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第一章
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私の部屋にペンギンがやって来た。
ペンギンが自ら歩いて来た訳ではない。
当然です。
私が連れて来てしまった、図らずも、という言い方がしっくり来ます。
少し長くなりますが其の前後のお話を、先ずは聞いていただければ幸いに存じましす。
嫌な仕事も何とか1週間を乗り切り、やっとの休みだ。
其れでも朝は憂鬱で目は覚めているものの起きる気がしない。
布団から出たくないという訳ではないが、もう少し眠っていたいという訳でもない。
ただ1日が始まって欲しくないだけという理由なら今の心境に1番近い思いであろうか。
布団から出た途端に嫌な1日が始まってしまう。
休みの日なのだから別に何か嫌なことが勃発するという事はないのだが、休みの日でさえそういう思いになってしまうのは、此れはもう習慣になってしまっているとしか言いようが無い。
然し今日は休みなのだから、こんな貴重な時間を寝て過ごすのはもったいない気もする。
そう思うと開いた目を再び閉じる事ができなくなり、これぞ良ききっかけと思い直して、ガバッと布団を跳ね上げ、暫くは正座に近い格好で座っていたが、このまま横になってしまうと再び起きることが不可能の様に思え、ゆっくりと立ち上がった。
起きてから先ずすること、顔を洗って歯を磨くことだ。
冷たい水で顔を洗って、軽く歯を磨いただけでもスッキリした気分くらいにはなれるものだと思った。
次は?
朝ごはんだ。
私は冷蔵庫の中を漁ってみたが食べれるような固形物は一切なかった。
安売りで買った6缶1パックの缶コーヒーとマヨネーズが1本有るだけだ。
目覚まし時計を見ると4時くらいだった。
あれ?
おかしいぞ、いくらもうすぐ夏だといっても4時で此の明るさはないだろう。
私は、いつもなら左手首に巻いているバーゲンで買った1つ1000円の腕時計を見直した。
と言ってもいつものように枕元に置いてあり、短針を見ると10のあたりを指していた。
朝の10時か、目覚まし時計は朝四時に電池切れ、のようだな。
動いていない目覚まし時計を横目で見ながら朝食のことを考える。
今からだと朝昼兼用の食事になるな、と思い、ゆっくりと普段着に着替え始めた。
ジーンズとTシャツ、それだけだ。
外の空気を吸いながらぶらつくのも気分転換には良いだろう。
そう思うと踵の擦り切れたサンダルを引っ掛けて、玄関の扉を開けた。
玄関を出て廊下をまっすぐ歩いて、つきあたりの階段を降りれば、路地裏の小さな通りに出られる。
木造2階建ての安いアパートである。
路地裏の細い道を少しだけ歩くと、すぐに2車線のひび割れたアスファルトの道に出て、此のみちを暫く歩くと長い商店街に出る。
其の商店街の中には大きなスーパーも有り、見事に個人商店と共存共栄がなされており、此のような商店街は近年ではなかなかお目にかかれないと思うのだが、どうだろうか、と思う。
私は、そんなにお腹も空いていなかったので、ぶらぶら歩きながら気に入ったものが有れば其れを食べよう、などと思いながら当てもなく商店街の中を歩き出した。
が、あまり食べ物には目がいかず、個人商店の雑貨にばかり目を奪われていた。
そうやって歩いていると、私は1軒の古本屋の前で立ち止まった。
就職するまでの私の趣味は読書だ。
いつも何かの本を読んでいて、新しく読む本がなければ、以前に読んだ本を読み返したりしていた。
読み返す本は古ければ古いほど良い。
読んだ時の年頃と今の年齢が離れていればいる程に滑稽さが増す。
其の本を読んだ時が幼いほど、読み落としも多く、感じ方や考え方の違いが面白い。
然し、今の私には読んでいる本など無い、ましてや再読なんて。
いつから本を読まなくなったのだろう?間違いなく就職してからなのだが、就職していつ頃から読まなくなったのかが大体の見当も付かない。
よく考えてみると1冊の本も結構な値段だ。
そして私は久しぶりに本でも読んでみるかと思った。
気に入った本があったとしても古本屋だ、上手くいけば何冊か買えるかもしれないぞ。
そして私は、期待をこめて其の古本屋の中に入っていった。
店内はうなぎの寝床の如く細長く奥の突き当たりに小さな机があり、其の机の前で老人が一人身動きもせずに座っていた。
あの老人がこのお店のご主人か、と思いチラリと見ただけで、私は気にいるような本がないか探し始めた。
