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第十三章 まじ、さいなら
しおりを挟む美咲がマンションに帰ってきて、また三人の生活が始まっている。
美咲とマルセリーノさんは毎晩恒例のジグソーパズルを今はやっていない。
数日前に完成したんだ。
完成したパズルはリビングに飾ってある。
美咲は一生の宝物だと言っている。
何故なら、マルセリーノさんは、今度こそ本当に自分の星に帰らなければならないそうだ。
そして、その時が直ぐそこに来ている。
今夜は、三人でお別れ会だ。
以前のように突然の別れではなかったので、覚悟を決める時間もあった。
それに今は、美咲が私を支えてくれている。
今夜は美咲が頑張って豪華な食事を作ってくれた。
マルセリーノさんには、細いネギに刺したシラス、大根おろしにシラスを混ぜた物、細く切ったキュウリにシラスを添えて海苔で巻いた物、などシラスのオンパレードだ。
マルセリーノさんは「宴会やー」と言いながら私が居なくなった時のための?美咲から買ってもらった大切なポケットウイスキーを出してきたが美咲に却下された。
美咲曰く、
「今夜が本当のお別れじゃないの、いつか私一人で悩んだ時、この小瓶を両手に包んで、あの星にお願いするの、そしたらマルちゃん、きっと来てくれるよね?」
「まかさんかい」
などなど会話は終わらない。
そして別れの日がやって来た。
「昨日なぁ、めっちゃ面白かったなぁ」
「マルセリーノさん、今まで本当にありがとうございました」
「ドアホ、しんみりするようなこと言うなや」
「マルちゃん、私、マルちゃんが居なかったら」
「もう言うなって。ほら、窓の外、見てみ。空から宇宙船の階段が降りて来てるやん、もう行くわ」
「マルセリーノさん」
と私は声を掛けたが、マルセリーノさんは、既に限りなく無色透明に近い階段の手摺りを器用に小さな翼で掴んで、登ろうとしている。
「ほな、さいならや」
「マルちゃん」
そう言うと美咲がもう片方の翼をしっかりと掴んで握手した。
「ありがとうな、美咲ちゃん」
「・・・・・・・・。」
「美咲ちゃん、ほんまにありがとうな」
「・・・・・・・・。」
「ちょっと美咲ちゃん?」
「・・・・・・・・。」
「あの、奥さん、手、離してくれまへんやろか?」
「マルちゃん、行かないで!」
それと同時に私はマルセリーノさんの黄色い足を掴んだ。予定通りの行動だ。
「おい、お前ら、夫婦揃て何してくれてんねん!」
「・・・・・・・。」
「・・・・・・・・。」
「こらー。危ないやろが! 離さんかい! 落ちたらどないすんねん!」
その時、病み上がりの美咲の手の力が弱まり、するりとマルセリーノさんの翼が美咲の手から抜けた。
それと同時に美咲が倒れそうになったので、私は思わずぺペンギンさんの足から手を離して美咲の肩を抱いた。
その瞬間、マルセリーノさんの姿が消えた。
「こらー、アホー、アホどもー」
マルセリーノさんの声だけが大空を渡るように響いていた。
などと言っている場合ではない。
ここは以前のアパートと違って、マンションの10階なのだ。
私は美咲を横にすると窓に駆け寄って、そこから下を見た。
すると何か、どでかい風呂敷のようなものが浮き上がってきた。
それはどんどん登ってきてマンションの窓を越えて行こうとした時、
「あはははー、お前らのやる事なんか想定内じゃー、アホー、ワイが何の準備も無く出て行くと思てたんかー、背負てるリュックはリュックや無うて、パラシュートやったんじゃー、このまま上昇気流に乗って宇宙船まで飛んで行くさかいにねー、ほな、さいならー、やでー」
「マルセリーノさん」
私は遠ざかっていくぺペンギンさんに声を掛けた。
「ほな、さいならー」
と言いながら飛び去っていくぺペンギンさんに、私は大声で呼びかけた、
「マルセリーノさーん、風向きが変わってまーす、そちらは宇宙船と反対方向ですー」
「何んやてー、今ー、何んて言うたーん、何んかやばい事言わんかったー」
マルセリーノさんは、宇宙船と反対方向の大空へと消えて行った。
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