ペンギン仕掛けの目覚まし時計2

織風 羊

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第十二章 願いを叶える星

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 美咲は回復に向かっていった。
美咲に、あの老医師について聞いてみたが、問診があっただけで、それ以外は何もないと言う。ぺペンギンさんにも聞いてみたが同じ答えしか返ってこない。
美咲が回復してくれたなら何も拘れる必要もないのだが。
あの老医師について担当医に聞いてみた。
既にアメリカに帰って日本には居ないそうだ。
それと、美咲は、まだ破壊された肝細胞が回復しきれていないので暫くは様子を見ていくらしい。
美咲は、明日、大部屋に移るそうだ。
ぺペンギンさんは、どういう訳か、また古本屋の棚に戻りたいというので、私はぺペンギンさんを目覚まし時計の中に突っ込んで古本屋さんへ持って行った。
別に構わない、数日したら古本屋さんから電話が掛かってきて、その時に迎えに来て欲しいという事なのだから。
それに、美咲が退院して少しの間でも二人きりの生活もいいな、と思っている。
今夜も美咲のお見舞いから帰って、一人で部屋にいる。
ぺペンギンさんは、どうして突然に古本屋に戻りたくなったのだろう?
ふと、そんなことを考えている。

 ある夜の古本屋にて、

「マルセリーノ教授、もう店を閉めましたので、出てきてくださっていいですよ」

「おう、そうかぁ」
 
 そう言いながらマルセリーノは目覚まし時計から出て、小さな食卓の前に座った。対面にもう1匹のぺペンギンがいる。食卓には大盛りのシラスが置かれている。二人はシングルモルトで乾杯した。

「しかし、どういう事やねん。ワイが所長にお願いしたら、自分の住んでる星に願い事するって聞いた事ないわ、って言いよったで」

「いやー、私も、そんな前例、聞いたことありません」

「更にや、運命を変えるような願いなんか叶えれる訳ないやろ、って言いよったで」

「そらー、そうなんじゃないですか」

「ところがや、何んでタッタリア教授が来るの?」

「酒の肴に聞いてくれますか?」

「それ、面白い話なん?」

「どうでしょうかねぁ」

「まぁええわ、聞かせてぇな」

 タッタリア宇宙医学教授の言う事は、このような内容だった。

 マルセリーノ統括教授の願いは却下されました。自分の星に願いをするなど前例がありません。
では、何故? 私が? まず、同じ星ではない違う星から同じ願いが届いたとしたら、どうでしょうか? 
そう、信じられない事に、そういう事が起こったのです。
それは教授もご存知の地球に住む、ある男性から。
彼は、彼の妻に、願いが叶う星の話を聞いていた事を思い出して、その星の位置を確かめました。
彼の妻は、その時、闘病中だったので彼が祈っていることは知らない。
最初の夜は、彼は一生懸命に星を探したが見つからない。
それはしょうがない、地球から見るととても小さな光だから。
それでも彼は、毎晩、祈り続けた。
そして、見事に其の星に的中した。
無数にある星達の中で、一つだけの星を見つけたのですから、奇跡と言っても過言ではない。
でも実際そういう事が起こったのです。
それだけのこと、です。
 
マルセリーノは黙って、この話を聞いていたが。

「ちょっと待ってーな、違う星からの願いが届いた、いうのは分かった。けど運命は変えたらあかんのちゃうかったん?」

「それが運命を変えたことにならへん理由があったんです」

「どういうこと?」

タッタリア教授は殆ど首にぶら下げているだけの様なネクタイをほどきながら答えた。

「所長は、私の教室の助教授の所へ行き、この病気な、治せる?って聞いたのです。そしたら助教授から私のところに連絡が来て、私は直ぐに工作を練り、院長の知り合いのアメリカ在住専門医に変装して今までの検査結果と治療履歴を調べてみたんです。工作を練って、その後、カルテを調べて、少々時間がかかりましたが、これは治せる、ってなったんです。本当は黄疸が出る危篤状態の前に何とかしたかったのですが」

「そうかぁ、上手いこと医者に変装したんはええけど、身分証明書のネームプレートの名前が、古本屋、ってあかんやろ。あの状況で笑い取りに来る? まぁ、それはええわ、せやけどな、それぞれの星での運命っちゅうもんもあるんちゃうん?」

「それはそうです、ですが私らの星に願いが掛けられたゆう事は、私らが出来ることはせなあかん、ていう事になるとは思われませんか?」

「それもそやな」

「もしも別の星に願いを掛けてたら、その星に治せる薬が無かったら、それも運命ですやん」

 タッタリア教授はマルセリーノ統括教授の影響を受けて、時々変な言葉使いになりながら、そう答えた。

「せやなぁ、星に願いを掛けても必ずしも叶えられる、ゆう訳でも無いしなぁ。ほんなら、ワイらは、運命を変えてなかった、ゆうことになるんやな?」

「いかにも、です」

「偶然やなぁ」

「宇宙理論物理学教授の言葉とは思われませんけど」

「それやなぁ」

「全ての出来事は必然、でしたよねぇ」

「やねんけどな」

「もしも、その星では信じられへんような事が起こる。でも違う星から何らかの作用があったとしたら? そこでは信じられへんような事が起こったように思われる、けど違う星では当たり前のことでしかない。そうなるように何らかの作用が働いてるとしたら、それはワシらが未だ解決できてない宇宙の作用ちゃうかな。それを奇跡って呼んでまうんちゃうかな って所長が言うてはりました」

「所長がなぁ」

「それと、もう一つ所長からマルセリーノ教授に言伝を頼まれてます」

「何なん?」

「お前の方が、底抜けのボケカスドアホじゃー、です」
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