なかなか自分の読みたいと思わせてくれる本に出会えず、もう諦めて書籍探しは止めようかと思い出すと同時にお腹が空いてきた。
私は本のジャンルにはこだわりが無いが、著者には少しこだわりがある。
新しい本は、古本の様にはいかず、そんなに安い値段ではない。
冒険して知らない作家の本を購入することもあったが、自分に合わない本であった時のショックは大きい。
勿論、宝物を探し当てた時のような喜びと其の本の作者に絶大な賞賛の思いが湧き上がってきた時もある。
どんなに慎重に選んでも結果は其の2つしかない。
もしも其の両者の真ん中があるとしたら、成る程そういう考え方もあるなと思うか、其れくらいのことは解っていると思うかのどちらかだ。
私はほとほと探し疲れてきたので帰ることにした。
すでに老人の横にまで近づいていたのだから。私は何気もなく老人を見て、その横にある本棚に最後の一瞥を投げ掛けた。
其処には、ロマン・ロランのジャン・クリストフがあった。
私の本棚のジャン・クリストフは何故かいつの間にか3巻だけが消失していた。
そして、此の店の本棚には本が勝手に歩いてきたのか、まるで私の家から此の店にちょっと旅に出てみただけですよ、というかのように3巻だけが置かれていた。
いや、それ以上に気になったのが、其の本棚の同列に置かれている目覚まし時計である。
其の金色の丸い形をした目覚まし時計は大きめのサイズというか、無駄に馬鹿でかい以外はごく普通の目覚まし時計と何ら変わらないように思えるのだが、どうしても気になってしまう。
兎に角、私は失われたというか此の旅立ったまま帰って来なかった様に思える3巻を購入することにして老人に声を掛けた、
「済みません、此の本をください」
「はい、150円ですよ」
私は小銭を探しながら老人に尋ねてみた、
「此の本と同じ棚にあった目覚まし時計ですけど、あれも骨董品として売られているのですか?」
老人はチラッとその金色の丸い形をした時計を見ると、
「気に入ったのかね?」
「ええ、気に入りました。おいくらくらいするんですか?」
「あれは売りもんじゃないよ。でも気に入ったのなら売ってもいいが、本当に気に入ったのならね」
「ええ、とても気に入りました」
私は本気で気に入ったのか分からないが思わずそう言ってしまった。
というよりも気づいたら私の口が勝手にそう発音していた、というのが其の時の気持ちだ。
「いいよ、持っていきな」
「え、代金はよろしいんですか?」
「いいよ、本当に気に入ったのならね。但し詰める箱もなければ袋もないよ。あるのは説明書だけだ」
少しでも気に入ったとはいえ、たかが目覚まし時計、説明書を見なければ扱えないという程の代物でもないであろう、と思ったが、
「ええ、説明書があれば助かります。本当にありがとうございます」
老人は、私の言葉には答えずに時計を取りに行き戻ってくると
「はいよ、時計と本ね、そして此れが説明書ね」
と言いいながら引き出しから薄い冊子を取り出して私に渡してくれた。私は、もう一度丁寧に深々と頭を下げて礼を言うと其の店を出た。
ペンギンが自ら歩いて来た訳ではない。
当然です。
私が連れて来てしまった、図らずも、という言い方がしっくり来ます。
少し長くなりますが其の前後のお話を、先ずは聞いていただければ幸いに存じましす。
嫌な仕事も何とか1週間を乗り切り、やっとの休みだ。
其れでも朝は憂鬱で目は覚めているものの起きる気がしない。
布団から出たくないという訳ではないが、もう少し眠っていたいという訳でもない。
ただ1日が始まって欲しくないだけという理由なら今の心境に1番近い思いであろうか。
布団から出た途端に嫌な1日が始まってしまう。
休みの日なのだから別に何か嫌なことが勃発するという事はないのだが、休みの日でさえそういう思いになってしまうのは、此れはもう習慣になってしまっているとしか言いようが無い。
然し今日は休みなのだから、こんな貴重な時間を寝て過ごすのはもったいない気もする。
そう思うと開いた目を再び閉じる事ができなくなり、これぞ良ききっかけと思い直して、ガバッと布団を跳ね上げ、暫くは正座に近い格好で座っていたが、このまま横になってしまうと再び起きることが不可能の様に思え、ゆっくりと立ち上がった。
起きてから先ずすること、顔を洗って歯を磨くことだ。
冷たい水で顔を洗って、軽く歯を磨いただけでもスッキリした気分くらいにはなれるものだと思った。
次は?
朝ごはんだ。
私は冷蔵庫の中を漁ってみたが食べれるような固形物は一切なかった。
安売りで買った6缶1パックの缶コーヒーとマヨネーズが1本有るだけだ。
目覚まし時計を見ると4時くらいだった。
あれ?
