありますが、地球型エージェント・スーツ、ミラノ・コレクション・スーパーモデル・タイプ、コードネーム、リン、に入って調子をみてみてはいかがでしょうか?」
「それもそうやな。ほなら、地球型エージェント・スーツ、ミラノ・コレクション・スーパーモデル・タイプ、コードネーム、リン、に入ってみるわ」
そう言いながらマルセリーノは大きなケースの蓋を開けて、地球型エージェント・スーツ、ミラノ・コレクション・スーパーモデル・タイプ、コードネーム、リン、の入り口の扉を開けようとしている。
「で、統括教授? 以前ご使用していた時なのですが、変な男がうじゃうじゃついて来る。しかも言語の感性が違いすぎる。この地球型エージェント・スーツ、ミラノ・コレクション・スーパーモデル・タイプ、コードネーム、リン、は嫌いだと言っていたように思いますが?」
「ええねん、今回はこの地球型エージェント・スーツ、ミラノ・コレクション・スーパーモデル・タイプ、コードネーム、リンが必要やねん」
「では、この地球型エージェント・・・」
「ちょっと待った! フルネームで言うのやめへん? 何んかしんどなってきたわ」
そう言いながらマルセリーノは、地球型エージェント・・・。つまり、リン、の内部へと入って行った。
「どうですか?」
「そうね、やっぱり居心地は最高ね」
(あかん、ここの居心地は違和感や)
とリンが答えた。
0
あなたにおすすめの小説
「お前を愛する事はない」を信じたので
あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」
お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。
私を幽閉した王子がこちらを気にしているのはなぜですか?
水谷繭
恋愛
婚約者である王太子リュシアンから日々疎まれながら過ごしてきたジスレーヌ。ある日のお茶会で、リュシアンが何者かに毒を盛られ倒れてしまう。
日ごろからジスレーヌをよく思っていなかった令嬢たちは、揃ってジスレーヌが毒を入れるところを見たと証言。令嬢たちの嘘を信じたリュシアンは、ジスレーヌを「裁きの家」というお屋敷に幽閉するよう指示する。
そこは二十年前に魔女と呼ばれた女が幽閉されて死んだ、いわくつきの屋敷だった。何とか幽閉期間を耐えようと怯えながら過ごすジスレーヌ。
一方、ジスレーヌを閉じ込めた張本人の王子はジスレーヌを気にしているようで……。
◇小説家になろう、ベリーズカフェにも掲載中です!
◆表紙はGilry Drop様からお借りした画像を加工して使用しています
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢
さら
恋愛
名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。
しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。
王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。
戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。
一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。
ブサイク令嬢は、眼鏡を外せば国一番の美女でして。
みこと。
恋愛
伯爵家のひとり娘、アルドンサ・リブレは"人の死期"がわかる。
死が近づいた人間の体が、色あせて見えるからだ。
母に気味悪がれた彼女は、「眼鏡をかけていれば見えない」と主張し、大きな眼鏡を外さなくなった。
無骨な眼鏡で"ブサ令嬢"と蔑まれるアルドンサだが、そんな彼女にも憧れの人がいた。
王女の婚約者、公爵家次男のファビアン公子である。彼に助けられて以降、想いを密かに閉じ込めて、ただ姿が見れるだけで満足していたある日、ファビアンの全身が薄く見え?
「ファビアン様に死期が迫ってる!」
王女に新しい恋人が出来たため、ファビアンとの仲が危ぶまれる昨今。まさか王女に断罪される? それとも失恋を嘆いて命を絶つ?
慌てるアルドンサだったが、さらに彼女の目は、とんでもないものをとらえてしまう──。
不思議な力に悩まされてきた令嬢が、初恋相手と結ばれるハッピーエンドな物語。
幸せな結末を、ぜひご確認ください!!
(※本編はヒロイン視点、全5話完結)
(※番外編は第6話から、他のキャラ視点でお届けします)
※この作品は「小説家になろう」様でも掲載しています。第6~12話は「なろう」様では『浅はかな王女の末路』、第13~15話『「わたくしは身勝手な第一王女なの」〜ざまぁ後王女の見た景色〜』、第16~17話『氷砂糖の王女様』というタイトルです。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
追放聖女だってお茶したい!─セカンドライフはティーサロン経営を志望中─
石田空
ファンタジー
「ミーナ今までありがとう。聖女の座を降りてもらおう」
貴族の利権関係が原因でいきなり聖女をクビになった庶民出身のミーナ。その上あてがわれた婚約者のルカは甘味嫌いで食の趣味が合わない。
「嫌! 人の横暴に付き合うのはもうこりごり! 私は逃げます!」
かくしてミーナは神殿から脱走し、ティーサロン経営のために奔走しはじめた。
ときどき舞い込んでくるトラブル。
慌ててミーナを探しているルカ。
果たしてミーナは理想のセカンドライフを歩めるのか。
甘いお菓子とお茶。そしてちょっとの恋模様。
*サイトより転載になります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる