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25話
しおりを挟む朝はやって来る。
善人にも悪人にも。
然し、それは同じ朝では無い。
既に違う次元の中で生きている。
大地を照らす朝日は変わらない。
その輝きを受け止める人が違うだけ。
「行ってきまーす」
元気の良いメグの声が聞こえる。
「行ってらっしゃーい」
これも元気良くサエの声が続く。
コミネは着替えを済ますと階下の小さな食堂へ行く。
「おはようございまーす」
サエの屈託の無い挨拶に救われるような気分だ。
「おはようございます」
「朝食の前に珈琲をいただけますか」
「はーい」
コミネは朝刊を開きながら記事など見ずに別のことを考えている。
本当にサエは今日帰ってしまうのか?
そう思うと今朝のこの時間が不思議に思えてくる。
もう少し居れば良いのにとコミネは思う。
が、自分も当てのない旅に出るのだから、結局は同じことになるのに。
サエがここに留まるのなら自分もここに留まるか?
あり得ないことを考える癖は直っていない。
思わず苦笑してしまう。
サエが珈琲を持って来ると、
「先生、何を笑ってらっしゃるんですか」
「あ、いえね、ほら、この記事。アメリカで頑張ってる日本人の特集だってさ」
別に見てもいない記事を急いで指差す。
それは、今時、珍しくもない記事。
新聞の隅にある、海外に住んでいる日本人へのインタビューである。
それでもサエは、その記事をかがみ込んで覗いてみる。
かがみ込んだサエの頭がコミネの鼻先を通り優しい髪の香りがする。
コミネが静かに目を閉じて深呼吸をしようとした途端、サエが急に立ち上がる。
「オーナー、この記事見てくださいよ」
急に立ち上がったサエの後頭部がコミネの鼻を強打している。
「あら、御免なさい!」
コミネの朝食を用意していた板前兼オーナーが手拭いで手を拭きながら厨房から出てくる。
「なに?」
「これですよ、アメリカの日本料理人の話、これってオーナーが修行してた小料理屋さんの店長さんじゃないですか?」
「どれどれ、ふーんと、アメリカ、クィーンズの小料理屋、杉浦涼太 ってか。って、おい! 師匠! 師匠じゃないですか! そうかぁ そうかぁ 師匠・・・。お元気でしたかぁ・・・。」
よほど世話になったのであろう、この宿屋の板長兼オーナーが涙を流し始める。
そして、その横で同じようにして涙を流している男がいる。
サエの後頭部で鼻を強打され血を流している男が、あまりの痛さに耐えかねて涙を流している。
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