おかしいぞ、いくらもうすぐ夏だといっても4時で此の明るさはないだろう。
私は、いつもなら左手首に巻いているバーゲンで買った1つ1000円の腕時計を見直した。
と言ってもいつものように枕元に置いてあり、短針を見ると10のあたりを指していた。
朝の10時か、目覚まし時計は朝四時に電池切れ、のようだな。
動いていない目覚まし時計を横目で見ながら朝食のことを考える。
今からだと朝昼兼用の食事になるな、と思い、ゆっくりと普段着に着替え始めた。
ジーンズとTシャツ、それだけだ。
外の空気を吸いながらぶらつくのも気分転換には良いだろう。
そう思うと踵の擦り切れたサンダルを引っ掛けて、玄関の扉を開けた。
玄関を出て廊下をまっすぐ歩いて、つきあたりの階段を降りれば、路地裏の小さな通りに出られる。
木造2階建ての安いアパートである。
路地裏の細い道を少しだけ歩くと、すぐに2車線のひび割れたアスファルトの道に出て、此のみちを暫く歩くと長い商店街に出る。
其の商店街の中には大きなスーパーも有り、見事に個人商店と共存共栄がなされており、此のような商店街は近年ではなかなかお目にかかれないと思うのだが、どうだろうか、と思う。
私は、そんなにお腹も空いていなかったので、ぶらぶら歩きながら気に入ったものが有れば其れを食べよう、などと思いながら当てもなく商店街の中を歩き出した。
が、あまり食べ物には目がいかず、個人商店の雑貨にばかり目を奪われていた。
そうやって歩いていると、私は1軒の古本屋の前で立ち止まった。
就職するまでの私の趣味は読書だ。
いつも何かの本を読んでいて、新しく読む本がなければ、以前に読んだ本を読み返したりしていた。
読み返す本は古ければ古いほど良い。
読んだ時の年頃と今の年齢が離れていればいる程に滑稽さが増す。
其の本を読んだ時が幼いほど、読み落としも多く、感じ方や考え方の違いが面白い。
然し、今の私には読んでいる本など無い、ましてや再読なんて。
いつから本を読まなくなったのだろう?間違いなく就職してからなのだが、就職していつ頃から読まなくなったのかが大体の見当も付かない。
よく考えてみると1冊の本も結構な値段だ。
そして私は久しぶりに本でも読んでみるかと思った。
気に入った本があったとしても古本屋だ、上手くいけば何冊か買えるかもしれないぞ。
そして私は、期待をこめて其の古本屋の中に入っていった。
店内はうなぎの寝床の如く細長く奥の突き当たりに小さな机があり、其の机の前で老人が一人身動きもせずに座っていた。
あの老人がこのお店のご主人か、と思いチラリと見ただけで、私は気にいるような本がないか探し始めた。
なかなか自分の読みたいと思わせてくれる本に出会えず、もう諦めて書籍探しは止めようかと思い出すと同時にお腹が空いてきた。
私は本のジャンルにはこだわりが無いが、著者には少しこだわりがある。
新しい本は、古本の様にはいかず、そんなに安い値段ではない。
冒険して知らない作家の本を購入することもあったが、自分に合わない本であった時のショックは大きい。
勿論、宝物を探し当てた時のような喜びと其の本の作者に絶大な賞賛の思いが湧き上がってきた時もある。
どんなに慎重に選んでも結果は其の2つしかない。
もしも其の両者の真ん中があるとしたら、成る程そういう考え方もあるなと思うか、其れくらいのことは解っていると思うかのどちらかだ。
私はほとほと探し疲れてきたので帰ることにした。
すでに老人の横にまで近づいていたのだから。私は何気もなく老人を見て、その横にある本棚に最後の一瞥を投げ掛けた。
其処には、ロマン・ロランのジャン・クリストフがあった。
私の本棚のジャン・クリストフは何故かいつの間にか3巻だけが消失していた。
そして、此の店の本棚には本が勝手に歩いてきたのか、まるで私の家から此の店にちょっと旅に出てみただけですよ、というかのように3巻だけが置かれていた。
いや、それ以上に気になったのが、其の本棚の同列に置かれている目覚まし時計である。
其の金色の丸い形をした目覚まし時計は大きめのサイズというか、無駄に馬鹿でかい以外はごく普通の目覚まし時計と何ら変わらないように思えるのだが、どうしても気になってしまう。
兎に角、私は失われたというか此の旅立ったまま帰って来なかった様に思える3巻を購入することにして老人に声を掛けた、
「済みません、此の本をください」
「はい、150円ですよ」
私は小銭を探しながら老人に尋ねてみた、
「此の本と同じ棚にあった目覚まし時計ですけど、あれも骨董品として売られているのですか?」
老人はチラッとその金色の丸い形をした時計を見ると、
「気に入ったのかね?」
「ええ、気に入りました。おいくらくらいするんですか?」
「あれは売りもんじゃないよ。でも気に入ったのなら売ってもいいが、本当に気に入ったのならね」
「ええ、とても気に入りました」
私は本気で気に入ったのか分からないが思わずそう言ってしまった。
というよりも気づいたら私の口が勝手にそう発音していた、というのが其の時の気持ちだ。
「いいよ、持っていきな」
「え、代金はよろしいんですか?」
「いいよ、本当に気に入ったのならね。但し詰める箱もなければ袋もないよ。あるのは説明書だけだ」
少しでも気に入ったとはいえ、たかが目覚まし時計、説明書を見なければ扱えないという程の代物でもないであろう、と思ったが、
「ええ、説明書があれば助かります。本当にありがとうございます」
老人は、私の言葉には答えずに時計を取りに行き戻ってくると
「はいよ、時計と本ね、そして此れが説明書ね」
と言いいながら引き出しから薄い冊子を取り出して私に渡してくれた。私は、もう一度丁寧に深々と頭を下げて礼を言うと其の店を出た。
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